MIN-IRENトピックス

2022年3月25日

理事会(2022年3月)増田会長あいさつ

 新型コロナウイルス感染症第6波は、一見ピークを越えたように見えましたが、感染者数は下げ止まっている印象で、BA.2への置き換わりの可能性も含めて一切の予断は許されない状況です。救急は日本中で逼迫状況がみられ、過去に経験したことが無いほど多くの搬送困難事例が日々発生しています。暫くの間は気の抜けない日々が続くと思われます。しかしながら、対応開始以来丸2年が経過していますので、受け身の姿勢ではなく、攻勢的に新しい挑戦も含めて、これまでの教訓を活かした医療・介護活動を創造していくことが求められています。

 ロシアによるウクライナ軍事侵攻は、病院までもがその標的にされるなど、事態は深刻化しています。その有り様は狂気と形容されるほどで、既に子どもを含めて多くの民間人がいのちを奪われ、数百万に及ぶ国民が国外への避難を余儀なくされています。どんな理由があろうとも、このような国連憲章に反する武力行使、一方的な人権侵害は絶対に許されるものではありません。
 現在、ロシア国内外で多くの市民が戦争反対・軍事進攻の即時中止を求めて声を上げています。今回の軍事侵攻に至った経過については、今後、様々論じられると思われます。ソ連崩壊に伴いワルシャワ条約機構は解体し、ロシア国内では新しい国づくりに難渋する状況が発生しました。旧東欧の国々は順次NATOに加盟するようになり、遂には旧ソ連の構成国だった国々にもそうした動きが出始める中、ロシアが軍事的脅威を示しながら様々な挑発的行動を行ってきたという事実があります。この約30年の間に、1999年のNATO によるコソボ空爆や2014年のロシアによるクリミア半島の併合など、様々な暴力が繰り返され、結果的に決して望まれない「憎しみ」が増幅されていったのではと想像します。結局NATOという軍事同盟は拡張し続けている訳ですが、そこには超大国アメリカの意向が色濃く影響しているということも周知の事実です。そのような事情が今回の軍事侵攻の背景にあるとされています。
 加えて、紛争解決の仲介役とならなければならない国連が、安全保障理事会常任理事国の拒否権というルールなどによって、その役割を果たし切れないという問題も浮き彫りになっています。安保理常任理事国(米英仏中露)は、第二次世界大戦の戦勝国であり、核拡散防止条約(NPT)もこの5か国のみが核兵器所有を是認されるという前提で策定されたという経緯もあります。拒否権の発動件数は、大義なきイラク戦争を行ったアメリカ、今回の暴挙・ウクライナ侵攻を行ったロシアが突出しており、これまでも拒否権の乱用とも言える事案が多数ありました。
 今回のロシアの拒否権発動に対しては、多くの加盟国の発議で特別会合が開かれ総会決議をあげることが出来ました。国際法上の強制力はないものの、小国や非同盟諸国も含めた広範な国が団結して、軍事力による支配を拒否し、覇権主義・大国主義を断じて許さないという強い意志を示したことは特筆に値します。決議は141の賛成で可決され、反対はロシアやシリアなど5か国でした。棄権した35か国の内、アフリカがその半分を占めていることは、長い間、欧州の支配下に置かれた歴史があり、近年はロシアや中国との関係が強まっているという背景からの判断なのかも知れません。また、今回の事態について、ロシアの軍事侵攻は断じて許されないとしながらも、同時に、アメリカやNATOの歩んだ歴史も考慮して「棄権」を投じた国々の存在を知っておくことも大切です。あの大戦から77年、今回のように制御不能になった軍事大国の独裁者を止める方法を確立しなければならないと強く感じます。
