介護・福祉

2014年10月27日

【声明2014.10.21】財務省「介護報酬6%引き下げ」提言の即時撤回を求める

2014年10月21日
全日本民主医療機関連合会
会 長  藤末 衛

 10月8日、財務省・財政制度審議会は、介護報酬2015年改定に対して「6%引き下げ」を提言した。介護事業所の事業継続を困難にし、地域の介護崩壊に直結するものであり、断じて容認できない。

 同審議会が「6%引き下げ」の論拠としているのは、厚労省が発表した「平成26年度介護事業経営実態調査」の結果である。それによれば介護サービス全体 の平均収支差率が8%程度と集計されており、一般の中小企業の水準(+2~3%)を大幅に上回ることから、「少なくても中小企業並みの収支差となる▲6% 程度の適正化が必要」と主張している。

 問題の第1は、平均収支差率8%といっても、あくまでも「平均値」にすぎず、利益をほとんど出せない事業所やマイナスになっている事業所も当然ふくまれている点である。平均値のみを根拠にした報酬の画一的な引き下げは、間違いなくそうした事業所をつぶすことになる。

 第2に、引き下げ幅(6%)の根拠として中小企業の経営数値を持ち出している点である。介護保険法に基づいて運営され、事業内容に公共性が求められる介護事業所と、中小企業一般を比較して論じることはそもそも適切ではない。

 第3に、財務省は、引き下げの一方で「処遇改善加算の拡充」を提言しているが、そもそも現状においても対象職種の限定や、利用料負担に直結するなどの問 題点が指摘されている。全体の引き下げが前提とされる中では、仮に「拡充」とはいっても、こうした問題が放置されたまま、算定要件の厳格化などにより、む しろ間口が狭められることにもなりかねない。

 第4に、改定の検討材料とされる「介護事業経営実態調査」そのものについてもふれておかなくてはならない。サービス事業別の有効回答率が4~5割台にと どまっており、小規模法人など厳しい困難を抱える事業所が提出できず、その実態が反映されていない可能性がある。また、法人形態、事業規模、開設後の期間 などによって同一のサービス事業でも実態は大きく異なる。この調査が、事業所の経営実態を全面的に評価する上でそもそも限界をもっていることを併せて指摘 しておきたい。

 介護現場の厳しさは、年々増大している。とりわけ、地域に根ざし、地域介護の重要な一翼を担っている小規模事業所の苦戦が際立っている。人手不足は慢性 化し、深刻化している。介護職員の賃金は全産業平均に比べて月9万円も低く、離職率は高い。介護福祉士養成校では定員割れが続いており、志望しない大きな 理由として「給与が低く生活できない」ことが挙げられている。
 仮に、「6%引き下げ」が強行されれば、地域の介護は崩壊し、介護保険制度のそのものが破綻しかねない。

 財務省・財政制度審議会が提言した「介護報酬6%引き下げ」の撤回を強く求める。介護現場の現状をふまえ、介護の質の向上、安定的な事業経営、抜本的な処遇改善を保障する、介護報酬の「底上げ」・改善を重ねて要請する。

(PDF版)

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