民医連綱領、方針

2014年6月17日

第37期第3回評議員会決定

2007年8月19日
全日本民医連第37期第3回評議員会

はじめに

 第37期第2回評議員会から、約半年が過ぎようとしています。貧困と格差に苦しむ多くの国民の苦難はいっそう広がっています。また、医療制度改悪や診療 報酬引き下げの影響を受け、医療供給体制の危機は深刻度を増し、07年は1月から6月までの医療機関の倒産は、すでに昨年1年分を超えました。21世紀に 入って最大です。さらに自主廃業や閉鎖、縮小なども相次いでいます。
 その中で私たち民医連は、国民、地域住民の医療、福祉を受ける権利を守って日常診療、医療活動を強めるとともに、悪政に立ち向かい平和・民主主義・人権を守る運動をすすめてきました。 
 民医連が提起した高齢者の生活・権利を守る運動や医療現場からの様ざまな問題提起・改善提言、医師増やせ、看護師増やせの運動は、大きく世論を動かし、情勢を切り開いてきました。
 7月30日に熊本地裁では原爆症集団訴訟で六たび、原告勝利判決を勝ち取り、国の責任を断罪しました。7月31日名古屋地裁で行われた薬害C型肝炎訴訟 では、製造年に遡って国と被告企業の責任を認める画期的な判決が出されました。東京大気汚染裁判でも原告の被害救済のためにトヨタなど被告企業の加害責任 にもとづく救済を命じ、和解を勝ち取りました。粘り強い運動の貴重な成果です。
 先の参議院選挙では、日本共産党、民主党はじめ多くの政党が医療費増、医師不足、看護師不足解消を公約に掲げました。選挙の結果、自民党・公明両党は2 年前の総選挙から1000万票以上減らし、歴史的な敗北をしました。国民は、「耐え難い貧困と格差社会の拡大」「年金問題」「政治と金の問題」「改憲など 戦後レジームからの転換」という暴走政治にNOを突きつけました。悪政を続けてきた小泉・安倍政権に対する明確な国民の意思表示です。
 そして選挙結果は、新しい政治、新しい時代を作り出す第1歩となりました。総選挙も遠くない時期に行われる可能性があります。消費税増税を許さない運 動、医療費抑制政策の抜本的転換、平和と憲法9条を守り抜くために、確実に力を蓄え、引き続き奮闘していこうではありませんか。
 一方、川崎問題はじめ民医連事業所の経営が厳しくなっています。
 3月25日に発生した能登沖地震では地協を中心に救援活動にとりくみ、災害対策特別基金から200万円を自治体に、全国からの募金1129万円を現地の 民医連に送りました。現地では、引き続き被災者への復興支援、健康管理がすすめられています。また、7月16日に発生した新潟県中越沖地震では地元自治体 に150万円を届け、募金活動の呼びかけ、支援を開始しました。また、この地震では原発企業の事故いんぺい体質と、耐震構造の不備など、日本の原発政策の ずさんさが改めて浮き彫りになりました。
 第3回評議員会は半年後に総会を迎える時期にあたり、また激変の情勢の中で、(1)民医連綱領の視点で情勢を深め変革の立場を確認し合うこと、(2)困 難な課題と乗り越える方向について現時点での教訓をまとめること、(3)第38回総会までの課題を確認し合うこと、を目標に開催します。また、(4)次期 総会役員選出にあたって選考基準や定数について確認します。

Ⅰ章 私たちをとりまく情勢の特徴と民医連の存在意義

 私たち民医連は、国民の医療や福祉を受ける権利が著しく奪われ、医師、看護師不足などによって医療が急速に崩壊している現実に対し、憲法25条の理念に 基づいて、対GDP比で日本の医療費をただちにOECD並に増やせ!と強く要求します。その前提として、経済財政諮問会議の「06年骨太方針・5年間で社 会保障費1.1兆円削減」の閣議決定の撤回を求めます。このこと抜きに、日本の医療崩壊を食い止めることはできません。私たちは、その実現めざして、参議 院選挙によって生まれた新しい政治状況のもとで、さらに共同の輪を広げ、全力で取り組みます。

