MIN-IRENトピックス

2015年8月31日

特集2 健康食品にご用心 効果が感じられないときは中止を

安全な利用のために気をつけること

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藤竿伊知郎 東京・外苑企画商事(薬剤師)

 「疲れがとれない」「食事で栄養が十分とれない」「体の節々が痛む」といったとき、「病院にかからなくて良いように」とサプリメントなどの健康食品を利用する人は少なくありません。
 いま、第2次「健康食品」ブームが始まっています。あふれる情報とのつきあい方を考えてみましょう。

市場は1兆8000億

 テレビなどのコマーシャルでは、「飲んでよかった」「もう手放せません」などの売り文句とともに、「無料」や「今なら格安」などの宣伝があふれています。
 2000年代前半、「コエンザイムQ10」(老化の進行を抑制し、免疫力を高める物質と言われる)などの商品で売り上げが急上昇。健康食品の第1次ブームがおこりました。その後、ダイエット用健康食品「天天素」事件、「アガリクス効果本」薬事法違反、テレビ番組による納豆データねつ造事件などにより、ブームは一段落しました。
 そして今また、個人の体験談やイメージ宣伝などをもとに、健康食品の販売額は上昇しています。さらに、「機能性表示食品」制度が導入され、市場拡大に勢いをつけようとしています(図1)。健康食品の市場は、調査会社の推定で1兆8000億円、別の調査によると4割が通信販売で流通しています。

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規制緩和がつくりだすブーム

 1990年代後半、アメリカの要請に基づく規制緩和により、これまで日本では販売できなかった錠剤・カプセルといった形の「サプリメント」が販売できるようになりました。
 続いて2001年、厚生省(現・厚労省)医薬局長が「効能効果をうたわなければ医薬品と同じ成分を食品に加えても良い」と通知したことで、グルコサミンやコエンザイムQ10などを含む製品の販売が可能になりました。
 業者の宣伝にのせられた新聞記事も増え、どんどん売り上げを伸ばしていったのです。
 現在、インターネットで健康食品を検索すると、次のような素材が検索の上位となっています。
▼青汁
▼ミネラル
▼マカ
▼ショウガ
▼酵素
 新聞記事では、次のようなキーワードがよくとりあげられています(図2・3)。
▼ウコン
▼コラーゲン
▼乳酸菌
▼青汁
▼イソフラボン
 食品が効能・効果をうたうことは、医薬品医療機器等法(旧・薬事法)に基づき「無承認無許可医薬品」として禁止されていますが、健康増進法に基づいて機能表示が認められたトクホ(特定保健用食品)と栄養機能食品は例外です。トクホは、「血中のコレステロールなどを正常に保つことを助ける」「おなかの調子を整えるのに役立つ」などの機能表示を認めています。
 2013年6月、政府が成長戦略の目玉の一つとして打ちだした食品の効能・効果表示に関する規制緩和方針に基づき今年4月にスタートした「機能性表示食品」制度は、企業が「科学的根拠あり」と届け出るだけで、医薬品ではない食品でも国による審査・許可なしに「○○に効く」と表示できる制度です。7月27日現在、24社から59製品の届け出が消費者庁に受理されています。
 この制度は、アメリカの「ダイエタリーサプリメント健康教育法」がモデルです。アメリカが制度導入後、20年間で市場規模を約4倍に拡大したことに習おうというものです。

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トクホで承認されない製品が…

 マヨネーズなどを製造・販売するキユーピー社は“食べるヒアルロン酸”として肌の水分保持に役立ち乾燥を緩和する機能があるとうたい、「ヒアロモイスチャー240」を販売しています。
 同社は同種の製品をトクホで申請していましたが、2008年に「口から入ったヒアルロン酸が吸収されて皮膚に届くことの証明がされていない」など、有効性の根拠がないとして承認を認められませんでした。その後同社は、同じ研究データを元に今回は機能性表示食品の届け出をおこない、6月12日に発売が開始されています。
 また、リコム社が届け出たエノキタケ抽出物配合の「蹴脂粒」は、安全性の問題が指摘されています。同じ成分を同量入れた飲料「蹴脂茶」をトクホに申請しましたが、食品安全委員会は今年5月12日、「心血管系や呼吸器系など多岐にわたる臓器に影響を及ぼすことは否定できない」ため「安全性を確認できない」との結論を出しました。トクホ審査の結果を受け、機能性表示食品の届け出は受理されたにもかかわらず、発売できずにいます。
 消費者庁にはすでに、200品目をこえる食品の書類が届いているようですが、受理される品目は増えません。消費者庁の人手が足りないまま、数人で書類をチェックし、不備がある書類を差し戻しています。
 ホームページでの情報公開も遅く、消費者が情報を得るにも不便です。制度発足を急いだ弊害があらわれていると言えるでしょう。

