事業所のある風景

2012年5月15日

香川/へいわこどもクリニック 地域のニーズに臨機応変に対応する

香川県=「うどん県」?

 香川県は古くは渇水・ため池の土地として 知られていましたが、近年では「うどん」の方が有名です。讃岐うどんは観光客の増加、うどん生産量の増加、県知名度の上昇などの効果をもたらし、地域ブラ ンド成功例としてあげられます。ついには香川県はうどんを全面的に推しだした観光キャンペーンとして、自らを「うどん県」と称しはじめました。よい意味で も悪い意味でも、これは1つの強みを最大限有効に利用してきたものであり、私たちも参考にできる部分があるのでは? と考えています。

門前診療所としてのスタート

 「へいわこどもクリニック」は、高松 平和病院の門前診療所として2010年3月に開院しました。それまでの病院小児科は、患者数の減少、近隣での新たな小児医院の開設等、厳しい状況が続いて いました。患者数増をめざしてコンセプトにしたのが「かかりやすい小児科」になること。「子どもを連れていると受付・会計で大人の患者と一緒に待つのは大 変」との声が多く、「受付も会計も親が気を遣わず待てる小児科診療所」を開院することになりました。共働きの家庭への配慮から、夜間最終受付を18時から 19時に拡大しました。また、体調の悪い子どもを連れて受付や会計や薬局などで待つのは大変ですので、院内処方を採用しました。ちなみに3月の患者数は 1215人、1日平均60人で、目標の1日80人には程遠いスタートでした。

診療所でこそできる医療を

 のんびりした(?)スタートを切った クリニックですが、年度が変わると状況が一変します。全体収入の30パーセントを占める公費予防接種事業を筆頭に患者数が増加、見事単年度黒字を達成でき ました。クリニックのある栗林町は市内有数のマンション林立地帯です。潜在的に小児科ニーズがあることはわかっていましたが、転勤族が多い土地柄で、組合 員運動が広げにくい状況でしたので、これはうれしい結果でした。
 香川医療生活協同組合で最も新規患者が来院する施設となったへいわこどもクリニックは、2010年10月「病児保育はとぽっぽ」を開始しました。転勤族 で共働きの家庭が多く、近くに祖父母などの子育て協力者がいません。子どもが発熱したときに「安心して預けられる施設を」との声に応え、クリニックをあげ て署名活動を行い、高松市の病児保育委託を開始することができました。この活動はへいわこどもクリニックの名前を広めることにもなり、2011年度はさら なる患者数増を果たしています。高松市のホームページでも紹介される「はとぽっぽ」も患者数増に一役買っています。
 診療所は病院と比べてスタッフも少なく、人的には大変な一面はありますが、患者・組合員のニーズに臨機応変に対応していく柔軟性が最も大きな力です。予 約システムを見直し、病院時代を大幅に上回るインフルエンザ予防接種もこなし、月に1度の街頭署名、地元小学校の祭りへの参加や、慢性疾患管理、不活化ポ リオワクチンなど、病院時代を超える活動をしています。子育て支援として、クリニックではめずらしい常勤の臨床心理士が関係機関と連携して、虐待などの問 題へも対応しています。今年度は子どもの貧困問題にとりくみ、2011年から開始した無料低額診療事業を広めていきたいと考えています。
 まだまだ発展途上で、介護事業展開の課題もあります。「うどん県」のように1つの強みに頼るのではなく、診療所としての強みをいくつも持ち、組合員・地 域住民にいっそう信頼される診療所をめざして頑張りたいと思います。
へいわこどもクリニック 事務長 宮西 剛司)

「民医連事業所のある風景」 『民医連医療』2012年5月号.No.477より

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