介護・福祉

2014年11月3日

第12回 看護介護活動研究交流集会 in青森 指定報告・四演題 地域で輝く 民医連の看護・介護

 看護介護活動研究交流集会の全体会で、四本の指定報告がありました。概要を紹介します。(新井健治記者)

「重症管理を乗り越え生きる意欲を引き出したとりくみについて」
早田理恵さん(鹿児島・国分生協病院、看護師)

 昨年五月に八〇代男性がCO2ナルコーシスで入院。気管切開による人工呼吸器管理でADLが低下した患者は、抑うつ傾向になりました。患者が希望を持て るよう、医師、看護師、リハビリ職員がカンファレンスを重ね、自宅への外出を長期目標に、人工呼吸器を装着しての意思疎通を短期目標に設定しました。
 上肢のリハビリでホワイトボードを使いスムーズに筆談ができるようになり三〇分程度の発声も可能に。また、いったん胃ろうを造設しましたが、言語聴覚士と看護師が摂食機能訓練を行い普通食に戻れました。
 全介助に近い状態から、リハビリでトイレ移乗と歩行器を使った歩行ができるようになりました。ADLの向上で患者の表情は明るくなり、悲観的な言動はなくなりました。長期目標にした自宅への外出も実現しました。

「ライフレビューを取り入れた看取りケアー住み慣れた場所で最期を迎えたい」
塩淵章世さん(香川・老人保健施設虹の里、介護福祉士)

 ライフレビューとは自らの一生を振り返ることで人生の統合をめざす心理療法です。九〇代女性利用者を当施設で看取るにあたり、これを取り入れました。
 昨年四月から、家族と多職種を交えた週一回のカンファレンスで情報を共有。苦痛の軽減、延命的な酸素量の増加や点滴は行わない、食事は可能なかぎり自力で摂る、などのケアプランを立てました。
 利用者は地域の婦人会の会長をされていました。亡くなる五日前に家族が持ってきた婦人会の五〇周年祝賀会のDVDを上映。利用者はともに活動した仲間の 映像を懐かしそうに見ていました。ときおり家族が話しかけ、親子の貴重な思い出になり、同時にライフレビューにもなりました。その人らしい最期とは何か、 職員にできることは何かを学ぶことができました。

「子育て支援策―多職種による保育プロジェクトチームのとりくみ」
望月富士穂さん(山梨・甲府共立診療所、看護師)

 甲府共立病院は二〇一二年に「保育プロジェクトチーム」を立ち上げ、小学六年生までの子どもがいる職員にアンケートを実施。院内保育として要望が強い病児保育と、夏、冬、春休みの学童保育を始めました。
 窓口(総務)、友の会ボランティア(組織課)、学習支援(医局事務)、学生アルバイト(看学生室)、給食(栄養課)と各部署を巻き込んで準備。子どもが 急に発熱しても、病児保育は当日朝の連絡で対応します。離乳食や幼児食は栄養士が提供。学童では大学生による学習支援があり、看学生や友の会員の引率で プールや動物園への外出も行っています。
 「身内に協力者がいないと働けない病院」から「協力者がいなくても働き続けられる病院」へ。子育て支援が職員間の連帯感、病院への愛着も醸成します。看護部門のみならず病院全体の重要な管理課題です。

「地域の病院訪問と就職フェア8年間のとりくみー足立区の実践から」
星野陽子さん(東京・健和会、看護師)

 健和会を中心にした東都保健医療福祉協議会は、二〇〇六年の7対1看護創設時から、民医連外の病院訪問を継続。毎年九月に管理師長、事務長ら二人一組 で、約二週間かけ東京都の東部地域(足立区、葛飾区など)と埼玉県三郷市の三〇~四〇病院を回ります。
 懇談内容は看護師確保の現状と工夫や看護師不足への要望、看護署名の依頼、シンポジウム、学習会へのお誘いなど。訪問を重ねる中で信頼関係も生まれ、 ナースウエーブでは訪問先の病院からメッセージや署名が届きました。
 看護フォーラムやシンポジウムで地域の病院の実態を共有。行政に要望書も提出しています。区との懇談会や医師会主催の看護師就職フェアなど、行政や医師 会の対応が変化しました。法人や協議会内では、看護師不足や経営課題が地域に共通する問題として捉えられるようになりました。

(民医連新聞 第1583号 2014年11月3日)

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