1. 改憲手続き法の強行成立を踏まえ、平和・憲法を守る課題を改めて「第1義的課題」に
 いよいよ本性を現してきた「安倍=靖国派」内閣のもとで加藤紘一氏宅放火や長崎市長銃殺事件など右翼テロを礼賛(らいさん)する「右翼団体決起集会」開 催や、「誇りDVD」(日本青年会議所・日本のたましい創造グループ編)、石原慎太郎総監督による映画など戦争美化(「美しい国」づくり)大キャンペーン が張られています。自衛隊がイラク戦争反対などの国民の運動を常時監視していることが明らかになりました。その中には民医連の事業所や友の会活動も含まれ ています。自衛隊が国民を敵視し監視する、まさに戦前の憲兵政治の復活であり、絶対に許すわけにはいきません。また、米軍基地強化に反対する山口県岩国市 に対し、国は補助金をカットするなど締め付けを強めています。岩国ではそれまで反対していた公明党が、「情勢は変わった」と基地強化賛成に回りました。平 和分野でも同党の反動的体質を表したものです。
 一方、どの世論調査でも「9条守れ」の声が逆に大きく増えており、多くの識者も発言を始めています。岡山民医連職員を対象にした憲法意識調査でも「憲法 9条を変える必要なし」が04年調査より5%アップして73.4%(「わからない」が13%)となっています。アメリカ下院議会が「慰安婦問題公式謝罪を 決議」を上げました。自民党、経済界の中にすら「靖国派内閣では危険だ」との声が出ている状況です。安倍首相が唱える「戦後レジームからの転換」「美しい 国」とは明らかな戦前の価値観への回帰であり、ナチスドイツが「ワイマール体制(憲法)打破」「世界に冠たるドイツ」といっていたことと全く同一である、 と経済界の重鎮、品川正治さんは喝破されています。
 自民党は今度の参議院選挙の公約の第一に、「改憲」を掲げました。そして2011年には国会で改憲案を成立させ、国民投票にかけるとしています。今回の 選挙で、国民は改憲のねらいを明確に拒否しました。しかし、安倍首相はじめ靖国派は、憲法9条改悪に固執しつづけ、民主党内にも少なからず改憲派がいるな ど、改憲を狙う勢力の野望は根強く存在します。
 憲法改悪を阻止する国民的多数派をつくりあげるたかいが正念場を迎えます。「あれやこれやの課題ではない。民医連運動の第1義的課題」(第36期第1回評議員会決定)とした真価が問われる情勢です。
 そのために私たちは、「学習し、自分の頭で考え、行動する」、「体験も重視し、自分の言葉で話す」職員、共同組織の仲間をどれだけ多く増やせるか、創造 的に行動することができるか、が問われています。今、民医連関係の「9条の会」は1200を超えました。あらためてすべての事業所、共同組織の中での「9 条の会」づくりと活動重視を呼びかけます。SW9条の会、埼玉協同病院「いのちのSANBA9条の会」のような創造的な取り組みや愛媛、山梨などの平和学 校開催を推進し、また辺野古連帯行動、平和ツアー、全日本民医連平和学校なども積極的に活用し、平和サークルや平和自転車リレーなどの経験を全国的に広 げ、その中で仲間を育て、たたかいを組織していきましょう。当面、今秋に延長を画策しているテロ特措法延長を許さないたたかいが重要です。
 堤未果さん(9.11に遭遇・以後アメリカや日本で講演活動)は、全日本民医連が開催した平和活動交流集会で講演し、を次のような感想を寄せて頂いてい ます。「なによりも怖いのは政党でもマスコミでもない。無関心であること。まだこの手に1票がある。憲法9条は健在だ。日本にこのような(民医連の)運動 があることに感動した。日本に帰ってきて良かった。アメリカのイラク派遣兵の中に、日本の憲法9条へのあこがれが広がっている。」
 今度の参議院選挙では、党派をこえて多くの候補者が「憲法9条を変えない」との公約を掲ざるを得ない状況をつくり出しました。
 運動の広がり、若い職員の確かな成長に確信を持ち、改憲を発動させない、憲法9条を守り抜くために引き続き奮闘しましょう。

