民医連新聞

2002年4月1日

入職おめでとう! 医療は人と人とのつながりで成り立つ仕事です

―“社会見る目”と“仲間”大切に―
全日本民医連肥田会長のメッセージ

 みなさんの入職をこころから歓迎します。

*   *

 毎年この時期になると思い出すことがあります。私が入職した30年以上前のことです。研修先の民医連の病院は天 井に大きなすき間があって、部屋の中からでも「お月見」できるような、すごい木造二階建てでした。画像診断がようやく始まりかけた時代です。患者さんに向 きあい、触診、視診、打診、聴診を頼りに治療にあたっていました。
 そのころ。当直中に、小さな女の子の往診に呼ばれたことがありました。私たちが着いたころにはもう虫の息、マウストゥマウスの人工呼吸をし、必死で手を 尽くしましたが救えませんでした。貧しくて病院に行けず、はしかが悪化したのです。家には電話もなく、病院にもお父さんが自転車で呼びに来られていまし た。「早く治療していれば、助けられたかもしれない。貧しいという、社会的な背景が原因で医療が受けられない医療制度では救える命も救えない」と痛感しま した。忘れられません。

*   *

 親子ほど年が離れてしまった私と、皆さんの時代でも、変わらないことがあります。
 ひとつは「医療が人と人との交わりで成立する仕事」だということ。「早く技術を身につけたい」という思いは、どの職種にも共通しているだろうと思いま す。でも、それ以上に最初の3カ月、6カ月で身につけてほしいのが、患者さんとの接し方、周りの人との連携のつくり方です。いつも相手を思いやること、自 分一人ではなく、他の仲間といっしょに一人ひとりの患者さんに対応してゆく、というスタイルです。
 まず、ほかの人の言葉を受け止める習慣を身につけて下さい。それは患者さんが何を願って私たちの所に来たのかを受け止めるにも、異なる職種どうし協力し て、集団の力を発揮する上でも欠かせないことです。その上で「自分が何をしたらいいか」を考えて行動しましょう。正直に、意見も言いあいながら。

*   *

 もう一つ、社会を見る目について。いま、民医連は「医療改悪を許さない」と運動しています。医療と政治が無関係 ではないからです。たとえばこの春、診療報酬が大幅に削られ、それが影響して医療労働者の賃金が下がるおそれまで出ています。私たち民医連の事業所もその 例外ではありません。政治を抜きにしては患者さんも自分たちの生活も良くならない。「政治は苦手」と言わずに、この点もしっかり学習してつかんでほしいと 思います。

*   *

 同期の仲間たちとのつながりも大切に! これから先、直面する困難に、色いろな意味でお互いのささえになれる関係がつくれると思います。(談)


*会長の横顔*
 肥田泰(ひだ ゆたか)。1944年・東京生まれ。現在、埼玉協同病院・院長。父は民医連の草創期からかかわった医師。当時は医療費が払えない患者が多 く、「診療費」に米や野菜が届けられていた。職員の給料の遅配、欠配は日常茶飯事、その日の夕食代だけもらって帰宅、という姿を見ながら育つ。とくに父親 に民医連の話をされたことはなかったが「地域の医療を担う医者になりたい」と考えた結果、民医連へ。「無口」との定評だが、マイクを握ると「演説」も「演 歌」も止まらない、と本人談。

(民医連新聞 第1272号 2002年4月1日)

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