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2015年8月4日

マイナンバー制度、何が問題? 国民管理し社会保障抑制にも 自治労連 國貞亮一さんに聞く

 今年一〇月からマイナンバー制度(社会保障・税番号制度)が始まります。年金情報流出問題に伴い、制度の危険性も指摘されています。問題点や本当の狙いは? 日本自治体労働組合総連合憲法政策局・國貞亮一中央執行委員に聞きました。(土屋結記者)

 マイナンバー制度は、国が国民一人一人に唯一無二の一二桁の番号を付け、個人のさまざまな情報をヒモ付けして管理する制度です。今年一〇月から国民に番号通知され、来年一月から運用開始です。社会保障、税、災害対策の三分野で利用が始まり、年金や雇用保険、生活保護、児童手当などの手続きや、税の申告で番号記載が求められます。
 法人などにも一三桁の番号が付けられ、名称、所在地、法人番号が公表されます。また、非正規を含めた全ての従業員、その家族の番号を源泉徴収票などに記載するようになります。

■3つの大きな問題点

 まず情報漏えいの危険性と対応の問題。個人番号は行政機関のみならず、民間でも個人でも扱います。
 罰則を設けても、故意、事故を問わず情報漏えいは防げません。さらに、利用・普及には積極的ですが、情報流出やシステムトラブルなどへの対応は周知されていません。年金情報流出での詐欺被害者への補償のあいまいさを見ても、責任や保証など不明な点が多くあります。
 なりすましなど本人確認の問題も。個人番号カードは顔写真付きですが、それだけでは防ぎきれません。
 個人番号の利用制限とプライバシーにも問題が。法律の正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」。情報の利用範囲が「行政」であるようにみえますが、実際は民間にも利用拡大していく可能性が高い。
 また個人番号の利用を本人の意思で停止することは想定されていません。そもそも行政機関が持つ個人情報の多くは、目的にあわせてほとんどが強制的(義務化)に収集されています。政省令などで定められると、目的外利用でも拒否できません。国家による情報管理強化、民間のマーケティングなどへの利用が危惧されます。

■海外では問題頻発

 海外でも国民に番号を付けている国はありますが、日本で採用するのは官民のあらゆる分野で番号を利用する「フラットモデル」。これは一番危険だと言われ、導入している国でも問題が頻発しています。アメリカで導入されている社会保障番号は官民共通で利用され、利便性とは裏腹に二〇〇六~〇八年でなりすまし犯罪が一一七〇万件、被害額は一七三億ドルにもおよび、日本も同様の状態が懸念されます。
 イギリスでは一度導入した後、国民の人権を侵害する恐れや膨大な財政負担を理由に廃止されました。

■制度の本当の狙い

 国は「年金支給額の誤りを防げる」「低所得者への税額控除に使える」などとマイナンバーがきめ細かい制度活用につながると宣伝しますが、それはマイナンバーがなくても可能です。
 真の狙いは「公正な給付と負担の確保」です。国民の所得や資産を把握して税や社会保険料を確実に徴収し、過剰で不正な給付を受けていないかチェックするというもの。現に法案を閣議決定した当時の古川元久国家戦略相は「本当に必要な人に給付を行う一方、そうでない人には遠慮してもらう。そのためのインフラ」と、マイナンバーを社会保障の「選別」の手段にすると言明しています。
 個人番号と結びつける情報はそもそも「国や地方自治体の業務に関わるもの」に限定し、税・社会保障分野以外での使用は禁じています。しかし、省令で拡大は可能。今国会で提出された制度改定案には、一七年度から預金口座にマイナンバーを関連づけることも盛り込まれました。
 また、健康診断や予防接種の医療情報の収集も。将来、カルテやレセプトと結びつけ、例えば、健診でメタボを指摘されたのに栄養指導を受けない人には、ペナルティーで保険給付を制限するなどもありえます。

*    *

 制度が導入されれば、私たち自治体労働者は国民の権利を制限し監視する業務を担わされます。自治体窓口の縮小も狙われます。国民主権にも反します。
 憲法二五条が命じている社会保障の増進義務を果たさせ、自治体労働者が基本的人権を守る業務に専念するために、自治労連は制度廃止を求めています。


個人番号通知カードが届いたら―

 簡易書留で「個人番号カード」申請書が届きます。多くの危険性を含むこのカードは作らないことをおすすめします。

(民医連新聞 第1601号 2015年8月3日)

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