2. 医療構造改革路線の問題点と全日本民医連の立場
 第2回評議員会では「貧困と格差拡大」の実態のリアルに分析し、誰がこのような状況を作り出してきたのかを明らかにし、高齢者や社会的に困難な立場の人 びとの生きる権利を守るための奮闘を呼びかけました。現在、各地で高齢者の生活を守る月間がとりくまれ、また日々の活動を通じて、いのちと健康、生活、受 療権を守る活動がくり広げられています。
 昨年の通常国会で成立し、2008年度から本格実施されようとしている医療構造改革は、主に後期高齢者医療制度創設、新地域医療計画の実施、療養病床の 削減、特定健診・保健指導の実施を柱とし、現在着ちゃくと準備がすすめられています。計画がわかるにつれ、世界に類を見ない差別的制度であることが明らか になってきました。75歳以上で構成する後期高齢者医療制度は1300万人が対象となり、あらたに保険料を徴収される人が200万人、全加入者の年間保険 料は平均7.5万円となります。後期高齢者の増加に伴い、保険料が自動的に引き上げられるか、受診抑制や診療報酬の引き下げが行われるという「悪夢のサイ クル」のような制度です。年金が月1.5万円以上の高齢者からは介護保険料とともに後期高齢者保険料が天引きされ「とりっぱぐれ」が出ない仕組みとなり、 低い年金では生活が成り立ちません。さらに天引き対象外の260万人、月1.5万円未満の年金者や無年金者が保険料を滞納すれば、国保と同じく資格証明書 が発行されます。個人の尊厳、生きる権利を謳った憲法13条、25条に違反することは明らかであり、「低所得者には特別の配慮を行う」とした国会付帯決議 にも反します。
 全日本民医連が昨年秋に行った2万人を対象とした高齢者生活実態調査では、月収10万円未満の高齢者が4割を超え(女性では5割を超える)、将来不安を 抱えていること、医療・介護費用などこれ以上の負担に耐えられない実態をあらためて明らかにし、告発しました(「見解」および茶ビラなど参照)。全日本お よび各県連が記者会見で発表するたびに、マスコミに取り上げられました。行政関係者からも問い合わせがきています。
 療養病床の廃止(2012年までに38万床→15万床へ)は、在宅や他施設の受け皿がないなかで、診療報酬、介護報酬引き下げで「療養病床」そのものを 成り立たなくさせた上に、削減を推しすすめようとしており、行き場を失う「医療難民」、「介護難民」の急増が予想されます。
 現在、全国で38万人が特養入所を待機している状況です。昨年8月に開所し民医連に加盟する尼崎の特養「あまの里」では600人が待機中とのことです。 1973年から1983年までは国の制度として70歳以上の老人医療は無料でした。いつから日本は、これほど高齢者いじめの国となったのでしょうか。それ が「美しい国」の姿であるならば、断固拒否すべき国の姿です。
 特定健診・特定保健指導制度も、これまでの自治体健診(老健法にもとづく基本健康診査など)にかわって、「メタボリック症候群」対策に特化した健診とな ります。これは、医療費の抑制のために、健診の公的責任を放棄し、健診を各保険者にまる投げし、しかも特定健診・特定保健指導を民間業者への委託し、保健 事業を営利化するものです。この動きの中で、自治体健診そのものの廃止や健診の内容の見直し(診察の減少、胸部レ線の廃止など)、がすすめられようとして います。この結果、無保険者や政管健保家族、75歳以上の後期高齢者などが健診から排除される可能性も含んでいます。さらに、自治体財政の危機とも関連し て、自治体が独自に行ってきた癌検診の見直し・縮小・廃止なども検討されています。まさに「健康の自己責任」を求めるものであり、「早期発見・早期治療」 の道を閉ざすものです。現に死亡率が最も多い悪性新生物をみない健診になれば、将来的に日本人の健康に多大な影響が及びます。
 事業者としての準備を遅滞なくすすめるとともに、「対応」のみに追われることなく、問題点を告発し、自治体や国にむけて運動をすすめましょう。
 全日本民医連は、先の高齢者生活実態調査などを踏まえ、「高齢者は長生きするなというのか 自公政権!(後期高齢者医療制度・療養病床削減中止・撤回を 求める)」見解を発表し、記者会見(全日本民医連、各県連)を行い、社会に問題提起してきました。また民医連新聞号外(220万枚)や紙芝居を活用し、地 域で運動を広げています。全国9千病院への「見解」送付に対し、多くの賛同が集まっています。さらにこの間、国保死亡事例調査、介護事例調査、孤独死調 査、未収金急増の実態調査(調査中)など、日常診療の中の事例を通じて調査活動を行い、背景にある社会問題を告発してきました。
 また、広域連合のあり方や制度そのものの撤回、抜本的な転換を求め、各地で広域連合や自治体への請願や要望書を出すなど、運動を広げています。資格証明 書や短期保険証など国保料(税)滞納世帯への制裁をやめさせ、患者の受療権を守るとりくみもすすめられています。
 記者会見や告発、運動を通じてNHKなどTVや全国紙、地方紙、週刊誌などが、現在、毎日のように民医連の事例、事業所を取り上げ、取材を申し込んでき ています。これほど民医連が注目を集めた時期はありません。「実態を知ろうと思えば、リアルな状況を掴んでいるのはあなた達だ」(あるマスコミ関係者)と いう言葉が象徴的です。
 コムスン事件は、医療・介護の分野を営利目的化(上場して株操作で利益を上げる企業などの参入)を容認してきた政策と、介護保険制度そのものの問題点を 浮き彫りにしました。介護労働の厳しい実態も明らかなりました。医療や介護・福祉は憲法で保障された人権を守る行為であり、決して「商品」ではありませ ん。権利としての介護を守り、前進させるために、制度の見直しと介護報酬の改善が必要です。私たちはこの立場を改めて確認し、運動を内外に呼びかけます。

