MIN-IRENトピックス

2021年12月3日

理事会(2021年11月)増田会長あいさつ

 衆議院選挙を受けて強調しておきたいことは、市民と野党の共闘が生み出した大きな意義と成果に確信をもつこと、そして、私たちがまとめた「民医連の要求」を実現することこそが、コロナ禍で生活を破壊された国民を癒し、自公政権によって解体されようとしている社会保障を立て直す最良の方法であるということです。加えて、憲法が新たな危機を迎えており、対抗の構えを強化することが求められています。
 今回、野党が候補者を一本化できた214の選挙区の内、勝利した約60の選挙区で落選した与党候補の惜敗率80%以上が約40選挙区、一方、野党候補が落選した選挙区での惜敗率80%以上は約50選挙区で、1万票差以内が約30選挙区でした。多くの選挙区で大激戦になり、与野党ともに幹部が落選するという事態も発生しました。開票速報を流した各局の予想も様々で、最後までどっちに転んでもおかしくないような状況が作り出されました。市民と野党の共闘が政治に緊張感を生み出し、政治的力関係を変え得る可能性を示したと言えます。そして、投票率の低さに表れているように、まだまだ多くの国民に政治変革の具体的方向性を広め切ることができていなかったことが、今回の結果の最大の要因だと思います。

 第3~5波で医療崩壊を引き起こし、治療を受けることもできないまま多くの大切ないのちが奪われ、その原因について、残念ながら総選挙では争点化されませんでした。早々に破綻した保健所機能や当初からPCR検査を拡大できなかった要因である国立感染研や地方衛生研究所の体制問題、多くの医療資源を奪うとともに濃厚接触者の扱いなど特別ルールで現場に混乱を持ち込んだ五輪強行開催、そして、対応準備のないままの基準変更・入院制限で多くの「在宅放置死」を発生させたことなど、与党候補者からの反省の弁は皆無であり、選挙期間中も全くと言っていいほど議論されませんでした。
 自民党、そして議席を伸ばした日本維新の会の選挙公約をみると、司令塔機能を強調し、有事に際した病床転換についてはその強制力を強めるという内容になっています。そこには弱体化されてきた医療・公衆衛生の拡充という視点はありません。このことは11月12日にまとめられた政府対策本部の次の感染拡大に向けた取り組み方針にも繋がっています。「自宅・宿泊療養者への対応」の項では「保健所の体制強化」という文言の具体的内容は示されず、「従来の保健所のみの対応を転換し、地域の医療機関との連携」が強調されています。第3~5波で結果として既成事実化してしまったことをそのまま新しい方針として提起する、そうしたやり方には、医療崩壊を起こした反省も、在宅死した多くの「無念」に寄り添う姿勢も感じられません。第6波への対応について、地域毎に行政や医師会などが主導して検討会議が開催されています。何よりもいのちを大切にする立場で議論を喚起することが求められています。

 11月8日、岸田首相肝いりの「新しい資本主義実現会議」は緊急提言を発表しました。内容をみると、総裁選で岸田首相が主張した「新自由主義からの転換」とはかけ離れた内容で、アベノミクスが目指した「トリクルダウン」説をあらためて表現を変えて述べているように思えます。株主資本主義からステークホルダー資本主義へ、成長の要はDX、原子力の活用や大企業への官の支援、期待された税制改革も事実上これから検討するというレベルで、全体として新自由主義政策を更に推し進める内容と言えます。加えて、将来不安が消費抑制をうむ懸念に対して全世代型社会保障の構築で対応すると、従来方針を踏襲しました。コロナ禍の最中に後期高齢者の窓口負担を2倍化するなど、一貫して患者・利用者負担を悪化させてきたのが「全世代型社会保障」体制の特徴です。中医協の議論では紹介状なしの受診時特別負担額を7000円にまで値上げする案も検討されていると報じられています。
 この緊急提言の本文には医療・介護制度についての言及は殆どありません。しかし、それを補うように、10月12日に経団連から「今後の医療・介護制度改革へ向けて」という提言が既に発出されており、セットで捉えることが必要だと思います。そこには、春の財政審建議、骨太方針2021と連なる視点がそのまま示されています。経済成長を上回るペースで医療・介護給付費が増え続けるという前提で、現役世代の社会保険料負担上昇を抑制するという理由から、数々の患者・利用者負担増が提示されています。全体として、第4期医療費適正化計画、第8次医療計画、第9期介護保険事業計画が一斉に始動する2024年の診療報酬・介護報酬同時改定の地ならしを図る内容になっており、そこにはコロナ禍で痛めつけられた国民生活への癒しの眼差しを感じ取ることはできません。
 行きすぎた新自由主義が格差を拡げ、経済発展の阻害要因にもなると言うのが世界の流れであり、日本は既に一周半位遅れてしまっている印象です。先進国の中で経済成長が最低レベルである日本の実情をどのように総括しているのか、今回の提言からは、社会保障のみならず、経済対策においても、個人消費の回復や格差の是正に繋がるのか、その実効性は疑わしく、懸念は尽きません。
 政府の新しいコロナ対策方針も、「新しい資本主義実現会議」提言も、現在の日本の窮状を根本的に解決する処方箋を示すことはできていません。市民と野党4党の合意した20政策の価値が輝くのはまさにこれからです。
 内田樹さん(神戸女学院大学名誉教授) が、総選挙結果について述べた中で、市民と野党の共闘成功にぶれずに尽力したある野党政党のカラーを「知的で倫理的にも先進的」と表しました。嘘、隠蔽、説明放棄、改竄、誤魔化し、責任逃れなど、そうしたことに慣らされてきている今の日本で、大切にすべき指摘だと感じました。

 そんな中、世界の大きな潮流は人権と公正に向かっていると感じます。イギリスでのCOP26では、数々の妥協を重ねながらも脱石炭・化石燃料の流れが着実に進んだと言えます。成果文書「グラスゴー気候合意」では冒頭に、この問題が人類共通の課題であること、行動の際には人権、健康に対する権利、先住民、地域社会、移民、児童、障害者、脆弱な人々の権利とジェンダーの平等、女性の地位向上、世代間の公平性に関する義務を尊重することが強調されています。石炭火力発電に言及した部分で、抵抗する一部の勢力の影響で「段階的廃止」が「段階的削減」にトーンダウンさせられたことに失望や批判が集中し、議長が涙ぐみ「申し訳ない」と謝罪したことも報道されました。そうしたギリギリの折衝を繰り返しながらも最終的に脱石炭の流れが確認され、気温上昇を1.5度以下に抑えるために各国が努力することが合意されたことは「パリ協定」からの前進と捉えるべきと思います。こうした流れと日本の第6次エネルギー計画とは大きく乖離しており、岸田首相の演説も現地では冷ややかに受け止められ、「化石賞」連続受賞で世界に恥を晒しました。「気候正義」を主張する若者を中心としたムーブメントには多くの共感が集まり、世界でも日本でもその波は大きく強くなっています。
 同様に、より公正な税制の確立を求める運動も、やはり「課税正義」を掲げるNGO「タックス・ジャスティス・ネットワーク(Tax Justice Network:TJN)」などの粘り強い活動により現在の変化が創り出されています。ジェンダーやLGBTQをめぐる運動も含めて、人権と公正を価値とする市民運動は、新自由主義勢力がどのような策動を画策しようとも止めることはできません。

 人々のいのち、健康に深く関わる医療・介護・福祉に従事する者として、意思表示と行動を起こし、戦争する国づくりと、「医療追い出し、介護とりあげ」の社会保障削減が一体となった政治の中で、引き続き、自公政権の暴走を阻止していきましょう。
 

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