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2000年1月1日

医療研究室 透析医療と医療福祉制度

東京民医連 小泉博史
【東京・立川相互腎クリニック・医師】

透析30年時代…患者さんの立場にたった透析医療をもっともっとすすめるために!

 

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透析医療を行う小泉博史医師

人口透析とは…

 腎臓の機能が悪くなると、本来排せつされるべきものが体内に蓄積し、尿毒症という病気になります。この毒素を取り除くのに血液透析を行ないます。通常週3回、1回あたり4時間前後の時間をかけて行ない、毒素の70%前後、体重の3~5%の水分を取り除きます。
 年現在で日本の透析者数は16万7千人(人口10万人対133人)を越えました。最長透析歴の方は30年を越え、12.1%の方が10年以上の透析を行 なっています。透析が始まった70年頃は1年間で約半分の人が亡くなっていましたが、現在では透析医療の進歩によって”透析30年“時代に入ったといわれ ています。

透析患者をめぐる公的補助の変遷

 透析医療に健康保険が適応されたのは68年ですが、この時の自己負担は、健康保険家族や国民健康保険の場合、月 15~25万円もかかりました。当時の平均的サラリーマンの月収が10万円でしたから「金の切れ目が命の切れ目」の時代でした。透析の患者団体・全国腎臓 病患者連絡協議会の結成と運動によって、72年に自己負担の公的補助が行なわれることになり、今日の透析医学、医療発展の基礎が作られたわけです。公的助 成がなく、透析に関連した医療福祉政策が不十分なアメリカは、多くの分野で世界的に高い医学水準にありながら、透析に関しては日本よりはるかに悪い治療成 績になっています。

民医連ならではの透析医療

 最近の透析医療の特徴は、患者さんの高齢化と糖尿病で透析になる人の増加です。民医連の透析医療機関も加盟している 全国腎疾患管理懇話会は、他にさきがけ91年にこの問題の全国実態調査を行ない92年の透析医学総会に発表し注目されました。この懇話会は毎年一回の研究 会を積み重ね、今年で21回を迎えます。この実績が評価され、全国レベルの研究会として日本透析医学会で公的に認知されました。私たちはこのネットワーク を利用して様々な医療活動を行なっています。
 公的病院の週休2日制のため、患者さんの体調とは無関係な透析スケジュールを組まざるをえない状況の中で、立川相互病院では、6年前より2泊3日の患者 会旅行と土曜日の夜の透析を実施してきました。「生きていてよかった」という患者さんの声を聞き、この旅行は患者さんとの共同の営みとしての医療、民医連 ならではの医療を実感させるものでした。

Medi-Wing 第8号より

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