3.医師・看護師をめぐる情勢と切り開いてきた私たちの運動
 昨年の九州沖縄の「地域医療を守れ シンポ」を皮切りに全国各地協、各地で「地域医療を守れ、医師・看護師増やせ」のシンポが開催されています。この過 程で病院長ら病院幹部との懇談が旺盛に取り組まれ幅広い共同を広げてきました。本田宏医師(済生会栗橋病院副院長)、小山田惠氏(全国自治体病院協議会会 長)などが集会で講演し、大いに参加者を激励しています。また、地域の医療崩壊の危機に対抗して、民医連や共同組織が中心となり、例えば、市立病院の休日 診療への参加(北海道・ねむろ医院)や県立病院の若手小児科医への研修指導をする(鹿児島・奄美)など地域医療を守るための具体的な連携や共同の取り組み も始まっています。
 5月27日、秋田では「地域医療守れ!医師・看護師増やせ」の集会を社保協が中心となって開催し、千人以上で大成功を収めました。この集会には県内全自 治体、公明党を除く全政党、県医師会、各職能団体、患者、住民団体などが賛同しました。同じような集会が近畿、鹿児島、宮崎、沖縄、中国四国、など各地で 次々に開催され、また東海・北陸、南関東・茨城などで準備されています。
 そうした運動が世論となり、25年ぶりに医学部の定員が増やされることとなり、来年度から10県10大学と自治医大で新入医学生110人増の見通しとな りました。しかし、このままの医師養成状況では2020年にはOECD加盟国(30カ国)中、最下位レベルとなるとのことです(近藤克則日本福祉大学教 授)。日本外科学会は、7月7日付朝日新聞に医療危機「今、患者さんと医師がともに考えることが必要です」との全面広告を掲載し、国民との共同を呼びかけ ました。6月24日付朝日新聞は「医師養成数を増やせ、このままでは日本の医療は大変なことになる」との見解を社説で訴えました。このように私たちは、ド クターウェーブの提起と運動を通じて、「偏在ではなく14万人の絶対的医師不足であり、医師増やせ・医療費増やせ」の世論をつくり出してきました。82 年、97年の2度にわたって閣議決定した「医学部定数削減」方針を撤回し、増員を迫ることが必要です。ピーク時から8%減らされている医学部定員を当時の 8300人にただちに戻すことを強く要求していきます。
 全日本民医連は、ドクターウェーブ方針に基づき、新たに50万部の『医師を増やして!安全で安心な医療のために』」のパンフレットを発行しました。これ を活用し、すべての自治体や医療機関、勤務医、開業医、各学会などと懇談し、さらに共同組織の仲間とともに、医師養成政策の転換を求めていきましょう。
 看護師増員闘争(ナースウェーブ)はこの1年半の運動を通じて、看護師が自ら立ち上がり、主体者となり、かつてない大きな運動をつくり上げてきました。 マスコミなども積極的に活用し、他の病院などにも訴え、看護師増員を求める100万筆署名を達成し、国会決議(民医連史上初めて)を上げさせました。(今 国会でも最終日、全日本民医連からの請願が再度、全会派一致で本会議採択された)。私たちがナースウェーブの運動を提起したとき、医療界には「偏在論、病 院過剰論」が横行していました。私たちのたたかいが世論を動かし、民医連の存在意義が発揮されました。6月1日現在、641の自治体決議(全自治体の 34%)で上がっており、6月議会では、さらに増える見込みです。
 奈良新聞には12回連載で「笑顔のままで~きらり看護」のテーマで奈良民医連・平和会の民医連看護実践が掲載されました。こうした民医連の看護を広げる 経験が全国各地で生まれています。たたかいの中で民医連看護への確信が広がり、民医連看護を担う人づくりの面でも大きな役割を果たしてきました。
 福岡ナースウェーブの会(民医連、医労連が協力し県内全病院に呼びかけ、7月現在180病院を訪問、7494人の看護師が賛同)は恒常的な組織に発展 し、県内の病院就業看護師の15%に広がっています。こうした経験を全国に広げましょう。
 今後、各県毎の看護師需給計画の見直しで養成数増員や保育所の整備など働きつづけられる条件整備を求めること、すべての医療現場に行き届いた看護が出来 る体制確保のために診療報酬引き上げを要求するなど、より具体的な要求を掲げた運動が必要です。全日本民医連として、看護師の養成や需給計画に対する「民 医連の要求と政策」を作成します。
 新しく作成した全日本民医連看護パンフ『キラっと輝くたからもの』に紹介された7つの事例をはじめ民医連の看護実践は、私たちの誇りです。大いに学び、 また自施設の看護実践とあわせて、内部だけでなく多くの国民、医療関係者に広めることが必要です。あらたに「民医連の看護を語る大運動」を提起します。
 10月18日に日比谷野外音楽堂で開催される「医療費増やせ、医師・看護師増やせ国民大集会」を昨年以上の規模で成功させ、全国で総決起しましょう。

4.国民の苦難への共感を深め、医療構造改革路線の転換めざして奮闘を
 自殺者が9年連続3万人を超え、介護殺人も後を絶ちません。ネットカフェ難民となっている18歳の若い女性が「一晩でいいから足を伸ばしてぐっすり眠り たい」と語っています。派遣労働者は労災保険も適用されにくい状況があります。どうして世界第2位の経済力を誇る日本で「医療難民」「介護難民」「出産難 民」「ネットカフェ難民」などという衝撃的な言葉が蔓延し、人間としての尊厳が踏みにじられるのでしょうか。これらは決して自然現象ではありません。政治 が生み出した深刻な日本の「姿」であり大きな社会矛盾です。「少子化」が問題となっていますが、その最大の要因が経済的な条件がないことです。しかも産婦 人科や小児科が減少している中では、子どもを生み育てることはできません。人間に優しくない社会、人間の尊厳を踏みにじる政治に未来はありません。
 安倍政権は発足以来10ヵ月間で5人の閣僚(他に本間経済財政諮問会議・税制調査会会長)が辞任・自殺し、消えた年金問題、原爆容認発言などを通じて国 民の支持を急速いました。中でも、原爆容認発言は断じて許すことは出来ません。安倍内閣は教育基本法改悪、改憲手続き法など17の重要法案を強行採決で成 立させ、参議院の委員会採択を省略し本会議にかけるなど参議院の存在や民主主義を真っ向から否定する反動的内閣でした。退陣するのが当然です。参議院で は、絶対的な少数与党となりました。民主党を含むほとんどの野党が医療費を増やすことや医師・看護師増員、障害者自立支援法の見直し、裁判外紛争処理機関 設置などを公約に掲げました。このことは、今後の運動次第では、医療費抑制政策転換の可能性を作り出しました。医師政治連盟や看護政治連盟などが推薦する 自民党候補は軒並み落選しました。医療関係者の痛烈な審判です。
 政府がすすめようとしている「僻地勤務義務化」や「病院や科の集約化」、「都市部臨床研修病院定員削減」論や「7:1病院限定」などの動きに私たちは与 (くみ)するものではありません。今後、多くの国民、医療関係者との共同を強め、政策転換を迫っていきましょう。
 そのためには、第2回評議員会で提起したように、「地域を主戦場」に奮闘しましょう。
「民医連でがんばる」、「民医連ががんばる」ということは、「人間の尊厳」「いのちの平等」を守るとことです。それは社会に対しても、目の前の患者さん、利用者さんに対しても、仲間や家族に対しても同じことです。
 この運動とたたかいを通じて、パート含め8万職員、322万共同組織に依拠し、成長する組織、人づくりをいっそう強めることを呼びかけます。

