民医連新聞

2014年8月4日

核廃絶、世界の流れは NPT再検討会議2015に向けて

 八月六日広島に、同月九日長崎に、人類の頭上に初めて核兵器が投下された夏から、六九年目を迎えました。核兵器の廃絶を求める声 は、世界の大きな流れになりつつあります。核兵器や核をめぐる世界の現状とともに、来年四~五月にニューヨークで開かれる「核不拡散条約(NPT)再検討 会議」の重要な意味、そして私たちにできることについて、みていきます。(木下直子記者)

核兵器のいま

 地球上には現在、一万六〇〇〇発以上の核兵器が()。アメリカとロシアで全体の九割を保持。七万発あった冷戦時代からは減りましたが、いまもそれは人類を何度も絶滅させるほどの脅威です。
一方で、国連に参加する国の大多数が「核兵器NO」の立場です。
 「非核兵器地帯」は、核兵器を持つことも外国が配備することも禁止した地域ですが、地図のように南半球を覆い、さらに中央アジアなどにも広がっていま す。戦火の絶えない中東でも、イスラエルを除く二二カ国すべてが、中東の非核兵器・非大量破壊兵器地域化に賛成しています。
 昨年、核兵器廃絶をめざして共同行動している国家グループ「新アジェンダ連合」(ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、南ア フリカ、スウェーデン)が出した「核軍縮の加速」という決議には、一七一カ国が賛成、反対は七カ国でした。世界の意志は明らかに「非核」へと向かっていま す。

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「人類生存のため核廃絶を」

 これまでも「地球上から核をなくそう」という声はありましたが、アメリカをはじめとする核保有国や、「核の傘は必要」とする日本のような同盟国がブレーキになってきました。
 ところがいま、核廃絶に後ろ向きな国々に「核兵器の人道的影響」という考え方が揺さぶりをかけています。「核兵器は存在する限り、意図したかどうかに関 わらず核爆発の危険がある。ひとたび核爆発が起きれば、国家も国際機関も対応不能。人類が絶滅する前に、核兵器を廃絶するしかない」というものです。
 二〇一二年四月に一六カ国政府で発表した「核兵器の人道的影響についての共同声明」に賛同する国は一年半後、四度目の呼びかけで一二五カ国に増加。被爆 国にも関わらず当初拒否していた日本も世論に押され賛同しました。
 昨年九月の第六八回国連総会では、史上初の「核軍縮に関する国連総会ハイレベル会合」が開催。地球上から核兵器をなくす決意が語られ、核兵器禁止条約の交渉を始めようと呼びかけました。

来年のNPT再検討会議

 「そんな流れの中で来年開かれるNPT再検討会議(※)の意義は大きい」と、全日本民医連 の山本淑子事務局次長。来年の会議に向けた第三回準備委員会が今年四月末にあり、山本さんも要請団の一員として渡米し、委員会や国連、各国政府に核廃絶の 具体的な動きを作るよう求めてきました。
 「二〇一〇年の前回会議は、核兵器の非人道性に着目し、廃絶を訴える動きを大きくする契機になりました。今回の要請で面談した国連軍縮担当のアンゲラ・ ケイン上級代表からは『来年も署名をたくさん持ってニューヨークに来て、再検討会議の政府代表に示してほしい』と要望されました。第三回準備委員会に関す る日本のメディア報道では、前進がなかったかのように描かれていますが、現地で感じたのは『核兵器廃絶』に向けた非核保有国の決意と確信であり、核保有国 の孤立と動揺でした。再検討会議では、私たち市民の運動が、核廃絶の実現に積極的に動く国々を後押しする力になるのです」。

仲間への行動提起

 「来年は原爆投下から七〇年の節目でもある。NPT再検討会議には圧倒的な世論として署名を積み上げることが決定的に重要」と、全日本民医連は六月九日に開いた学習決起集会で呼びかけ。次のように行動提起しています。
 ▼核兵器全面禁止のアピール署名三〇〇万筆の大運動を共同組織とともにつくる▼県連や事業所の行動計画を作り、学習を力に創意あふれた活動にとりくむ▼ 再検討会議に二〇一〇年を上回る代表派遣、また自治体にも代表派遣を働きかける。

〈参考〉『民医連医療』8月号
日本原水協「2014年世界大会パンフ」


NPT…米・露・英・仏・中国に限定し核兵器保有を認め た条約で、一九〇カ国が加入。保有国には核軍縮の努力義務、その他の国には核兵器保有や製造を禁じた。九五年に無期限で五年ごとに再検討会議を行うことが 決まった。インド、パキスタン、イスラエルは未加入で、北朝鮮は〇三年に脱退宣言して核保有国に

(民医連新聞 第1577号 2014年8月4日)

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