健康・病気・薬

2014年4月21日

副作用モニター情報〈413〉 フェジン静注(R)による関節痛・低リン血症

 全日本民医連副作用モニターにフェジン静注(R)(一般名:含糖酸化鉄注射液)による関節痛・低リン血症の症例が報告されたので紹介します。
症例)30代男性。クローン病(消化管手術歴あり)。併用薬:ペンタサ錠(R)、ガスコン 錠(R)、ミヤBM錠(R)、メチコバール錠(R)、フォリアミン錠(R)、オメプラゾール錠(R)、アロプリノール錠(R)、プレドネマ注腸(R)。鉄 欠乏性貧血(Hb7.9)のため、フェジン静注(R)80mgを週2回投与開始。約半年後から関節痛、背部痛、筋力低下出現。Hb10.3。開始7カ月 後、痛みが強くカロナール錠(R)追加。開始1年後も痛みが続くためトラムセット配合錠(R)も追加。トラムセットの効果はあったが痛みは完全にとれず、 20日後には杖での歩行となる。トラムセット追加1カ月後、フェジンによる低リン血症の可能性があるためフェジン中止。血清リン値1.2mg/dl(基準 値:2.5-4.5mg/dl)、Ca8.8mg/dl。これまでのフェジン総投与量は5760mgであった。
 中止5日後カルシウム、リン酸補充のためリン酸水素カルシウム(R)3g、ディーアルファカプセル(R)0.5μg開始。中止17日後、リン摂取目的に てエレンタールP(R)頓用追加。中止24日後、疼痛改善、血清リン値2.1mg/dl、血清鉄26μg/dl。中止2カ月後、血清リン値3.4mg /dlまで回復。Hb10.7。鉄剤は内服へ変更となり、トラムセットも中止となる。
 この症例の適正な投与鉄量を算出すると約1900mgで、実際には約3倍量の投与となっていた。

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 フェジンによる低リン血症及び骨軟化症の症例は、静注鉄剤の中ではフェジンに特有の副作用として知られています。作用機序 として、含糖酸化鉄の尿中排泄に伴い、競合的に近位尿細管でのリン再吸収抑制が生じ、尿中へのリン排泄が促進したためと考えられています。 1α-hydroxylase活性も障害され、活性型VDも低値となることも原因です。
 近位尿細管障害は一過性のため、投与を中止すれば低リン血症、骨軟化症は自然に軽快します。必要な場合は、VD製剤を投与します。予防として、フェジン の適正な投与量を算出し、漫然と長期に投与しないように注意しながら、定期的に血清リン値をモニタリングすることが大切です

(民医連新聞 第1570号 2014年4月21日)

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