Ⅱ章 第2回評議員会以降の課題

 情勢を変革的に捉え、「アキラメナイ」こと、そして「ねばり強くたたかう」ことを基本に、内部で起きていることを直視することが大切です。
 同時に、内部で起きていることは、民医連運動が前進のために乗り越えなければならない壁です。
「前倒産状態に陥った川崎」「全国的によびかけた北海道勤医協基金」など、いくつかの法人の経営困難の顕在化がありますが、これらは、山梨、健和、同仁会 などの経営危機以来の繰り返してきた問題(1998年の同仁会問題では、「医療と経営」「院所と地域」「管理と職場」3つの乖離や「統一会計基準の遵守」 「全国や県連への自覚的結集」などとしてまとめられた。)でもあり、困難な情勢のもとで「形」をかえて表れてきた問題でもあります。また、「室料差額徴 収」問題は、情勢の受け止めと民医連運動のあり方の立場から、他の法人の問題とせず各法人や事業所で自己分析が必要な課題です。
全日本民医連は、

川崎医療生協の経営困難の発生に対し経営困難支援規定を初めて適用しました。
徳島、北海道勤医協はじめ各地の経営問題と全国的な連帯支援を行いました。
「室料差額」徴収問題で、パンフレット(16万部)を発行し、全国的な議論を呼びかけました。

 非営利・共同の事業体であり、共同組織、地域住民に支えられた民医連経営・事業所を守り抜く課 題は、「医療機関つぶし」政策のもとで、今日、それ自体が「たたかい」です。管理部、職員、共同組織、労働組合などの英知を集めて、乗り越えるべき「第一 級」の課題です。現在、起きている問題は、多くの法人、事業所に共通する課題を内包していると考えられます。したがって、経営困難や危機の経験を自らの組 織に照らして自己点検し、改善にむけて努力していくことが重要です。

〈現時点での課題として〉
深刻な医療・社会保障改悪の経営への影響、急速な悪化(スクラップ&ビルド政策)
情勢の厳しさの中で、情勢の受け止め、医療や地域をめぐる情勢討議、分析が不足し、そこから生まれる立場・理念の「揺らぎ」、「受け止め」のズレがないか
時代・情勢を切り開く医療経営構造転換についての「総合戦略」が確立しているか、経営問題とのミスマッチはなかったか(赤字構造の放置がなかったかなど)
管理運営におけるリーダーシップのあり方(院長・事務長・総師長など幹部集団の団結とコミュニケーションの問題、めざすべき目標と情報の公開と共有の課題、職員教育、モチベーションを高める問題、労働組合との対等平等の関係づくり)
経営管理(統一会計基準の遵守)・資金管理(06年度経営委員長会議では予想資金繰り表未作成が4割)におけるトップのリーダーシップの不在、早期発見の遅れ
事務幹部の養成の立ち後れ
規模や情勢とマッチしない事務(実務)力量の問題
医師問題、看護師問題が経営問題に直結、トップ管理課題となっているか
運動論の弱さ(軽視)と民主主義の欠如
全日本民医連や県連への結集や方針の受け止めの不十分さ
全日本民医連、地協、県連として検討すべき問題(指導・援助のあり方)
などが上げられます。

