いつでも元気

2014年11月1日

元気スペシャル/無差別・平等のまちづくりを/第12回共同組織活動交流集会 in 近畿

 九月七~八日、「憲法・平和・いのち輝かそう~安心して住み続けられるまちづくり~」をスローガンに、第一二回全日本民医連共同 組織活動交流集会が兵庫県神戸市で開催されました。全国から共同組織や民医連職員、医学生など三一九一人が集まり、民医連史上最大の室内集会となり、活気 にあふれました。

史上最大規模の集会

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過去最高となる3191人の参加者が会場を埋め尽くす

 一日目は全体会。共同組織全国連絡会代表委員の小森佳子さんによる開会宣言の後、現地実行委員 長の漁島國弘さんがあいさつ。今回の集会が史上最大の参加者数となったのは「(前回の活動交流集会からの)二年間で、共同組織の多彩な活動が展開され、地 域住民から信頼されている証ではないか」と話し、会場から賛同の大きな拍手がわき起こりました。八月に起こった広島の豪雨災害にも触れ、義捐金の寄付を呼 びかけました。

今、共同組織が輝くとき

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義捐金は48万5500円があつまりました(写真・編集部)

 基調報告は、共同組織全国連絡会代表委員の白鳥操さんと岸本美保さん。弱者切り捨ての政策では なく、無差別・平等を根幹に据えた共同組織のとりくみを地域に広げていくことを確認。次回の集会(二〇一六年)までに四〇〇万の共同組織、一〇万部の『元 気』普及を目指すことも提起されました。
 その後、宇都宮健児氏による記念講演(大要)、「人権としての医療・介護保障めざす民医連の提言」を紹介する全日本民医連・藤末衛会長の講演など盛りだくさん。リレートークでは五道府県から発言がありました。
 全体会の最後には次回の開催地・石川県の仲間たちが舞台へ。「石川は人も優しいし、お酒がうまいげんぞ~(お酒がおいしいんだぞ)」「ええがにしとくさ けぇ、みんなで来るげんよ。待っとるさね(よくするから、みんなで来なさいよ。待ってるからね)」など方言で石川の魅力と、次回集会への意気込みを語りま した。
 二日目は分科会。青空健康チェック、居場所・たまり場づくり、路上生活者支援活動、事業所のない地域での新支部設立など、共同組織活動交流集会史上最高 の三八一演題が発表され、地域で起きていることや、共同組織として何ができるのかなど、活発に交流しました。
 政府が唱える「自己責任」ではなく、安心して住み続けられるまちづくりのためにつながることの大切さを再確認した二日間となりました。

文・寺田希望記者

過去、現在、そして未来へ

5道府県のリレートーク(大要)をご紹介します

未来へつなぐ歴史

山梨健康友の会事務局長 長田正弘さん

 長田さんは、「民医連の歴史から学ぶ立場で話したい」と切り出し、二三〇億円の負債を抱えて一九八三年に倒産した山梨勤医協の経験を語りました。
 倒産の最大の原因は、経営を専務理事が一人でおこなうなど「民医連綱領からの逸脱だった」と長田さん。別会社をつくってボーリング場やスキー場などに手 を出し融資がこげついたためでしたが、実態は隠されていました。倒産後、暴力団や県・警察による再建妨害にも遭いました。
 しかし患者会や互助会(今の友の会)は「病院をつぶすな」と立ち上がり、集会を開き、署名を集めて、破産を勧告した県を動かしました。「この力がなかっ たら、奇跡と言われた再建はなしえなかった」と長田さん。山梨勤医協は全国支援も受け、一九九七年には債務を完済、再建を果たしました。
 長田さんはこの経験が二〇一〇年改訂の民医連綱領に「民主的運営」「営利を目的としない」「共同組織」などの文言を反映させる力になったと指摘。「共同 組織は職員と力を合わせ、民医連綱領の実現をめざす組織。山梨の倒産を長く忘れず、がんばりましょう」と訴えました。

