副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2013年9月2日

副作用モニター情報〈401〉 コリン作動性薬剤と誤嚥性肺炎

 副交感神経系を賦活させるコリン作動薬剤が原因と思われる誤嚥性肺炎の報告がありました。
症例)60代、男性
 神経因性膀胱のため、5%ベサコリン散(一般名:ベタネコール)0.6g分3開始
投与11日目 0.6g→0.8gに増量
18日目 発熱あり。肺炎または排尿障害に伴う腎盂腎炎の可能性あり、セフトリアキソン注開始
21日目 高熱が続くためメロペネム注に変更→その後、いったん解熱
26日目 再度発熱。鼻水と咳あり
30日目 胸部XPで左肺炎の可能性あり。ベサコリン散によって気道分泌が亢進し、それを誤嚥したことで呼吸状態の悪化を引き起こしたかもしれない、と判断し、ベサコリン散中止
 中止から5日目 胸部XPはほぼクリアになり解熱。その後は咳などの訴えなし
 中止から10日目 抗生剤も中止となる

*         *

 コリン作動性薬剤は、フィゾスチグミン、ベタネコールなど泌尿器科で用いられるものだけではな く、アルツハイマー治療剤や消化器疾患治療剤など各分野で使用されています。それぞれの用途に応じて組織移行性や作用部位に選択性があると考えられます が、副交感神経系を賦活するため、気道分泌や消化液の分泌が促進される場合があります。
 今回報告のあったベタネコールは低緊張性膀胱による排尿困難(尿閉)のほか、消化管の蠕動促進目的や薬剤性の口渇に対しても使用される薬剤です。そのた め、気道分泌が増加し、嚥下機能が不十分な患者では誤嚥性肺炎を誘発する可能性があります。
 薬剤開始後痰の量が増える、発熱を繰り返す、などの症状が出てきた場合は中止か減量を考慮する必要があります。
 また、ベタネコール以外のコリン作動性薬剤でも同様の副作用が発現する可能性があることを、念頭に置くべきです。

(民医連新聞 第1555号 2013年9月2日)

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