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2014年7月7日

リアル社会を生きるゲイ職員の性講座(7) 文・杉山貴士 セクシュアリティの基礎知識

 性を考える上で大切なセクシュアリティの基礎知識を整理しましょう。先日、「アメリカ精神医学会による精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)」が出され、「性同一性障害」という名称が「性別違和」へ変更されたばかりです。
 性を考える上では、(1)生物学的性(sex)、(2)社会文化的性(gender)、(3)性自認(sexual identity)、(4)性的指 向(sexual orientation)の4つの視点が不可欠となります。
 (1)は文字通りの♂と♀の生物学的な性差です。「インターセックス(半陰陽)」が存在するように、♂と♀とは厳格に区別できるものではないことがわ かっています。(2)は大雑把にいえば「男らしさ」「女らしさ」などのジェンダーを言いますが、それらは「今、ここ」の話。男性が家事・育児を担い、女性 が狩猟をするという南の島も、文化人類学者によって発見されています。社会文化的性は地域や時代によって性の役割が変わるのです。
 (3)は「自分は男性だ・女性だ」と認識することです。このような心の性と体の性との不一致が「性別違和」となります。(4)は心の性をもとに、異性や 同性など恋愛や性愛の対象とする「方向」を指し示すものです。性的指向は嗜好や志向と誤認されていますが、嗜好や志向は「選んで好き」の意味であるのに対 して、指向は「→」という方向性を示すにすぎません。
 混同されがちなのが(3)「性別違和」と(4)「同性愛」です。例えば、生物学的性が「男性」で性自認が「女性」の人が、性愛や恋愛の対象が「女性」の 場合は? 心の性が「女性」で性的指向は「女性」なので「同性愛」。見た目が男性で女性が好きなのだから「異性愛」では…と思いがちですが、性自認は自分 の心の性だけを定義するもので、性的指向ではありません。
 また留意すべきは、現在「同性愛」は疾患や障害ではないこと、そして「性別違和」はDSM-5に位置づけられた精神疾患であるということです。同性愛が なぜ疾患や障害ではなく、性別違和は精神疾患として位置づけられているのか。これは同性愛の歴史を概観することで理解できます。次回、同性愛の歴史社会学 で簡単に見ていくことにしましょう。


すぎやま・たかし 尼崎医療生活協同組合理事会事務局課長、法人無料低額診療事業事務局担当、社会福祉士。著書に『自分をさがそ。多様なセクシュアリティを生きる』新日本出版社、『「性の学び」と活かし方』日本機関紙出版センターほか

(民医連新聞 第1575号 2014年7月7日)

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