 全日本民医連として現時点での教訓を掘り下げ、秋の病院長会議や経営委員長会議、法人幹部会議などを通じてさらに深め、全国に発信していきます。私たちは、「進んだ経験」から学ぶだけではく「痛恨の経験」からも積極的に学ぶことができる組織です。
 同時にこの間、全日本民医連も関わってきた法人での経営改善のとりくみは、まだ緒についたところですが前進も始まっています。
 全日本民医連は川崎医療生協からの要請にもとづき、4月14日、神奈川県連とともに経営現地調査を行いました。その結果を踏まえ、このままでは確実に1 年以内に資金ショートの危機にある「前倒産状態」であると判断し、経営困難支援規定に基づく対策委員会を設置しました。そして、全国連帯基金の発動、再建 に必要な人的支援、増収、支出、資金、管理の各課題を含む川崎医療生協経営再建計画を策定しました。
 川崎では、総代会が開かれ、再建方針が確認されました。総代会では、老齢の組合員から「日本鋼管や池貝鉄工所などをレットパージされた仲間が、なけなし の退職金で診療所をつくった。労働者がもっとも欲したのは自らの健康を守ってくれる医療機関。医師や看護師は同じく結核研究所をレッドパージされた人た ち。なぜ川崎が生まれたのか、なぜ歴史をつなぐことが必要か」語られました。
 全国連帯基金は、緊急県連事務局長会議も開催し、6月20日までに、全ての県連から2億円が結集されました。銀行の担当者も「全国的な連帯の力」に驚く状況を生んでいます。現地では職種別の集会も開催されています。
 この7月、全日本民医連副会長が現地の要請に基づき院長として着任しました。5月末からは全日本民医連、県連が現地対策本部にすわり、援助を行っていま す。同じ経験をした大阪・同仁会からも院長など激励と連帯のために現地に入っています。労働組合は、理事会との協議を通じ、9%の賃下げを合意しました。 一律ではなく、若い層、体系の低い部分への配慮した内容です。6月30日には約90人が参加して一斉組合員訪問を実施しました。川崎協同病院は5月~7 月、医師、看護師など職員の奮闘で病床稼働率のアップなどで黒字を実現しました。
 徳島でもこの半年間、黒字を続けています。整形外科、内科などの支援が九沖、中四地協から行われています。宮城も個室率40%の新病院が黒字化しつつあり、黒字体質へと転換しつつあります。 
 北海道勤医協は、地域の未曾有(みぞう)の困難に立ち向かい、再生をめざし医療・経営構造の転換にむけ運動を開始しました。北海道勤医協基金は職員・地 域・全道・全国からすでに14億円を超えました。山梨では当時を知る職員が既に5分の1という中で、1983年の倒産時、北海道勤医協の青年JBや労働組 合が中心となり、連帯の意を込めて全職員に送った「鮭」の話を語りながら、基金を組織しています。そのことで新たな連帯を生んでいます。
 私たちのめざす経営再建は民医連的再建です。再建過程の中で、常に、「誰のために」、「なんのために」、「誰による」再建なにかを問い続けるものです。
 経営困難を克服する上で、これまでの特徴として、(1)困難を直視し、小手先ではない対応、なんのために私たちが地域で存在するのかを問い直し、地域の 人びと、最も困難な立場の人びとの役に立つ法人、事業所でありたいと幹部が腹を決め、決意を示したこと、(2)とりわけ、医師集団の中での議論と団結が重 視されていること、(3)そして再建の推進力、主体者として、情報や目標の共有を重視し、職員や労働組合、共同組織の仲間に依拠し、仲間のモチベーション を高める努力が払われていること、(4)全日本民医連、地協、県連的な連帯の力の発揮、などが上げられます。
 医療制度・診療報酬制度が紆余曲折(うよきょくせつ)する中で(医療費抑制・市場化営利化は一貫している)厳しい対応が迫られています。さらに2008 年問題(医療構造改革の本格的着手、診療報酬改訂)をひかえ、このままでは、経営がさらに厳しい状況になると予測されます。その際、小手先の対応のみに走 らず、昨年の経営管理者交流集会や第2回評議員会で提起した、(1)政策動向を注視しつつ地域の要求、実態をリアルに掴み、自らの民医連事業所としてのポ ジショニングを定めること、(2)求められることは「規模」ではなく、「機能」であること、地域や民医連事業所との「連携」、「共同」を重視すること、 (3)収益減の最大の課題は患者減にあり、健診、受療権を守る取り組みを重視すること、(4)医師、看護師体制の強化、労働軽減への援助、(5)職員や共 同組織に依拠した経営活動の推進など、民医連らしい活動の強化(全国的には様々な経験が生まれている)で地域に依拠する、地域から支持される事業所づくり をめざすことを改めて強調します。その際、医療・介護の事業構想と経営構想を一体のものとして、医師や看護部門などでの論議を重視すること。経営管理にあ たっては、民医連統一会計基準の遵守と資金管理を強めることが今日的にとりわけ重要です。2007年度は、以上のとりくみを通じて、医科、歯科を含め全法 人・事業所で黒字決算をめざし、情勢負けしない08年予算づくりめざして早期から総合戦略づくりに着手することを呼びかけます。
 この困難は、日本の全ての医療機関に襲いかかっており、元凶は自民党・公明党の悪政、医療・社会保障費抑制政策にあることは間違ありません。全日本民医 連06年度経営実態調査(速報値)では、黒字比率は71.2%と健闘しつつも、利益幅は半減しました。最たる理由は▲30億円の収益減で、中でも外来は ▲38億円減少です。すなわち外来収益減少=利益減となっています。中でも、大都市部と100~199床の中小病院の経営困難が目立っています。
 診療報酬引き上げと受療権侵害につながる自己負担増の解消なくして、医療もいのちも私たちの経営も守り抜くことはできない状況です。このことは日本中の 医療機関の共通の認識です。私たちは、事業体であるとともに、日本の平和・人権・医療、福祉の拡充をめざす運動体です。
 そのことを改めて確認し、アメリカを除いて先進国一番高い患者自己負担の引き下げ、国保などへの国庫補助の引き上げ、診療報酬の大幅な引き上げ、高齢者 医療制度の撤回などの運動の先頭に立ち、民医連の役割を大いに発揮しましょう。
 全日本民医連は室料差額徴収問題で見解をまとめパンフレットを発行して全国的な討議を呼びかけました。積極的に受け止められ、「民医連の立場について理 解、確信が深まった」と職員や共同組織の仲間、友誼団体から多くの声が寄せられています。
 政府・財界が、「経営が厳しいのであれば、どうぞ差額徴収(保険外療養費)を」と誘導しているもとで、「経営を守る、病院建設のため」を理由に差額室料を徴収するという立場をとらないことをあらためて確認します。
 一部ですが、「ひとり民医連が頑張っていても情勢は変わらない」「個室は時代の流れであり、住民自身の要求であり、差額徴収はやむを得ない」「全世代・ 全階層を対象にする」といった意見が、室料差額徴収を容認する立場からあります。本当にそうでしょうか。
 民医連が提起し続けてきた「最も困難な人びと」の立場に立ち、「最後のよりどころ」となろうとの視点は、憲法で保障された全ての国民の権利を守り抜くと いう立場です。お金が払えないために、受診を抑制せざるを得ない人たちが急増するなかで、室料差額を徴収しないという民医連の立場は、今日ますます重要で す。個室を少しでも増やすことや療養環境改善にいっそう努力することは当然であり、多くの民医連の病院、事業所が努力を続けています。困難は伴いますが、 今日、民医連の事業所が室料差額をしなければ経営的に成り立たないという認識を全日本民医連はしていません。まだまだ知恵を出す余地は十分にあると考えま す。全国の経験から学び合うことが重要です。

