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2014年5月19日

エネルギー基本計画を斬る! 立命館大学教授 大島堅一さん

 安倍内閣は4月11日、新しい「エネルギー基本計画」を閣議決定しました。原発を継続し、再生可能エネルギー推進には消極的な内 容です。環境・エネルギー政策や環境経済学に詳しい大島堅一教授(立命館大学)が問題点を指摘しました。原発をなくす全国連絡会が4月18日に行った学習 会の講演から。(丸山聡子記者)

二〇一〇年に民主党政権で作ったエネルギー基本計画は、「二〇二〇年までに九基の原発を新設する」などの計画を盛り込んだ原発推進の内容で、自民党以上に勇ましいものでした。
しかし東日本大震災と原発事故を受け、民主党政権はエネルギー政策の転換に踏み出しました。浜岡原発(静岡)停止要請、「脱原子力依存」発言に続き、一 一年一〇月には「エネルギー・環境会議」を発足させ、「原子力推進」を掲げていた「エネルギー基本計画」の見直しに着手。私も委員になり、「原発ゼロ」を 宣言する「革新的エネルギー環境戦略」を発表しました。

自民党政権で原発回帰

ところが一二年末、政権に返り咲いた自民党は「エネルギー・環境会議」を廃止。原発に慎重な立場の人を審議会から排除し、今回の「エネルギー基本計画」をまとめました。
「基本計画」には、計画の根幹となる「電源構成」の具体的数字が書かれていません。これは異例です。世論の反発を恐れ、数字を示せなかったのです。
原子力については「重要なベースロード電源」と位置づけ、「準国産エネルギー」で安定供給でき出力の変動が少なく、温室効果ガスを出さないと評価しています。
日本はウランを輸入しているのに、核燃料サイクルでリサイクルするから「準国産エネルギーだ」と強弁しています。事故が起きれば動かせず、安定供給でき ないことは事実が示しています。「コストが低廉」なのは「運転」に限ってのことで事故コストなどの社会的費用は莫大です。
事故収束・廃炉作業のこれまでの費用は約一兆七〇〇〇億円。今後一兆円とされていますが、それでは済みません。政府が言う「四〇年で廃炉」が不可能だからです。現段階でも合計一三兆円超です()。
温室効果ガスが出なくても日常的に放射能のリスクがあり、廃棄物処理も未解決。廃棄物の置き場を決めずに操業している産業は原発以外にありません。
「原子力は安くて安全」との政府の説明は偽りです。「コストもリスクも高いエネルギー」です。

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再生可能エネには消極的

一方、再生可能エネルギーについて「計画」は、「安定供給面で問題」「コスト面で問題」としています。
実際には、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは化石燃料などと違い、枯渇しません。「太陽光や風量は予測がつかず安定しない」と言われますが、技術 が向上し、一五分単位で正確な発電量の予測が可能になってきています。
初期投資はかかるものの燃料費用はゼロ。価格変動し予測困難な化石燃料に比べ、価格予測も可能です。

「脱原発」へ正念場

原子力推進を見直す目的で始まった新基本計画づくりでしたが、結局、事故前の二〇一〇年の計画と同じになってしまいました。
しかし「脱原発」の世論は空気のように定着し、増え続けています。「原子力発電は直ちにやめるべき」は三〇・七%、「段階的に縮小すべき」は五四・一% で計八四・八%(一三年三月現在。第二七回原子力委員会資料より)。「直ちにやめるべき」が年々増えています。これは汚染水が問題になる前のデータですか ら、さらに増えているでしょう。「計画」に「原発依存度を可能な限り低減する」と入ったのも、自民党でさえそう言わざるを得ない世論があったからです。
政府は原発再稼働をすぐにでも行おうとするでしょう。そして、福島の廃炉作業に国費を投入し、東電を延命させる方向です。「事故を起こしても、原発はも うかる」という前例を作らせず、東電を破綻させ、責任を果たさせなければなりません。国民の運動の正念場です。

(民医連新聞 第1572号 2014年5月19日)

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