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2015年7月7日

「改悪」現場から問う 要支援者の介護保険外し 「総合事業」移行で利用者は負担増、事業者は収入減

 社会保障改悪の影響を現場から考える連載。今回は、要支援者の介護保険外しの問題です。全国に約一七〇万人いる要支援者の訪問介護、通所介護を介護保険の給付から外し、自治体の「総合事業」に移行させるというものです。

 厚労省は、総合事業への移行期限を二〇一七年四月までと設定。いつ移行するかは自治体の判断です。しかし、初年度の今年四月から移行したのは一一四自治体で、全体のわずか七・二%です。
 総合事業に移行すると、要支援者は、現行サービスとボランティアなどによる生活支援を組み合わせて利用することになります。
 厚労省は、移行後のサービス単価を現行の介護報酬より低く設定するよう自治体に求めています。単価を現行の半分近くまで引き下げた自治体も。移行後、サービスを請け負うのはほとんどがそれまでサービスを提供していた事業者になると予想されますが、現場から「単価の安い総合事業の利用者を新規で受け入れるのは経営上厳しい」との声が出ています。
 介護報酬が四・四八%も引き下げられ、ただでさえ小規模事業所の閉鎖・撤退が相次いでいます。どの自治体も、総合事業の受け皿確保はすすんでいません。

介護が必要な人を締め出す

1599_01 介護を必要とする人が要介護認定すら受けられず、介護サービスを利用できない危険もあります。
 総合事業では、自治体窓口で介護の相談に来た高齢者を「要介護認定を受けるか」「総合事業のみを利用するか」に振り分け、後者の場合は要介護認定を省略し、「基本チェックリスト」で確認するだけで良いことになっているのです。要介護認定の場合、専門職が七四項目にわたって調査し、主治医の意見書も必要です。一方、「基本チェックリスト」は二五項目で、チェックの実施者は非専門職でも可能です。
 千葉県社会保障推進協議会では、総合事業を開始した県内の四つの自治体と懇談。「総合事業に回す場合も、独自に作ったシートを利用し、主治医から聞き取りもする。チェックリストのみで判断せず、必ず家庭訪問をしている」(銚子市)という自治体がある一方で、家庭訪問などの対応を明言しない自治体もありました。
 同協議会事務局次長の関智子さんは、「ある地域包括支援センターの事務職員は、『非専門職の私たちがチェックリストを使い、高齢者が介護保険サービスを使えるか否かが決まる。とても恐ろしい』と話していた」と言います。

利用料は3倍に

 総合事業は事業者には収入源になる一方、利用者には負担増に。ある自治体は、ボランティアによる生活援助の利用料を一回五〇〇円(三〇分以内)と設定。週一回、訪問介護を利用した場合、介護保険サービスの利用料は月一二〇〇円程度ですが、総合事業で一回一時間、月四回利用すると四〇〇〇円に跳ね上がります。
 利用者にも事業所にも不利益となる総合事業は見直すしかありません。(丸山聡子記者)

(民医連新聞 第1599号 2015年7月6日)

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