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2015年6月16日

「改悪」現場から問う 70~74歳の2割負担化 医療必要度上がり収入減る世代の受診抑制狙う

 社会保障改悪の影響を現場から考える連載。今回は、昨年四月に七〇~七四歳の患者の窓口負担割合がそれまでの一割から二割に引き上げられた問題について。いま、財務省は「七五歳以上も二割負担にすべき」と、さらなる負担増まで示しています。

 七〇~七四歳の窓口負担が一割から二割に引き上げられたのは、一昨年のプログラム法による措置でした。昨年四月以降に七〇歳を迎える人から段階的に実施、今年度は七〇歳と七一歳が二割負担です。「七〇歳で一割負担だと思ったら、七五までおあずけか」と漏らす患者さんもいます。
 しかし、状況はおあずけどころではありません。財務省が今月提示した今後の社会保障費圧縮策に「七五歳以上患者の二割負担化」が入りました。実施を目指すのは二〇一九年度、二割負担にされた人たちが七五歳になる年です。

□負担軽減なぜ必要か

 七〇~七四歳の二割負担は後期高齢者医療制度の開始時に導入されようとしていました。ところが、多くの批判と世代の実態を考慮し、実施は猶予されたのです。
 七〇~七四歳は、六五~六九歳世代と比べて受療率が高く、医療の必要度が増す世代です。一方、平均年収は、六五~六九歳の二三六万円に対し、三八万円マイナスの一九八万円(国民生活基礎調査 平成二二年)。医療費負担が増えるのに、収入は減るという特徴があるのです。
 「無料低額診療事業(経済的困難な患者さんに窓口負担を減免する=無低診)」を行う民医連事業所数カ所の利用者内訳を見ても、七〇代の利用が最も多く、そうした特徴が表れています。

□受診抑制→悪化

 必要な受診を控える「受診抑制」が懸念されます。「七〇~七四歳が二割負担になると、この世代の負担額は突出する」と、日本医師会幹部も指摘(日本弁護士連合会「経済的理由による受診抑制シンポジウム」より=図1)。所得の再分配を年齢別にみても、六〇歳以降で大きく下がり、中でも七〇~七四歳が最小です。
 また同会の調査では、負担割合が重くなるほど受診を控えたことがある人が増え、「その結果悪化した」との回答も増加。一割負担の層は三・四%ですが二割負担では七・一%と二倍に(図2)。

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 政府は、七〇~七四歳の二割負担化が完了する二〇一九年度時点で、二六〇〇億円の予算圧縮になり、患者の負担増は一九〇〇億円になると推計。加えて「二割負担で受診行動が変化する」ことで医療費そのもので二一〇〇億円の縮減を見込んでいます。社会的弱者である高齢者への負担増のみならず、受診抑制まで期待する政府とは、誰のために存在するのでしょうか。(木下直子記者)

(民医連新聞 第1598号 2015年6月15日)

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