Ⅲ章 第38回総会までの課題と重点

1.「人権・憲法・平和」の大運動
(1) 全ての事業所・職場・共同組織に9条の会をつくり、辺野古連帯行動(10月、12月予 定)、9日・25日の学習・宣伝行動はじめ、戦争体験を聞く会など創意を生かして地域、職場から日常的な平和・憲法を守る活動を強化しましょう。9月9日 は全国一斉宣伝行動を行います。秋からのたたかいの意思統一のため社保委員長会議(9月4~5日・大阪)を開催します。
(2) 後期高齢者医療制度、療養病床削減中止・撤回を求める運動を大だい的に展開します。年 内に「医療危機打開署名」100万筆、「保険で良い歯科医療を」の実現を求める10万署名の達成めざします。後期高齢者医療制度、70~74歳の2割負担 の中止を求めて、徹底的に地域に出かけましょう。広域連合・自治体との懇談、自治体決議などに取り組みましょう。「調査し、学習し、行動する」を基本に事 業所で他団体とも連携し、相談活動を強めましょう。
(3) 特定健診・特定指導にむけて、事業者としての準備をすすめるとともに、健康づくりの運動を地域・共同組織とともにすすめ、行政との懇談、要望など提案型運動を行いましょう。
(4) 秋、『明日を開く社会保障(新版)』を発行します。今後1年間、事例・体験と結びついた学習運動を呼びかけます。

 

2.「OECD並に医療費・社会保障費を増やせ、診療報酬増やせ」大運動
(1) なによりも今後5年間で1.1兆円の医療費削減政策の転換を求め、ただちに医療費をOECD並に増やせの大運動を他団体と共同してすすめます。
(2) 地域密着型シンポジウムを、民医連事業所のあるすべての地域でシンポ開催しましょう。
(3) 具体的な地域医療の困難に対し、地域の医療と福祉を守るため、地域連携、提案型の運動を強めましょう。
(4) ドクターウェーブ方針に基づく具体的な運動をすすめまましょう。
(5) 高齢者の自己負担を減らす運動と一緒に、診療報酬引き上げの運動を国民的運動として展開します。そのための政策提言、要望書をまとめます。

 

3.医療と経営を握って離さず、民医連経営を守りぬこう
(1) 昨年行った病院管理者交流集会(博多集会)の提起を練り上げ、「2008年」対応に備 えましょう。全国病院長会議(9月15日~16日)、法人経営幹部会議(9月27日~28日)、介護事業責任者会議(10月30日~31日)、経営委員長 会議(11月9日~10日)、医活委員長会議(12月1日~2日)などを開催し、具体的課題での意思統一をめざします。
(2) 歯科分野の経営改善を重視しましょう。
(3) 要対策11項目の見直し、短期的経営困難度指標の見直し・・・早期発見の仕組みを作成し提起します。
(4) 資金繰り表のチェック(現預金保有高月商1倍以上確保)を重視しましょう。
(5) 地協・県連経営委員会機能の強化をはかります(経営検討、事前建設計画のチェックシステムの見直しも視野に入れて)。
(6) 民医連統一会計推進士養成をはじめ、事務幹部の恒常的育成にむけて方針作成を急ぎます。

 

4.共同組織月間を特別に位置づけ「地域から平和と生存権を守り抜き、仲間との連帯を強める」月間として成功させよう
(1) 第9回共同組織活動交流全国集会(9月30日~10月1日・長野)を成功させましょう。今年は、目標の30%を達成して集会を迎えましょう。
(2) 集会成功を節目に、共同組織強化月間で各職員1人以上の仲間ふやしを含め13万人の仲間ふやし、『いつでも元気』5.8万部を必ず達成し、第38回総会までに、330万仲間ふやし、6万の「元気」普及を実現させましょう。
(3) 友の会型共同組織のあらたな飛躍のために、パンフレットの改訂をすすめ、第38回総会で方針として提起します。

 

5.医療事故の原因究明・再発防止、被害者救済をめざす「第3者機関設置」の実現にむけて運動を展開しよう
(1) 警察介入を許さない仕組み、モデル事業の問題点と課題の整理、被害救済制度の創設、裁 判外紛争処理制度の創設、双方向による相談窓口設置などの見当を踏まえ、「第3者機関」設置実現にむけて運動を強めます。(『第3者機関設置求めるパンフ (仮)』(かもがわ出版から発行予定)。
(2) そのため9月以降、厚生労働省交渉、国会議員要請活動、各団体との懇談や共同をすすめ、1月19日(予定)にシンポを開催します。
(3) あらためて、民医連医療事故対応方針の徹底をはかりましょう。学習材料となるパンフレットを発行します。

 