「病院」から「地域」の友の会へ

大阪・健康友の会みみはら副会長 江戸道子さん

 耳原総合病院と友の会の歩みを話してくれた江戸さん。
一九五〇年に今の耳原総合病院の前身となる耳原実費診療所が、一九八四年には友の会が設立されました。当時の友の会は「ほとんど職員任せ。お手伝いをするお客さんくらいの気持ちでした」と江戸さんは言います。
 そんな江戸さんを同仁会の前倒産(一九九八年)と耳原総合病院のセラチア菌院内感染事件(二〇〇〇年)が襲います。前倒産では「しばらくなにかを考える ことができなくなってしまった」ほどの衝撃だったと江戸さん。全国の支援も受けて、持ちこたえられたと思った矢先、セラチア菌の院内感染によって患者さん が亡くなる事件が起きました。病院を攻撃する報道も続きましたが、真相究明・再発防止にとりくむ病院側の説明を聞いた江戸さんは「正しく知らせることが大 事」と、地域を回りました。
 この二つの経験から「病院のお手伝いではなく、独立したパートナーになるんだと考え、名称も『耳原友の会』から『健康友の会みみはら』に改めました」。 江戸さんは「会員の質の向上を進める活動をしていかなければ」と抱負を語りました。

今こそ、最大級の支援を

沖縄医療生協組織部副部長 知念毅さん

 知念さんは、名護市辺野古への新基地建設反対のたたかいを報告。
昨年末、県知事が新基地建設のための辺野古埋め立てを承認した後も県民の反対の声はおさまらず、名護市長選挙(今年一月)では、「移設反対」を掲げる稲嶺 進市長が再選を果たしたことや、八月末には辺野古の米海兵隊基地キャンプシュワブのゲート前に三六〇〇人が集まり、抗議の声をあげたことなどを紹介しまし た。
 知念さんは「一一月には辺野古埋め立てをストップさせることのできる、沖縄県知事選挙があります。全国の皆さん、最大級のご支援をお願いします」と語りました。

助けあいの運動

北海道・道北勤医協友の会連合会 務局長 上ヶ嶋哲雄さん

 道北勤医協は二〇〇八年に一条通病院、二〇〇九年に一条通クリニックで無料・低額診療事業を開始。しかし同事業は病院・診療所が対象で院外薬局は対象外のため、「薬代が払えず間引きしている」などの実態があったと上ヶ嶋さんは言います。
 道北勤医協友の会連合会はこの薬代助成のため、募金をもとにした「たすけあい基金」を二〇〇九年に設立。六年間で七〇〇万円を超えるお金を集め、患者さんを支えてきました。
 同時に、院外薬局が対象にならない制度の矛盾を解決するため、同友の会では薬代の助成を求める運動を展開。昨年は旭川市、今年九月には隣町の東神楽町で 無料・低額診療事業適用患者への薬代助成が実現したことを報告した上ヶ嶋さんは、「薬代の公費助成を全国に広げたい」と意気込みを語りました。

ロマンと展望持って

石川・南加賀健康友の会事務局長 東洋子さん

 今年、民医連の事業所がない加賀市に新しい支部が誕生しました。全行政区に支部を作ろうという 目標のもと、準備を進めました。健康チェックを開くと、地域の方は「無料でしてくれるのか」と驚きます。お花見にも三三人が参加し、八人はその場で友の会 に入会。六月に四三人の友の会員を迎えての結成総会となりました。
 さらに今後は「石川県健康友の会連合会」結成構想も。県内の行政区、中学校区に支部を新設・再編し、「自分たちが住んでいる地域で、一人ひとりとつなが る友の会を作りたい」「私たちがめざしている『安心して住み続けられるまちづくり』はロマンと展望にあふれたものでなければ」と東さんは夢を語ってくれま した。

特別分科会と「動く分科会」も

 テーマ別分科会のほか、特別分科会や「動く分科会」も開かれました。 特別分科会は「震災、原 発事故、大規模災害の経験から人間らしいまちづくりを考える」と題して開催。伊東達也さん(福島・浜通り医療生協理事長、原発問題住民運動全国連絡セン ター筆頭代表委員)、岩田伸彦さん(阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議事務局長)、中川慶子さん(NPO法人新エネルギーをすすめる宝塚の会)の三 人をシンポジストにまねき、「今あらためて、どこに住んでいても安心して暮らせるまちづくりを、どうすすめるか」について考えあいました。
 伊東さんは「今年三月、福島県内五九自治体が、県内全一〇基の原発廃炉を求める決議をあげた。大惨事を経て“福島を最初に原発をなくす県にしよう”と決 意をかためている。原発をなくして、日本一の自然再生エネルギー県にすることで、今後日本のすすむべき道を全国に発信できると考える。県民とともに必ず実 現したい」と述べました。 
 「動く分科会」は、阪神・淡路大震災の被災地見学と、非核「神戸方式」を考える港めぐり。一九七三年に革新市政が誕生するなか「核兵器積載艦艇の神戸港 入港拒否に関する決議」が採択され、入港する艦船はすべて「核兵器を載せていない」ことの証明書を提出させる今の非核「神戸方式」が実施されたことを学び ました。また神戸港では自衛隊の潜水艦が造船されているなど、すでに軍事的に利用されている側面も学びました。

