事業所のある風景

2012年7月15日

北海道/十勝勤医協帯広病院 患者の思いに最期まで寄り添う医療を

ひろ~い十勝で

 当院のある帯広市は、東は太平洋、西は日高山脈、北は石狩山地に 囲まれた十勝平野のほぼ中心にある人口17万人の地方都市です。診療圏となる十勝地域(1市19町村)は、人口35万人、面積1万831平方キロメートル (北海道の13パーセント、新潟県とほぼ同じ)とかなり広く、自家用車を片道2時間運転して受診に来られる患者の方もいます。帯広病院は、そんな広い十勝 で診療を開始してから今年で27年目を迎えます。

医療・介護の複合体として

 当院は、1986年6月内科単科の19床の診療所として開院し、 1989年に病院化(60床)、2004年には耳鼻咽喉科を開設、訪問看護ステーションも併設されました。法人内には100床の老人保健施設や介護事業所 が複数あることから、医療と介護の連携を強みにしながら、小規模病院(現在は一般55床)ながら、患者を在宅から入院まで支える病院として奮闘していま す。
 日常診療は、1日約160人の外来患者、40人の入院患者の診療にあたっています。外来は、ほとんどが慢性疾患の患者です。気になる患者、中断しがちな 患者には、自宅まで訪問することもしばしばです。生活状況や問題点を明らかにし、行政や在宅系事業所と連携しながら療養生活の援助をすすめるケースが増え ています。

友の会とともに健康づくりを

 十勝管内には、44の友の会があり3万人の友の会員がいます。友の会とともに、健康相談会、青空健康チェック、ふまねっとなど地域の健康づくりに積極的にとりくんでいます。
 2006年に創立20周年記念の友の会感謝企画として大腸がん無料検診にとりくみ、4482人が受検し13人のがんが見つかりました。この検診は、便の 容器を郵送だけでなく地域の友の会世話人が訪問して会員に届けることとしたため、友の会活動としても大きく広がりました。評判と反響が大きく毎年の実施に なり、受検数も年々増加し、2011年度は6405人が受検し25人のがんが見つかりました。6年間で延べ3万198人が受検し、80人のいのちが救われ ました。この成果を自治体に示したことにより、2009年度から帯広市の大腸がん検診が一般医療機関にも委託され、受検率も全国平均の17パーセント程度 から31パーセントへと倍増しました。近い将来、帯広・十勝のがん死亡率が大きく低下することを願いながら、今年度のとりくみを始めています。

地域の連携を強めて

 当院でも無料低額診療を昨年から開始しました。生活や経済的な困 難から治療を継続できない人たちが地域にたくさんいることが明らかになりました。無低診をさらに広げるために自分たちがやれることはまだまだたくさんあり ます。また、地域の急性期病院からの終末期の患者の転院依頼が増えています。多くの人が頼れる身内がなく身の回りの世話や金銭管理まで必要であり、簡単な 援助ではありませんが、現場の奮闘と法人内の連携で対応しています。このような患者を支えていくキーワードは「地域との連携」です。患者に本当に必要な援 助を行うには、自治体、他の医療機関、介護事業所、そして友の会と連携が欠かせません。その要となるのが帯広病院の役割です。
 規模は小さいけれど、患者を思う気持ちは誰よりも大きい病院として、広い十勝で医療を続けていきます。
十勝勤医協帯広病院 事務長 片桐 正晃)

「民医連事業所のある風景」 『民医連医療』2012年7月号.No.479より

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