貧弱な監視体制

 行政による「健康食品」の監視は省庁間で連携がとれていないため、消費者が危険な商品を避ける目的で利用したくても、なかなか情報は得られません。急速に広まるネット販売を規制するには、いまの体制ではなんとも力不足です。
 ネットの通信販売では、消費者が食品と医薬品を区別しにくいだけでなく、海外では販売されているが日本では承認されていない医薬品を、輸入代行サービスにより入手することが可能です。食欲抑制剤などを含む肥満治療薬「MDクリニックダイエット」の服用では、2011年に死亡者が出ています。

○消費者庁では
 インターネット販売に関する行政の監視は、消費者庁が「がん」や「糖尿病」に効くなどと称する「虚偽・誇大広告」を年4回調査しています。
 2013年度の調査では、182事業者202商品に改善要請が出されました。最近の調査でチェックされたキーワードは「被ばく予防」「がん」「脳梗塞」「糖尿病」「認知症」「寝たきり」「メタボリック改善」「脂肪燃焼」など、疾病に効果があるかのような表現です。消費者庁からは数だけの公表で、指導の内容と業者名・商品名は非公開のため、消費者にとってはまったく参考になりません。また、件数が少なく、業者の販売姿勢を正す目的にも足りていません。

○厚生労働省では
 医薬食品局監視指導・麻薬対策課が、毎年1回「インターネット販売製品の買上調査」を実施しています。ただ、調査対象健康食品が、強壮用・痩身用・健康増進及び美容効果を目的とする製品の3種類に限定されていることと、回数が少ないことが残念です。
 2012年度は、個人輸入サイトで販売されていた109製品を分析した結果、56製品から医薬品成分が検出されました。強壮用食品は44製品中37製品から5種、痩身用食品では29製品中19製品から9種の医薬品成分を検出しています。

○都道府県では
 東京都では毎年商品を買い取ってチェックしています。2014年度に不適正な表示・広告があったのは、販売店の商品では45品目中26品目、インターネット販売の商品では80品目中79品目となっており、インターネット販売で問題商品がたくさん出回っていることがわかります。
 東京都はインターネット広告も監視しています。2013年度は2万4000件の広告のうち443件、375事業者に改善指導をおこないました。

○国民生活センターでは
 2002年11月、国民生活センターはイチョウ葉食品の商品テスト結果を発表しました。
 イチョウ葉のエキスは、特に脳血管循環を改善するなどの効果が認められて、ドイツやフランスなどでは医薬品として利用されているものです。国民生活センターのテストの結果、有害成分が除去されていない商品や、薬効を示す成分がほとんど含まれていないものも流通していると、警鐘を鳴らしました。
 これまで食習慣のなかったものが商品化され発売される時代に、このような詳細な情報の発信が期待されます。

信頼できる情報の入手を

 このように行政によるチェックが不十分なまま、さまざまな健康食品が出回っています。メーカーが発信する情報には誇張がつきものです。宣伝に惑わされないよう、次の4点をチェックしましょう。
(1)理論的可能性を示すだけでなく、実験研究をしているか
(2)動物ではなく人間で、十分な研究がされているか
(3)研究者が販売業者から経済的に独立しているか
(4)複数の研究で評価されているか
 さらに、インターネットのサイトで資料を確認しましょう。次のサイトにはくわしく掲載されています。
(1)「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
(2)いわゆる健康食品ナビ
(東京都福祉保健局)
 また、情報が十分でない場合でも、「効果が感じられない」「飲み始めて早い時期に体調不良を感じる」などの場合は、健康食品を摂るのをやめましょう。
 有効で安全な健康食品の利用ができるように、消費者として工夫してみませんか。くわしくは、筆者の著書『サプリメントとの賢いつきあい方』(あけび書房)をぜひお読みください。

いつでも元気 2015.09 No.287

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