MIN-IRENトピックス

2021年6月28日

理事会(2021年6月)増田会長あいさつ

 WHOは5月25日に、新型コロナウイルス感染症で死亡した医療・介護従事者が11万5000人に上ったことを発表しました。また、国際看護師協会は60か国の統計で看護師3000人が亡くなったことを発表(3月31日)、インドでは1200人以上の医師が命を落としたことが発表(5月30日)されています。
 世界の総感染者数は1憶7700万を、死者は380万人を越え、今もなお増え続けています。イギリス型の変異株の拡大に加えて、現在ではインドで確認されたデルタ株と謂われる変異株の増加が問題視されています。従来の約2倍の感染力があり、30~40代の重症化例が多数報告されています。ワクチン接種が進んでいる英国でさえ、デルタ株への置き換わりによる若年層への拡がりを背景に全体の感染者数が急増しており、ロックダウン解除を遅らせると報道されています。

 日本においては、多くの専門家が指摘するように、感染者数を下げ切ることができないまま緊急事態宣言が解除になれば、再拡大が起こることは明らかであり、その主体がデルタ株であれば、第4波で大阪、兵庫、福岡、沖縄、北海道などで経験した、あの悲惨な実態を上回る悲劇が起こる可能性が高いと言わざるを得ません。ワクチン接種を進めつつも、現在の構えを解くことなく気を引き締めて対応することが求められます。
 ワクチン接種ですが、総務省から全国の自治体に檄が飛び、現場状況とのすり合わせ無く前のめりの方針提起が行われる中で、様々な混乱と格差が発生しています。個別接種を行っている多くのクリニックでは終日、電話対応に追われ日常診療に大きく支障をきたしています。ICT活用ができない高齢者は予約も取れず、日々変化するワクチン情報を知ることもできず途方に暮れている状況があります。また、職域接種が開始されましたが、独自の診療所を持つような大企業や医療系学部を抱える大学では進んでいるようですが、そうした対応を直ぐに取れない中小企業などが取り残されてしまうことが懸念されます。
 改めて、ワクチン難民をつくらない、希望者を置き去りにしない取り組みがいよいよ重要になってきているという認識が必要です。各地域、事業所で特別な体制を取ってでも、この課題に積極的に挑んでいくことを呼び掛けます。また、ワクチン接種後に200人近くの死亡例が出ている事は重大です。今のところ副反応検討部会では全例因果関係不明という評価ですが、追跡調査と専門的な分析が行われるようにはたらきかけていくこと、そして、ワクチンによって有害事象を被った全ての人へ然るべき補償を求めていくことが大切だと思います。加えて、ワクチンを打たない選択をした人が不当な差別を受けないように取り組んでいくことが、ワクチン接種が進む中であらためて重視すべき課題となります。

 5月25日に、New England Journal of Medicineは、五輪出場アスリートのリスクマネージメントに関する批判記事を掲載しました。その中ではIOCの感染対策の問題点を指摘するとともに、パラアスリートの感染時のリスクや、ワクチン優先接種に関してアスリート自身が倫理的配慮から拒否する可能性などにも触れています。組織委員会は特にコメントせず6月15日にプレイブックの更新を発表しました。またLancetは6月11日に、五輪について世界的な話し合いを呼び掛ける論考を掲載し、その中で、五輪開催による新たな感染拡大の可能性に触れつつ、この点で沈黙しているWHOの姿勢を批判しています。その他、有力チームの辞退やコロナ禍で予選にすら参加できない選手の存在など、もはやこの五輪の大義は相当怪しくなっているというのが普通の感覚だと思います。
 こうした国内外、各界からの批判を無視し、元はといえば行政サイドから諮問して参加して頂いたはずの専門家の意見にも耳を貸さずに、「国民のいのちよりも五輪」としか思えないような姿勢で東京オリンピック・パラリンピック強行開催に突っ込んで行く現政権の姿は、もはや正気の沙汰とは思えません。先日の菅首相初となる党首討論での答弁内容も悲しくなるほど酷いものでした。あの内容で「丁寧に説明できた」と自己評価することもどうかしていますが、そのことをきっちりと批判できない多くのマスコミの劣化ぶりには本当にがっかりさせられます。加えて、このコロナ禍でのゴタゴタを利用して惨事便乗的に「改憲論議を進める絶好の機会」と政権幹部が暴論を述べたことや、この間の当事者たちの必死の思いに寄り添った大きなムーブメントが国会を動かし、ついに法案化に漕ぎ着けたLGBTQ法案に対し信じられないような差別的暴言を吐きつつ土壇場でその成立を妨害するなど、現政権のやることは正気の沙汰とは思えず、政権交代しか処方箋は無いと強く感じます。

 6月9日、全日本民医連として2020年度の「経済的事由による手遅れ死亡調査」結果を発表しました。今回の調査では、全体40件のうち20%がコロナ関連での事例であり、以前から悪化していた格差と貧困にコロナ禍が追い打ちをかけ、経済的困難が医療へのアクセスを阻害している様子がより顕著に表れている結果となりました。各地で記者会見を開くなど世論を喚起していくことが必要です。

 骨太の方針2021の原案が発表されました。「経済あっての財政」を唱え、2025年でのPB黒字化方針を堅持(達成年度は変更の可能性あり)、成長への原動力としてグリーン化、デジタル化、地方創生、少子化対策という前政権からの引き継ぎにしか見えない4本柱を提示し、それを支える基盤として人材育成、産官学共同のイノベーション、女性・若者の活躍などを強調しています。また、原子力の活用については、安全性を重視するとしながら、原発の再稼働や将来へ向けた研究開発など、この路線を継続することを表明しています。
 社会保障分野では、地域連携推進法人制度の活用などで連携・集約化の促進を図り、地域医療構想を推進し、かかりつけ医機能の強化など含めて医療提供体制を改革していく、そのための診療報酬見直しに言及しています。その他、予防・健康づくり事業の産業化・民間活力の導入、OTC類似薬品の保険給付範囲の見直し、処方箋の反復利用の検討など、公的な供給総量を削減する方策が列挙されています。更に、今回の後期高齢者自己負担2倍化に代表されるように、政府が進める「全世代型社会保障」の実現に向けよりいっそうの効率化を進めていくことが示され、全体としては社会保障関係費を高齢化による増加分に抑えるという従来同様の方針となっています。
 財政難の中で必要な歳入増をどのように図るのかという点で、諸外国での税制改革論議、つまりは法人税増税に現政権が舵を切るのかどうかに注目していましたが、今回の原案では、本文には明文化せず、脚注にこっそりと、諸外国での動きを参考にするといった表現でごまかしています。G7での合意がどう扱われるか注目したいと思います。全体としてコロナ禍からの教訓を活かしているとは感じられず、切実な国民の窮状を打開できるとは思えません。この原案は6月18日に閣議決定されました。

 人々のいのち、健康に深く関わる医療・介護・福祉に従事する者として、意思表示と行動を起こし、戦争する国づくりと、「医療追い出し、介護とりあげ」の社会保障削減が一体となった政治の中で、引き続き、菅政権の暴走を阻止していきましょう。

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