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2014年5月5日

学ぼう!総会方針 (3)日本国憲法 自由法曹団 事務局長 山口真美(なおみ)さんに聞く 私が私らしくあるために憲法があります 「大切なのは想像力」 憲法のこと考えてみませんか

 五月三日は「憲法記念日」。日本国憲法の施行から六七年、今、憲法は戦後最大の危機にあります。全日本民医連は総会方針に「平和憲法を守ろう」と掲げました。自由法曹団事務局長で弁護士の山口真美さんに、憲法について聞きました。(新井健治記者)

憲法は身近じゃない?

「憲法って、少し難しい」「身近じゃない」という人がいるかもしれません。気がつかないだ けで、あなたの生活の隣に憲法はあります。春は引っ越しシーズンですが、好きな所に住むことができるのも、憲法で「居住の自由」が保障されているから。好 きな音楽を聴けるのも、友人と何でも話せるのも、実は憲法のおかげ。私たちが私たちらしく暮らすことを、憲法がささえています。
憲法はなぜあるのでしょうか。法律と聞くと、「○○してはいけません」と国民に対して規制を加えるものと、とらえがち。でも、それは刑法や民法の話で す。憲法は正反対で、国や権力を縛るもの。権力が国民の自由を侵害しないように歯止めをかけているのです。これを“立憲主義”といいますが、学校ではあま り教えないので知らない人が多いですね。
“権力”という言葉を使いましたが、皆さんはどのように感じるでしょうか。日本はかつて、戦争ばかりする国でした。戦時中は思想信条の自由をはじめ、時 の政府によって国民のあらゆる権利が奪われました。たった六九年前の話で、外国のことでもおとぎ話でもありません。戦争を起こした権力は、今の権力と地続 きなのです。

いま危機にある憲法

大切な憲法がいま、大きな危機にさらされています。自民党政府は今国会に改憲の手続きを定める国民投票法改定案を提案、連休明けにも採決の可能性があります。
自民党が一番変えたいのが戦争を放棄した憲法九条。条文をいじらなくても、実質的に九条の縛りを外し、解釈改憲で海外で戦争ができるように「集団的自衛権の行使容認」も狙っています。
国民の自由を奪う最たるものは戦時体制です。みなさんもニュースで耳にしているはずですが、政府は秘密保護法の強行をはじめ、国家安全保障戦略の閣議決 定、武器輸出三原則の廃止など、“リアル”に戦争ができるシステムを作っています。
これらの動きをバラバラに見るだけでは「秘密保護法って、怖いよね」という程度で、現実味がありません。たとえば、国家安全保障戦略で戦争の司令塔を作 り、その司令塔が秘密保護法で情報を独占する、そんな社会を想像してみてください。権力が着々と戦時体制を構築していることが分かります。大切なのは想像 力です。
「中国が攻めてきたらどうする」なんて言う人もいます。分かりやすく浅い言葉で人の心を騙す風潮があります。間違った情報があふれる中で、弁護士と医 療・介護従事者など専門職は、自分の頭で考え本当のことを発信できる仕事。弁護士は隠れた真実を見つけ、事実を積み上げて裁判に勝ち、依頼者の人権を守り ます。人権を守る道は真実から開かれます。
最近の世論調査では、九条改憲や集団的自衛権容認に反対する意見が以前より増えています。ふだん憲法を意識していなくても、平和主義など憲法的な考え方 は知らないうちに私たちの血となり肉となっているのです。脱原発や秘密保護法反対の運動が盛り上がるのも、「主権者は私たち」という憲法の精神が生きてい るからです。

憲法を守るために

憲法を守るためには、何をすればいいのでしょうか。私は想像力を働かせること、イメージす ることだと思います。生活で大事に思うことを、憲法に近づけて考えてみましょう。憲法についてなかなか考える機会はありませんよね。だから、まずは身近な 人と話をしてみてください。憲法について自分の言葉で話すことで、初めて頭の中の回路がつながります。
「明日の自由を守る若手弁護士の会」(本紙三面で連載)が、憲法を語り合うきっかけに使えるリーフレットを発行しています。同会は女性誌『VERY』に 登場したり、カフェで憲法学習会を開くなど活動を工夫しています。
憲法を理解する一歩として、自分の好きな条文を見つけてみてはどうでしょう。私が好きなのは個人の尊重と幸福追求権を保障した一三条。生存権を保障した 二五条や、表現の自由を保障した二一条もいいかもしれません。

人の尊厳を取り戻す

ふだんは街中の法律事務所で仕事をしています。不当解雇されたり、長時間労働、パワハラに苦しむ労働者の相談もあります。依頼者は「私はただ、普通に働きたい」と訴えます。当たり前に働く権利が侵害されている。裁判は人の尊厳を取り戻すたたかいです。
生活保護の受給申請で行政窓口に追い返されたという相談もあります。「悪いのは、あなたじゃない」と依頼者に言い、励まします。たたかいをささえている のは生存権を保障した憲法です。弁護士も医療・介護従事者も、扱っているのは人の命であり、尊厳です。困っている人を助けたい。皆さんも同じでしょう。
大企業の顧問弁護士のように報酬の多い仕事もあります。「割に合わないのでは」と聞かれることもありますが、依頼者が笑顔になってくれるのが、最高のや りがいです。自由法曹団は、ひと言で言えば“弱者の味方”。権力をはじめとした強い者に虐げられ、権利を奪われた人たちを法律と運動の力で救っています。 より良い仕事をするために、より良い社会をともにつくりましょう。


憲法 この条文を知っていますか―

9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争 と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、こ れを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2.国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

(民医連新聞 第1571号 2014年5月5日)

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