6.医師、看護師確保と養成、定着を重視しよう
(1) 医師奨学生対策の抜本的強化をはかり(この夏の月間で50人奨学生を新たに迎える)、来年の総会までに年間100人増を実現させましょう。
(2) 医学生ゼミナール(8月)の成功にむけ援助するとともに、全日本民医連医学生のつどい(8月17日~19日・滋賀)を成功させましょう。
(3) 前期・後期研修の充実、08卒対策を重視し目標を実現しましょう。
(4) 民医連を担う、民医連で働きつづけられる医師(理念・制度教育、賃金・労働条件、女性医師、職場労働環境改善、孤立させない、コミュニケーション不全の解消、事務幹部の役割など)にむけて議論と具体化をはかりましょう。
(5) 医師集団づくりのために、臓器別専門医の養成、中小病院の医療構想と担い手、診療所・家庭医づくりを総合的にすすめる医師政策づくりを討議し第38回総会につなげます。
(6) 仲間を大切にし育ち合う職場づくりを進めましょう。看護職員の定着と新卒看護師確保を 重視し、全国で最低1000人以上の新卒確保をめざし運動します。既卒対策も含め確保に全力を尽くしましょう(紹介運動、再就職セミナーなど)。そのため 「看護パンフ」を活用した「民医連看護を語る運動」を行います。
(7) 現在、国民医療研究所との共同事業(日野秀逸所長責任者)として行っている「日本の看護制度のあり方」提言づくりの一貫として民医連病院で看護アンケート(民医連で働きつづけられるために)を実施し、まとめます。
(8) 看護改善大運動の到達点を踏まえ、厚生労働省、中医協、自治体にむけて「民医連の要求と政策」をまとめ、運動を積み上げます。そのためにも全ての病院が「看護必要度調査」を実施し、要求につなげていきましょう。
(9) この間の連携や共同を大切に、地域で医師・看護師増員、医療改善をめざし、他団体との「共同」「連携」を重視しましょう。
(10) 「地域医療守れ、医師・看護師増やせ10・18中央集会」を大きく成功させましょう。

 

7.職員の民医連への確信を深め、民医連職員としての成長のために
(1) 教育委員長会議の問題提起を踏まえ、民医連の理念・歴史を学ぶこと、民医連で働くこと への「確信」づくりを重視しましょう。制度学習と生きた学習・体験を結び、職員育成をすすめましょう(41%が34歳以下、急増する介護分野職員、非正規 職員への働きかけ)。職員の健康づくり交流会(9月1日~2日)を成功させ、この分野での前進をめざしましょう。
(2) 青年職員が育つ「土壌」としての事業所・職場づくりと青年ジャンボリー(10月21日~23日・大阪)を成功させましょう。今年度も韓国緑色病院の青年を招待し、交流を深めます。
(3) トップ管理研修会を成功させましょう(11月22日~25日・東京)。積極的な参加を呼びかけます。

 

8.介護事業の整備をはじめ、介護分野の取り組みを強めよう。
(1) 全日本民医連が提起している介護事業の点検やり抜き、事業整備、介護の質向上を意識的にすすめましょう。
(2) コムスンに見られる営利企業の参入の問題点を明らかにし、見直しの運動をすすめます。
(3) 介護保険改悪後、56万人以上の「介護の取り上げ」がすすみ、利用者の困難が拡大しています。高齢者の生活と人権を守る民医連への期待が高まっています。「最後まで安心して」を支える介護の実践、地域の拠点づくりをめざしましょう。
(4) 介護現場の厳しい実態がマスコミでも取り上げられています。深刻な人手不足、厳しい経営、労働条件、賃金を余儀なくされている介護分野の改善めざし、介護報酬引き上げの運動をすすめます。

 

9.民医連組織のあらたな前進のために
(1) 民医連綱領の見直しは、引き続き理事会で協議を続け、まとまった段階で提案を行う予定です。
(2) あらためて第35期第2回評議員会で提起した「県連7つの機能」((1)全日本民医連 方針の討議と具体化、県連理事会機能と機構の整備、(2)県連長期計画の策定と具体化、法人事業計画と経営の掌握と指導援助、県連共同事業の推進、(3) 県を代表する運動組織としての役割、(4)共同組織の拡大と交流、『元気』の普及、(5)民医連運動を主体的に担う職員育成と後継者養成の計画と具体化 (教育事業の推進)、(6)医師問題での前進、地協と共同して民医連運動を担う医師養成推進、(7)民医連組織を守り前進させるとりくみ)にもとづく強化 を呼びかけます。
(3) 第8回学術運動交流集会(11月16~17日・広島)を成功させましょう。特に意識的に医師の参加組織を呼びかけます。
(4) 共済組合運動のあらたな発展めざして、12月をめどに事業協同組合の設立し、来年4月より事業開始をめざします。
(5) 非営利・協同研究所「いのちとくらし」との共催で行うフランス医療事情視察(11月18日~25日)に積極的な参加を呼びかけます。

おわりに

 あらたな水俣病は、熊本、鹿児島、新潟3県で認定申請者5300人、保健手帳取得者11,512人、熊本の訴訟原告団1209人に上り、当面は7月3日 に公表された「政府与党の水俣病問題プロジエクトチーム」が出した「救済策」に反対し、患者の全面的な救済策確立にむけて取り組みを強めます。8月末に は、水俣で全国的な現地調査が予定されています。4たび国と企業が敗訴した薬害肝炎裁判、6たび国が敗訴した原爆症集団訴訟に対し、国は不当にも全て控訴 しました。控訴撤回を求め、被害者の完全救済にむけて支援運動を強めましょう。第37回総会で提起したアスベスト問題は、ひきつづき重要な課題として、民 医連らしい視点でとりくみを強めましょう。

「困難はたたかいと連帯、団結の力で乗り越える」
「全国の様々な教訓・経験に学ぶ」
「大きな歴史の転換点の中で、人も組織も大きく育てる、育ち合う」

 ことをキーワードに、前進をめざし、全国各地の豊かな実践を積み上げ、経験、教訓を、持ち寄り、第38回総会・横浜(2008年3月6日~8日)に集いましょう。

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