医療・看護

2015年1月5日

開業医さんたちつなぐ在宅医療 高知 “じきいくネット”

 在宅で暮らす患者さんをささえ、地域医療を守る―。高知では、民医連の病院・診療所が地域の開業医さんたちと連携して、機能強化 型の在宅療養支援グループ「じきいくネット」を結成しました。「毎月のカンファレンスが楽しみ」の言葉に誘われ、現地を訪ねました。「いま、高知が熱いぜ よ!」。

(丸山聡子記者)

 毎月第三水曜日の午後七時半。高知生協病院で「じきいくネット」の定例カンファが開かれま す。この日は、生協病院に入院中の三人の患者について。いずれも「じきいくネット」メンバーからの紹介患者です。紹介元の医師と情報交換もしながら、治療 や退院の方針について相談します。

「すぐ行きます」

 「じきいくネット」は、七つの診療所と一つの在宅支援病院でつくる、機能強化型の在宅療養支援診療所のグループです。高知医療生協から旭・潮江の両診療所、在宅支援病院として高知生協病院(一一四床)が参加しています。
 きっかけは、二〇一一年の診療報酬改定で、複数の医療機関が連携して“機能強化型”の在宅療養支援のグループがつくれるようになったこと。旭診療所の原 田健所長は「高知医療生協の市内二つの診療所(旭、潮江)では、グループの要件の“医師三人”を満たすことができない。これを機に、以前から連携を考えて いた地域の開業医の先生方と一緒にグループをつくりたいと考えました」と振り返ります。既に連携のあった、みなみの風診療所の今井稔也所長と相談。在宅医 療を行っていた近隣の開業医の先生にも連携を申し入れました。
 「『病床あり』のグループに」との要望もあり、高知生協病院が在宅療養支援病院の認定を受けて参加。グループ名の「じきいく」は「すぐにお宅まで行きますよ」の意味です。

拠点病院の役割

 グループに入っている事業所は、内科のほかに外科、循環器科、呼吸器科、消化器科、小児 科、リハビリテーション科、糖尿病と多彩です。在宅緩和ケアを積極的に行っている事業所もあります。メンバーの医師らは「医療情報や技術、診療報酬のこと など情報交換もできるし、刺激になる」と口をそろえます。
 高知生協病院は「じきいくネットの事業所からの入院の紹介は断らない」とスタッフで意思統一。法人外からの入院患者の割合は、一一年度の三・五%から一 三年度には一一・九%に増えました。藤井クリニックの藤井貴章副院長は「患者さんが急変した時、無条件で受け入れてくれる生協病院の“バックベッド”は心 強い存在」と言います。
 また、グループに参加している別の医師は「在宅支援を診療所がやり、そのバックアップを病院ベッドが受けるという仕組みがあって、在宅にとっての急性期 の患者さんが、いったんは入院できる。そして適切な治療をして、またもとの在宅に帰れる、という関係ができていることが重要なのだと思います」と、語りま す。「患者さんもずっと入院していたいわけではなく、適切に治療して帰れるのですから」。

*    *

 課題も。診療報酬改定で在支診の要件が変更され(看取り件数三人以上)、継続が困難になったり、施設利用者への往診の診療報酬が四分の一に引き下げられ、経営の厳しさを抱えていたり…。
 「同じように診療するのに四分の一では、患者さんの命に差をつけられているようで納得しがたい」「家族の介護の担い手が少なくなってい る。施設が必要だが、特養は増設計画がなく、民間の施設は高くて年金では入れないという人も多い」との懸念が語られています。
 原田医師は「訪問看護ステーションや介護の事業所など、多彩な職種の人たちとも連携していきたい」と話しています。

在宅患者さんの声
「ネットワーク、広がって」

 旭診療所は2007年に在宅療養支援診療所となりました。現在、在宅患者は70人余り。
 西尾律子さんは、100歳になる母の丑恵(うしえ)さんを自宅で介護しています。丑恵さんは要介護5。胃ろうで在宅酸素も使用しています。「それでも自 宅でみられるのは、不安があればいつでも原田先生に電話で相談したり、来てもらえるから」と律子さん。すぐに生協病院に入院できるのも安心材料です。「自 宅で暮らす高齢者はもっと増えるはず。患者や家族をささえてくれる地域のネットワークが広がってほしい」と話していました。

(民医連新聞 第1587号 2015年1月5日)

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