 ウクライナ問題は、平和を守るために本当に大切なことは何なのかを私たちに問いかけています。軍事同盟は「敵」を想定し、「敵」とされた相手は当然、負けないだけの軍事力を持とうとします。果てしない軍拡競争で喜ぶのは軍需産業とそれと結託する政府のみで、犠牲になるのはいつでも教育や社会保障、国民生活です。余談的ではありますが、今回の事態で欧州のエネルギー事情が変わり、アメリカの関連企業にとって大きなビジネスチャンスになっているという報道も散見されます。
 軍事力による均衡が如何に危ういもので、社会を破滅に導くものであるかということは、2003年の米英によるイラク戦争でも、今回のロシアによるウクライナ軍事侵攻でも明確に示されたと思います。あの大戦後、国際社会は、冷戦による軍事的対立が引き起こす矛盾から脱するために、軍縮への世界的合意を進め、数々の非人道兵器を禁止する規範をつくり、その流れの中で核兵器禁止条約の発効まで進化してきたのだと思います。こうした人類の到達点を決して逆行させてはなりません。
 今こそ「不戦・非戦」の理念を世界中に拡げなければならないと強く思います。憲法9条に込められた「戦争をしない」という強い決意は、世界中で通用する普遍性がある理念です。
 故・中村哲先生(ペシャワール会現地代表、ピース・ジャパン・メディカル・サービス総院長、九州大学高等研究院特別主幹教授などを歴任)の2014年の毎日新聞取材での言葉を紹介しておきます。
 「どんな山奥のアフガニスタン人でも、広島・長崎の原爆投下を知っている。その後の復興も『日本は一度の戦争もせずに戦後復興を成し遂げた』と思ってくれている。~ 中略~他国に攻め入らない国の国民であることがどれほど心強いか。アフガニスタンにいると『軍事力があれば我が身を守れる』というのが迷信だと分かる。敵を作らず、平和な信頼関係を築くことが一番の安全保障だと肌身に感じる。単に日本人だから命拾いしたことが何度もあった。憲法9条は日本に暮らす人々が思っている以上に、リアルで大きな力で、僕たちを守ってくれているんです」(2013 年6 月毎日新聞取材)。
 1人でも多くの人々に伝えたい言葉です。日本では、ウクライナ問題発生後、台湾有事や北朝鮮の威嚇行動を引き合いに出し、9条不要論や軍拡・核武装待望論などが、ここぞとばかりにメディアを騒がせ、それに押されるように改憲議論が一気に噴き出しています。確かにこうした動きに説得力を持たせるような情勢だと思います。大戦後の国際社会が、平和のために積み上げてきた努力と、創り上げてきた様々な規範について、そして平和憲法の持つ価値について、今こそ、若者たちと語り合うことが必要な時だと思います。
 繰り返しますが、どんな事情や背景があろうとも、プーチン政権が行なった今回の軍事侵攻は、罪なき人々を殺戮し、冷戦後の国際秩序を壊す暴挙であり、世界中の政治的不安定地域で軍事衝突を避けるために積み重ねてきた膨大な努力を台無しにする行為です。断じて容認できるものではありません。戦争をやめさせるために、世界中の平和を求める人々と連帯するとともに、軍事同盟による力の均衡でなく、「戦争をしない」という理念による平和の実現を目指して奮闘するものです。
 
 今年3月8日の国際女性デーで、国連のグテーレス事務総長はメッセージの中で、新型コロナパンデミックでの女性の活躍を称えつつも、多くの分野で女性の権利の時計の針が逆戻りしているという認識を示しました。そして、その針を前に進めるために行動することを世界に呼び掛け、女性が大統領や首相など、国の要職に就き活躍することが、公正で持続可能な世界を構築するために必要であると強調しました。日本が世界水準から激しく遅れをとっているこの分野で、確かな前進を勝ち取れるようにしたいと願っています。

 人々のいのち、健康に深く関わる医療・介護・福祉に従事する者として、意思表示と行動を起こし、戦争する国づくりと、「医療追い出し、介護とりあげ」の社会保障削減が一体となった政治の中で、引き続き、自公政権の暴走を阻止していきましょう。

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