事業所のある風景

2013年5月15日

北海道/勤医協菊水こども診療所 困難を抱えた患者を全力で援助

 菊水こども診療所のある白石区は、札幌市の東側に位置し、市内中心部を流れる豊平川と、東部を流れる厚別川に挟まれた区です。昭和30年代から人口流入 地域として急激に宅地化が進み、2012(平成24)年1月1日現在で10万3862世帯20万7163人、市民の約11パーセントが居住しています。当 診療所は札幌の中心街に近く、大通公園から地下鉄で2駅、駅から徒歩4分と利便性も非常によい場所にあります。1日平均111.7人(2011年度)、1 年間で3万3000人以上の患者が受診します。

安心して受診できる外来をめざして

 北海道勤医協の小児科は、1962年に阿部昭一医師(元北海道勤 医協理事長、元全日本民医連会長)が北海道勤医協に参加し、菊水病院で小児科を担当したときから始まります。1964年に勤医協札幌病院が開院し、小児科 外来として歩み始めましたが、1995年勤医協札幌病院から単科の診療所として独立し、現在に至ります。
 7人の医師(パート医師も含む)で毎日の一般外来を担当しています。また、小児科の後期研修医(年間2~3人)や初期研修医を毎月受け入れ、職員全体で それぞれの研修目標が達成できるようにかかわっています。そのほか、アレルギー(アトピー性皮膚炎、気管支喘息など)や内分泌(低身長・肥満など)の専門 外来を行っています。週1回の乳幼児健診は子どもの成長を確認するため両親そろっての来院も多く、待合室も狭く感じます。
 患者が安心して受診できる外来をめざし、さまざまなとりくみを進めてきました。水痘やおたふくなどの伝染性疾患患者が使用する隔離室(4室)、予防接種 で来院した親子が安心して待つことができるワクチン外来専用待合室の設置、週2回の夜間診療、土曜日の診察も月2回から毎週行うなど発展させてきました。

患者・家族に寄り添って

 開院以来子育て支援活動を医療活動の中心とし、「あかちゃんと遊 ぼう」「子育て友の会活動」「こどもレクリエーション」「育児サロン」札幌市委託事業の「病児保育」にとりくんでいます。これらの活動は「子どもはかわい いけれど泣くとイライラする」「相談する人がいない」「どこかで子どもが遊べる所はないですか?」「転勤したばかりで友達がいない」「明日は仕事を休めな いので熱を下げてください」「これ以上休むとクビになります」など、お母さんたちの切実な声を聞き取って具体化したものです。
 経済的困難などの理由で出産時に入院・分娩費用が払えない人のために、「入院助産制度」があります。札幌市で入院助産制度を利用できる病院は2カ所で す。勤医協札幌病院には市内全域から困難を抱えた女性が受診し出産します。貧困や親の精神疾患、家庭内暴力などにより、子育てが難しいケースが少なくあり ません。勤医協札幌病院産婦人科と菊水こども診療所では、市内各区の保健センターや地域の保健師、児童相談所、教師などと連携しながら、出産と育児を支援 しています。
 白石区は歴史的に貧困層が多い地域であり、生活保護率は札幌市全区のトップです。経済的困難を抱えて受診できない子どもが安心して受診できるよう、無料 低額診療制度を活用し大変喜ばれています。
 今後もますます生活が厳しくなり知的障害や精神疾患のある親、家庭内暴力などさまざまな困難を抱えている人が子育てに悩み当診療所に受診にくるでしょ う。私たちはこれまで築き上げてきたさまざまなつながりを力に援助していきます。
勤医協菊水こども診療所 事務長 佐賀 正美)

 

「民医連事業所のある風景」 『民医連医療』2013年5月号.No.489より

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