副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2014年8月4日

副作用モニター情報〈420〉 抗結核薬イソニアジド 適切な投与量を

 イソニアジド(INH)は、リファンピシン(RFP)と並んで結核症に対する第一選択薬です。同時に、近年、関節リウマチなどの治療で強力な免疫 抑制作用を持つ生物学的製剤を使用する機会が増え、注意喚起されるようになった潜在性結核感染症(LTBI)でも第一選択薬です。
 INHによる肝機能障害は、INHの代謝物のひとつであるアセチルヒドラジンの用量依存的な蓄積が原因と考えられています。INHの投与量は、添付文書 では体重1kgあたり4~10mgとされており、最大量500mg、2013年3月に発表されたLTBI治療指針では5mg/kgで最大量300mgです。治療に必要な期間は6~9カ月のため、どちらにも「定期的な肝機能検査が必要」と書かれています。
 最近1年間の当モニターに寄せられたINHによる肝機能障害は、RFP併用の3例とLTBIにおけるINH単独投与の3例、計6例の報告事例すべてが、体重を考慮せず最大量の300mgで投与を開始していました。
 肝機能障害の危険は、RFPとの併用では肝代謝酵素P450が誘導された結果、INHの代謝速度が上がり、アセチルヒドラジンの生成量が急激に増えるた め、やむを得ない側面はあります。しかし、INH単独投与では、LTBIの指針通りに5mg/kgで投与が開始されていたら、肝機能障害を防ぐことができ たかもしれません。
 投与量の設定は、およその体重で40kgでは200mg、50kgで250mg、60kgで300mgと細分化することで、肝機能障害の予防を試みてく ださい。INHの主たる代謝経路は酵素P450とN-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)による2通りがありますが、アセチルヒドラジンの代謝は NAT2の経路だけなので、少数ですが、NAT2の活性が低い遺伝子多型のケースを念頭に置き、柔軟に投与量を変更できるようにしたいものです。

*    *

【注意】当事例に限らず、薬品の投与の際は、体重を確認し、過量にならないよう注意が必要です。また、副作用モニター情報報告書には、可能な限り体重の記載をお願いします。LTBIを診断した場合は、保健所に届け出てください。

(民医連新聞 第1577号 2014年8月4日)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