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2014年2月21日

【声明2014.02.21】2014年度診療報酬改定(医科)についての声明

2014年2月21日
全日本民医連会長 藤末 衛

  1. マイナス改定の断行に抗議し、再改定を強く要望する
     今回の診療報酬改定は、実質マイナス改定であり、断固として容認することはできない。従来、診療報酬改定においては「薬価分」と「診療報酬本体分」は一 体的に運用されてきた。しかし、今回、薬価と本体を切り離され、薬価分の-1.36%は、本体の改定に反映されなかった。結果、本体で+0.1%と発表さ れたが、実質的には1.26%のマイナス改定である。地域医療をささえる医療機関の深刻な経営危機を加速させ地域医療再建に大きく打撃を与える改定であ り、再改定を強く要望する。
     さらに、今回の改定は閣議決定された「医療・介護総合推進法案」の先取りとも言えるものであり、政府の一連の社会保障費削減政策の一環である。これらの施策の中止を求める。
  2. 「平成26年度診療報酬改定答申書」の重大で強引な改定
     政府・厚労省は、2月22日に発表された「平成26年度診療報酬改定」について、「急性期、回復期、慢性期のいずれのステージからも医療機関は常に患者 を自宅に帰すという視点で診療に当たる仕組みを作った」と述べている。まさしく社会保障と税一体改革のもとで、社会保障制度改革国民会議が打ち出した公的 医療費給付の抑制へ向けて従来にない重大な医療提供体制の「改革」を診療報酬から強引に誘導するものである。
     1)9万床の削減をねらった7対1入院基本料病床の新算定要件
     その象徴的な改定が、2年間で9万床の削減をねらった7対1入院基本料病床の新算定要件や地域包括ケア病棟の新設などである。今回の改定により急性期か ら慢性期にいたるまで各段階で「病院から在宅へ」の流れを今まで以上に強引にすすめようとしている。急性期病床の削減とその後の受入病床や在宅医療・介護 などの体制が不十分なままに、このような強引な政策誘導を行えば、重症患者を療養病床や在宅で対応せざるを得なくなり、地域医療・介護の現場に新たな混乱 と矛盾を生み出すことになる。多くの入院・在宅難民を生み出すことなど、もっとも被害を受けるのは、患者・国民である。
     特に、日本は、国際的にも少ない看護体制であり、「重症度、医療・看護必要度」の変更によって一方的に梯子を外すような7対1入院基本料病床の新算定要 件は、見直しを要求する。患者・住民本位の医療機能の分化と連携には、それにふさわしい診療報酬の大幅な引き上げを前提に充分な議論と検証が必要である。 当面、半年間の猶予期間ではなく2年間の猶予期間への延長を求める。
     2)地域包括ケア病棟、地域包括診療料・加算の新設と現時点の評価
     地域包括ケア病棟が新設され、主に中小病院が、急性期後・回復期を担う新たな病棟として位置づけられている。その新要件は、「重症度、医療・看護必要 度」基準、在宅支援病院、二次救急病院又は救急告示病院、在宅復帰率などである。地域において中小病院が果たしている役割に照らして、それにふさわしい診 療報酬の評価であるのか、特に、これらの機能を「13:1」の看護要員体制で行うことは到底できないと考えられ大きな問題である。
     地域包括診療料・加算が200床以下の病院や診療所に主治医機能を強化させるために新設された。その算定要件は、外来や薬局の24時間体制の整備や介護 と連携をはじめ多様な機能が求められている。地域医療・介護の連携の上では主治医機能の発揮が、欠かせないが、今回の改定によりフリーアクセス権の侵害や 重い患者負担が予想され、こうした懸念が払拭される制度となるように要望する。特に、2010年改定で廃止になった「後期高齢者診療料」が、現場に混乱を 招いた反省・教訓を踏まえることが重要である。
     3)地域医療の重要な役割を担う中小病院と診療所の底上げに至らない改定-基本診療料の引き上げは、消費税損税の補填
     今回の改定では、初診料・再診料や入院基本料などの引き上げが行われており、これは消費税損税の一時的な補填である。しかもその全額を補うものにはなっ ていない。全日本民医連は、改めて消費税増税の中止と、ゼロ税率など患者に転嫁しない方法での損税解消を求めるものである。
     現在集約されている緊急の試算では、手術料などで引き上げがあるが、総枠では大変厳しいマイナス改定である。地域医療に欠かせない急性期から在宅医療ま で、どの機能を担っても地域や患者ニーズに応えている限り経営が安定していける診療報酬体系の整備や診療基本料の引き上げを求める。
  3. 医療界が団結して大幅な引き上げの再改定と患者負担の軽減を
     地域医療を再建し、国民の生命と健康を守るためには、すべての病院と診療所が引き上げとなる再改定が必要である。特に、全日本民医連は、7対1入院基本 料算定病床の削減の見直しと再改定へ向けて医療界全体が団結してその実現を迫るための運動を推進していくことを呼びかける。また、貧困と格差が世代各層に 広がり、国民のいのちと健康が脅かされている。地域医療の崩壊を防ぐための診療報酬を大幅に引き上げる再改定、また世界一高い患者負担の引き下げ、急増し ている「無保険児・者」の解消を要望する。

以 上

(PDF版)

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