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2014年10月6日

リアル社会を生きるゲイ職員の性講座(12) 文・杉山貴士 「家族」や「老後」を考える

 前回まで「小難しい話」を続けました。ここからは私の日常生活から考えてみます。
 今、私は仕事と家とで生活が回っています。「当たり前じゃないか」と言われるかもしれません。多くの人は就職して家庭を持って…と、老後もなんとなく想 像できるでしょう。ゲイの若者の場合、多くが具体的な将来像を展望できず、かくいう私も、見える形でゲイの先輩方がいない中で試行錯誤してきました。
 「無縁社会」という言葉が出始めた頃、「明日は我が身」と感じたものです。ゲイのネットワークにもご無沙汰で仕事中心の日々。自分の老後がイメージでき ませんでした。若い頃は、ゲイとして生活者として40歳になる自分が想像ができませんでしたが、とうとうその40歳になりました。
 今は、縁あって相方くんと猫2匹の生活になり、具体的な将来像を考えるようになりました。シングルの時には考えなかったことです。
 老後はどうするか。当面、住む家の検討、相方くんとの関係を公正証書か養子縁組にする、相方が正規雇用となること、です。ネックは、相方と自分との関係 をどう公的に位置づけるかです。異性愛者の場合、結婚や事実婚ができますが、ゲイの場合、公正証書等で関係を証明するか、養子縁組で親子になるしかないの です。現状では、彼とは他人どうしです。
 忘れてはいけないのは、これらの実践には地域や職場等の理解が必須ということ。私の場合、職場に理解があるからこそ、公正証書や養子縁組の具体化を考え ることもできます。「法律で同性どうしの関係を認めればいいじゃないか」との意見もありますが、これは地域や職場の現状を見ていない考え方だと思います。 なぜなら法律が整備されても、性的指向をカミングアウトしていない当事者にはできないことだから。実行できるのは、職場等の理解があるか、もしくは理解が なくても生計が立てられる場合に限られます。今は後者が多いのが残念ですが、民医連なら、これらの実践ができると思っています。
 当事者の勇気も必要ですが、まずは職場の理解が第一。「仕事と(ゲイとしての)活動とのあり方」は私の一番のこだわりです。次回、詳しくお話ししましょう。


すぎやま・たかし 尼崎医療生活協同組合理事会事務局課長、法人無料低額診療事業事務局担当、社会福祉士。著書に『自分をさがそ。多様なセクシュアリティを生きる』新日本出版社、『「性の学び」と活かし方』日本機関紙出版センターほか

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