民医連新聞

2002年4月1日

いのちと人権まもれ たたかう列島 生活相談

「県民所得」の低さ反映しサラ金・クレジット被害が多発

―再開した生活相談 長崎・大浦診療所―

 長崎・大浦診療所では「生活相談」活動を再開し、2月には11件の相談が寄せられました。内容はいずれも深刻な ものばかりです。最も多かったものがサラ金被害4件、原爆被爆者手帳の申請が2件、就職相談2件、国民健康保険料の滞納問題1件、がけ崩れの防止につい て・その他2件です。
 介護保険がはじまって以来、医療・介護についての相談が増え、ソーシャルワーカーの活動の軸足がケアマネジャーに移っていたこともあり、職員の中には 「生活相談活動が弱まっているのでは」との意識がありました。そこに「長崎あじさい相談会」に参加している市議会議員の山本誠一さん(日本共産党)からこ んな話が。「長崎あじさい相談会」は長崎市内で弁護士や司法書士が中心になってサラ金・クレジット被害者の相談をおこなっているボランティア団体で、元大 浦診療所の職員でソーシャルワーカーでもある山本市議もこれに参加しています。「大浦地域の住人からの相談がとても多い。大浦診療所の患者さんからもあり ます。診療所でも相談活動ができないだろうか」と。
 2月7日と12日午後を相談日とし、山本市議の協力をもらい、診療所のソーシャルワーカー可知よしえさんと2人で対応することに。待合室に「何でも相 談」の呼びかけのポスターを貼りだし、各職場に「相談申込書」を置き患者さんに配布しました。事前に内容を知って準備をして相談に臨もうとの配慮です。患 者さん2人から事前の申し込みがあり時間も予約しました。さて当日になると両日とも「飛び込み」の相談者が来所し、待たせてしまうほどになりました。
 サラ金の相談に来た50歳の女性は、10年前に破産宣告を受けながら再び手を出してしまい、現在約500万円にのぼる借金の返済ができなくなっていまし た。70歳代の夫婦は義理の息子が過去10年間に毎年のようにサラ金から借金し、そのたびに夫婦はサラ金会社から脅され、退職金などで4000万円もの代 理弁済をさせられていました。「もうどうにもならない」と途方に暮れて相談に来ました。70歳代の男性は、借金の整理をするために家財産をすべて処分し、 親子3人が住むところもない状況に追い込まれていました。
 対応した山本市議は解決のために、すぐ弁護士と連絡を取りました。「この人たちは、自分の命すら犠牲にしかねない事態に陥っていました。こんな苦労を抱えていたら、病気も治らないと思える」と深刻さを語ります。
 また「何か生活上のつまずきが起きた場合、銀行はお金を貸しません。街にはサラ金の看板だらけ。つい誘惑に負けてサラ金地獄に落ちてしまう。長崎市の勤 労福祉資金の貸付が廃止されたのも被害がこれだけ広がっている一因かもしれません。脅迫的な取り立てには暴力団が絡んでいるケースもあり、家庭が崩壊して いく。まさにゆがんだ社会の現れ」、と指摘します。
 長崎市では国民健康保険の資格書の発行が310世帯、短期証が5500世帯で、国保世帯の1割にも及びます。生活困難が広がっています。
 大浦診療所事務次長の山口喜久雄さんも、「長崎は県民所得が最下位から2番目。全国を吹き荒れる不況と造船不況にも見まわれ、相談内容にもこの厳しさが 現れています。患者さんの友だちや知り合いがポスターや申込書で相談日を知って来ました。患者さんの口コミ・つながりは威力がある。身近な場所で相談でき る生活支援の窓口があることが大切」と語ります。
 同診療所では、今後も月に1~2回定期的に相談活動を行う予定にしています。

(民医連新聞 第1272号 2002年4月1日)

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