憲法・平和

2014年10月20日

戦争反対 いのち守る現場から 全国自治体病院協議会 邊見公雄 会長 憲法9条と国民皆保険は日本が誇るべき実績

 安倍政権の暴走をどうみるか。全国自治体病院協議会会長の邊見公雄さんに聞きました。「私が民医連のような団体からこのテーマで取材を受けたのは、言っていることとやっていることが一貫しているかどうかを見ているから」と、インタビューに応じてくれました。

 日本の政治はおかしいんとちゃいますか? 首相は外交に熱中し、先日はバングラデシュに六 〇〇〇億円のODAを約束した。一方で、医療・介護への新たな財政支援は九〇四億円。「医療と農業は競争力に余地があるからますます削れ」と言う。「消費 税増税は社会保障のため」と言いながら、めちゃくちゃですよ。
 先日、東北地方を回りましたが、オリンピック需要のあおりを受け、被災地では資材も人も不足していると、怒りの声を聞きました。政府が力を入れている東京オリンピックのために、復興が五年は遅れました。
 政治の中心は「生活者のために何をするか」でしょう。「愛国心」を強めたいというなら、愛国心が芽生えるような国づくりが、まず必要ではないでしょうか。

基幹産業は医療と教育

 安倍内閣は「地方創生」も掲げていますね。一番の産業は何でしょう? それは行政です。名だたる大企業以上の大きな力がある。
 なかでも医療と教育は日本の基幹産業です。島国で平らな土地も少なく、石油などの地下資源もない日本が発展できたのは「人こそ資源」と考え、子どもたちの成長と健康を守り、教育を与えてきたからです。
 政府がそのことを重視しない限り本当の「地方創生」はできないと思います。

不戦を誓ったのに

 日本は戦後六九年、一度も戦争をしなかった。これは誇るべき大きな実績です。日本の憲法九条と国民皆保険は、世界文化遺産にすべきだと思います。
 「弱そうなやつは殴ってやろう」と考える人も少しはいるかもしれません。しかし今やそういう時代ではない。今も複数の戦争や内戦が進行中で、世界はなん とかやめさせようと考えているのです。そんなときになぜ、憲法九条で「不戦の誓い」をした日本が「集団的自衛権の行使容認」に踏み出そうとするのか。
 今まで「戦争放棄」を掲げてきたから、世界は安心して日本を見てくれていました。それが突然「集団的自衛権を行使する」と言えば、警戒されて当然です。
 安倍首相は、戦後の民主教育を受けてきたのか? と疑いたくなります。過去の中曽根首相や小泉首相も右翼的思想の持ち主だったけれど、そろばん勘定がで きました。中国という一三億人の市場を失うわけにはいかないから、近隣諸国との関係を極端に悪化させることはしませんでした。ところが安倍首相は違う。た だただ祖父の岸信介(第五六・五七代総理大臣)の理想を実現しようとしているように見えます。演説を聞いていても空疎で実現性がなく、心には響かないので す。

“独裁”ですよ

 「集団的自衛権」を行使すると軍需産業は栄えるかもしれません。しかし、国民にはいいことは一つもありません。生活者には「百害あって一利なし」です。
 しかも、一人の総理大臣、一つの内閣が“解釈の変更”と、閣議決定のみで簡単に変更していいはずがない。それだけのことを安倍内閣はやってしまった。これはもう民主主義の国とは言えません。独裁国家ですよ。
 こうした政権のもと、右翼的な潮流も強まっています。先の大戦の時のように、国民がだまされていっているようで恐ろしいです。

おふくろの戦争

 私の父は軍医で、フィリピンのルソン島で戦死しました。私も旧満州の佳木斯(ジャムス)陸軍病院で生まれて、母と日本に帰ってきました。「父が死んだ場に行かなければ母の戦争は終わらない」と思い、母を現地に連れて行ったこともあります。
 日本は昔フィリピンに迷惑をかけたという思いがありましたから、私も医療支援で訪ねました。フィリピンの田舎は、本当に貧しいんですよ。靴を履いている人はおらず、裸足でした。
 それを見たおふくろが言うんです。「なんでこんな貧しい国を攻めたんかのう? 女性やお年寄り、子どもに優しい国を…。日本は間違ごうたんちゃうか」と。

(丸山聡子記者)


へんみ・きみお 全国自治体病院協議会会長。1968年、京都大学医学部卒。同付属病院、大和高田市立病院、京都逓信病院などを経て、78年に赤穂市民病院外科医長に。87年、同院院長に就任、09年から名誉院長。この間、中央社会保険医療協議会委員などを歴任。

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