参加者より

大阪・耳原総合病院 大森直美さん(研修医)

 全国から3000人以上が集まる会場に、圧倒されました。私が参加した「地域まるごと健康づくり」の分科会では、たくさんの魅力的なとりくみがされてお り、すり足による機能低下・バランス異常を防ぐために開発された足踏みゲーム、尿塩分量を測定してのコンテスト開催などのとりくみが印象的でした。地域の 特性を生かし、「最後まで元気に、その土地で暮らしたい」という強い思いも伝わるとともに、私たちの未来にもヒントになるようなことばかりでした。
 全国の民医連で働くみなさん・共同組織のみなさんと交流できたことは、本当にいい経験になりました。この経験を、今後働くうえで生かしていけたらと考えています。

大阪・耳原総合病院 小滝和也さん(研修医)

 集会に参加して、地域の友の会の方々の活動について知ることができ、「医師として地域に還元できることは何だろう」と考えるきっかけとなった2日間でし た。全体会のリレートークでは全国の民医連の絆の深さを感じ、分科会は興味深い演題がたくさんあり、どこに参加しようか迷うほどでした。夕食交流会では楽 しい余興もあり、盛り上がりました。
 研修をするなかで日々業務におわれていますが、「地域の健康増進のためには、病院の外にでて、共同組織の方から話を聞くことが大切だ」と感じました。これからは病院の外でも活躍できるよう、がんばりたいです。

北海道・札幌西・手稲健康友の会 横山博子さん

 「私たちの力は微力だけれど無力ではない」との宇都宮さんの言葉を聞き、全国の400万近い共同組織がおなじ思いで運動の輪をひろげれば、“まちづくり”と“世直し”を同時にすすめられると確信しました。

「憲法を守るたたかいは、これから」

宇都宮健児さん記念講演より

 「全国からの力強い、心温まる応援に感謝し、お礼申し上げます」。こう言っ て、今年二月の東京都知事選挙への支援に感謝を述べた宇都宮健児さんは、「憲法を守り、生かそう! ~安倍政権の暴走をストップさせ、憲法改悪を許さない ために」と題して記念講演。安倍政権の暴走に対し、国民一人ひとりがたたかいでつながることの重要性を語りました。大要を紹介します。

genki277_16  国民のいのちやくらし、平和を守るには、憲法九条と二五条が基本になります。これを破壊しようとしているのが安倍政権です。原発の再稼働や輸出、社会保障 制度の改悪、消費税増税、雇用破壊、TPPへの参加表明、国家戦略特区構想や教育をめぐる動きなど、安倍さんは何一ついいことをしていません。
 いま出されている自民党の改憲草案は(憲法が国家を縛るという)立憲主義を放棄し、「国民主権」「基本的人権の尊重」「恒久平和」という憲法の三つの原 則を変える、たいへん危険な内容です。集団的自衛権の行使容認についても、総理大臣とたった一八人の大臣で閣議決定しました。

暴走をとめるには

こういう安倍政権の暴走をどうやってストップさせるか。それは、「憲法を守る議員を議会に増やす」ことを基本に据えた日常的な活動だと考えます。無関心な 人にどう関心をもってもらうか。安倍さんが戦争に行くわけではない、若い人が行くのです。その若い人たちに、まず関心をもってもらうことが重要です。たた かいはこれからです。
 基本的人権は、(日本に)まだまだ定着しているとは言えません。私は、学校で憲法二五条の「生存権」を教えるときは生活保護の申請方法を、二八条「勤労 者の団結権」を教えるときは労働組合のつくり方や団体交渉のやり方を、二一条「集会・結社・表現の自由、通信の秘密」を教えるときはデモのやり方やビラの まき方、集会のやり方を教えるべきだと思っています。「今の憲法はよい憲法だ」と飾っているだけでは役に立たないのです。権利を実践する方法を教育するこ とも必要だと思います。

平和憲法を次世代に

 運動の格言として、「同質の集団の集まりは『和』にしかならないが、異質の集団の集まりは『積』になる。かけ算になって広がる」という格言があります。
 私たち一人ひとりは、微力だけれど無力ではありません。平和憲法を次の世代にのこすのは、大人の大きな責任です。私も微力の一人として、みなさんといっ しょに平和憲法を守り、いのちやくらしが守られる社会をつくるためにがんばっていきたいと思います。

(写真・豆塚猛)

いつでも元気 2014.11 No.277

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