いのちと人権を守る

2014年12月16日

水俣病大検診 97%に症状 “国の線引きは誤り”浮きぼりに

 一一月二三~二四日、不知火(しらぬい)患者会や民医連でつくる実行委員会は熊本・鹿児島両県で水俣病大検診を行い、医師を中心 に全国から民医連職員が駆けつけました。一〇月の問診に続き、今回は診察。受診者の多くは、これまで何の救済策も受けていない人たちです。検診の結果、九 七%の人に水俣病の症状が認められました。あらためて国の救済制度の不十分さが浮き彫りとなりました。「すべての被害者の救済を」―。熊本県民医連の原田 敏郎さんの報告です。

shinbun1586_02 水俣病が公式に確認されてから五八年を経ても、水俣病問題は解決していません。それは、国と熊本県、有機水銀を垂れ流した原因企業であるチッソが被害者とまともに向き合わず、場当たり的な解決策を繰り返し、被害を少なく見せてきたからです。

*   *

 二〇一三年六月二〇日、ノーモア・ミナマタ第二次国賠訴訟が熊本地裁に提訴されました。その後、追加提訴は続き、今年九月には第六陣に。原告総数は六一 〇人にのぼっています。長年の体調不良に苦しみ、原告を決意する人は増え続けています。今回の大検診は、そうした人たちが対象です。

447人が受診

shinbun1586_03 熊本県の水俣市と天草地域の二会場、鹿児島県の高尾野地域の計四カ所で行い、二日間で四四七人が受診しました。スタッフとして、北海道から沖縄まで全国の民医連などから医師一二〇人を含む四四七人が参加しました。
 国と県は、半世紀以上にわたり環境調査をすることもなく、水俣病被害者救済の対象地域や対象年齢に勝手に線引きをし、被害者を切り捨ててきました。今回 の受診者の中には、対象地域外の人や一二年七月に締め切られた水俣病被害者救済法(水俣病被害者の救済と水俣病問題の解決に関する特別措置法=特措法)に 基づく救済を申請したものの「非該当」とされた人も多くいました。しかし、検診の結果、受診者の九七%に水俣病の症状が確認されました。

症状の重い人が今も

 この結果は、行政が決めた救済対象地域の外にも、多数の被害者が潜在していることを裏付けるものです。また、一二年に救済申請を打ち切った特措法の判定結果について、検証する必要性も示しています。
 受診者は「対象地域外でも、救済された人はいる。みんな同じものを食べて生活してきた。それなのに“非該当”は、納得できない」と検診に来た思いを語り ました。また、参加したスタッフからは「(公式確認から)半世紀以上もたって、なぜこんなに症状がひどい人が残されているのか」と怒りのこもった感想も出 ていました。

増える原告

 大検診は終わったばかりですが、四〇〇人を超える人が原告になることを申し出ており、今も 増え続けています。ノーモア・ミナマタ第一次訴訟と同じく、全国でも被害者救済を求め裁判に立ち上がる動きが続いています。今年八月には東京で一八人の原 告が、同九月には大阪でも一九人の原告が提訴し、運動は全国規模で広がっています。
 今回の裁判では、不知火海沿岸部だけでなく「行商ルート」と呼ばれる山間部の被害者救済も大きな課題です。汚染された魚を食べていたことの証明が難し く、差別や偏見を恐れ、議員や公務員だからと、立場上、手を挙げられない被害者もいます。
 私たちは「すべての被害者の救済」をめざしています。その実現のために、加害者である国・熊本県の介入が及ばない救済ルール(司法救済制度)をつくる必 要があります。救済申請の期限を設けない、地域や年齢で線引きをしないなど、行政の切り捨ての論理を許さない解決策が必要です。被害者がいる限り、私たち のたたかいは続きます。
 また、これは水俣病だけの問題ではありません。水俣病問題で国や企業本位の解決を許せば、それはそのまま福島の原発事故にも使われかねないと、危機感を 持っています。そのためにも、「すべての被害者」を救済できる解決が必要なのです。

(民医連新聞 第1586号 2014年12月16日)

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