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2014年10月6日

副作用モニター情報〈424〉 イナビルの多様な副作用

 イナビル吸入用粉末剤20mg(一般名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)は、日本で開発された長時間作用型ノイラミニダーゼ阻害剤です。 同効薬のリレンザ(ザナミビル)が1日2回5日間吸入する必要があるのに対し、本剤は一度の吸入で治療が完結することから、リレンザに代わって使用量が増 えています。
 2013~14年シーズンに民医連の副作用モニターに寄せられたイナビルの副作用報告は、以下の4件です。
症例1) アナフィラキシー(60代男性)
 吸入直後、首をうなだれて突然意識を消失、名前を呼んでも反応なし。背中をたたくと反応し意識が戻ったが、顔面蒼白、冷や汗をみとめ、ろれつも回ってい なかった。血圧90/60、脈拍80、補液投与にて2時間後には血圧120/64、意識も完全に回復した。
症例2) 異常行動(10代女性)
 吸入から約12時間後に異常行動(胸が膨れる感じ、動悸、走り出したい感じ等)が出現。約15分程度でおさまった。
症例3) 幻視・不眠(70代男性)
 吸入から約6時間後、眠ろうとして目をつぶったところパソコンやテレビの画像のようなものが見えて眠れなかった。翌日も前日同様、目をつぶると画像が見えて、朝方まで眠れず。3日目以降症状は出現せず回復した。
症例4) 肝機能異常・水様便・腹部膨満感(20代女性)
 吸入の翌日から、水様便・腹部膨満感が出現、回復まで約1週間を要した。吸入8日後の採血で肝機能異常(AST/ALT44/48)が指摘され、経過観察。約1カ月後に正常値に戻った。

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 いずれの副作用でも添付文書で注意喚起がされており、アナフィラキシーを除くと軽微なものですが、発現の仕方は多様です。治療は単回吸入で終了します が、体内から完全に消失するまでに12~14日かかると推定されるため、吸入後の副作用の発現とその対応に注意が必要です。
 同剤は、日本ではタミフルとの比較試験で非劣性が示され承認されましたが、欧米ではプラセボとの比較試験で有意差が示せず開発が断念された経過がありま す。また、タミフルやリレンザのコクラン共同研究の結果で、インフルエンザ症状の発現期間をわずかに縮めるだけだということにも留意が必要です。

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