MIN-IRENトピックス

2015年8月28日

第41期第3回評議員会方針

はじめに

(1)激突の時代、総力挙げて、平和と憲法を守り抜こう
 1.戦争法案の廃案に全力を
 2.社会保障の解体を許さない運動を
 3.東日本大震災、原発事故被害、再稼働を巡って
 4.辺野古新基地建設反対を日本中の運動に
 5.いのちを売り物にするTPPへの反対を強めよう
 6.国民生活の悪化格差と貧困の広がり
 7.広がる国民的共同と「架け橋」としての民医連の役割発揮を

(2)半年間のとりくみの特徴と課題
 1.貧困と格差に立ち向かう民医連の医療・介護の活動
 2.憲法を守る大学習運動
 3.平和と人権、いのちの平等、受療権を守る運動
 4.原発事故に立ち向かう民医連の活動
 5.経営活動の到達
 6.医師養成の到達と課題
 7.民医連運動を担う職員の養成
 8.歯科分野のとりくみ
 9.共同組織の到達
 10.全国的な課題

(3)42回総会へ向けての重点
 1.戦争法案廃案 憲法を守りいかす大運動を
 2.医療、介護を守る共同の運動 共同組織月間の成功を
 3.原発ゼロ、福島支援の活動を強めよう
 4.民医連綱領と憲法の実現へ向け政治を変えるとりくみを
 5.医師の確保と養成、医学生対策の前進を
 6.中長期の事業計画の作成と当面の経営課題の前進を
 7.全国的な集会の成功を

おわりに

2015年8月23日 第41期第3回評議員会

はじめに

 第3回評議員会は、日本の国の在り方をめぐる歴史的岐路の中で迎えます。
 民医連綱領は「日本国憲法は、国民主権と平和的生存権を謳い、基本的人権を人類の多年にわたる自由獲得の成果であり永久に侵すことのできない普遍的権利と定めています。私たちは、この憲法の理念を高く掲げ、これまでの歩みをさらに発展させ、すべての人が等しく尊重される社会をめざします」と明記し、憲法にねざし、平和と人権を守り抜くことを私たちの使命としています。
 憲法9条を壊す安倍政権の戦争法案を廃案にすることは、民医連にとってもっとも重要な課題です。360万共同組織とともに戦争する国づくりをストップさせるため総力を上げましょう。
 わたしたちは、この半年間、41回総会の3つのスローガン、方針を実践し、平和、憲法、社会保障をめぐり、国民的な共同を強めてきました。
 戦後70年、被爆70年、平和と人権を掲げ、地域からさらなる国民的共同の年に、と呼びかけた第2回評議員会から半年、平和と憲法守れの声は大きな共同の行動となって安倍政権を追い詰めています。
 評議員会では、戦後70年にあたって特別決議を採択しました。大いに活用しましょう。第3回評議員会は、(1)第2回評議員会からの半年間を振り返り、情勢認識を一致させ、第42回定期総会まで半年間の方針(2)第42期役員選考の基準を確認しました。

(1)激突の時代、総力挙げて、平和と憲法を守り抜こう

写真1.戦争法案の廃案に全力を
(1)違憲立法を許さず、参議院での廃案を
 安保法制案は、アメリカの戦争に自衛隊が参戦し、支援することを可能にするまさに戦争法案であり、憲法9条を破壊する違憲立法であることが誰の目にも明らかになりました。
 憲法学者の9割以上、また内閣法制局長官経験者らが相次いで「安保法制は憲法違反」と表明し、安倍政権が立憲主義(国民の権利や自由を守るため憲法が国家権力の横暴を縛るという民主的な憲法を持つ国々では共通の立場)を踏みにじり、立法により事実上の改憲を行おうとしている暴挙に対し、多くの批判と民主主義を守れの声が挙がっています。日本弁護士連合会、1万人を超える学者、大学生、高校生など若者、女性、戦争体験者、年配の方々、各層の国民が全国で批判の声を挙げています。法案撤回、慎重審議をもとめる自治体意見書も、436議会を超え増え続けています。
 世論調査では国民の6割が憲法違反と回答し、8割が政府の説明に納得せず、第2次安倍政権発足後、はじめて不支持と支持が逆転する状況です。追い込まれた安倍政権は民意を無視し、衆議院で与党だけで法案採決を強行する暴挙に出ましたが、何万という国民が国会を包囲し抗議の運動はさらに広がっています。全国津々浦々、国会でさらに運動を強め、安倍政権を包囲し参議院で戦争法案を必ず廃案に追い込みましょう。

(2)憲法の平和主義を守り抜こう
 憲法前文は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
 「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」と述べています。
 憲法9条は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と述べています。戦争法案によって集団的自衛権を行使する余地は憲法にはありません。

(3)進行する改憲勢力の民主主義破壊
 政権党である自民党の国会議員が、言論統制と言える暴言を吐きました。「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなることが1番」「沖縄のゆがんだ世論を正しい方向に持っていくために、どのようなアクションを起こすか」などと発言、それに答え、講演者(美しい日本の憲法をつくる国民会議発起人)は、「沖縄の2つの新聞社はつぶさなあかん」などと述べました。これらの発言は偶然でなく安倍政権の「異なる意見には耳を貸さない」姿勢と根は同じであり、改憲運動の中心にいる勢力による民主主義の破壊です。

(4)高まる医療の戦争動員の可能性
 医療においては、すでに2003年の武力攻撃事態対処法において、有事の際、国が地方自治体や「指定公共機関」(民間)と協力し、必要な措置を実施する責務を有する、とされています。指定公共機関とは国立病院機構、日本赤十字社、日本放送協会その他の公共的機関及び電気、ガス、輸送、通信その他の公益事業を含む法人で、政令で定めるとしており、政府が公益的と認定すればすべて含まれます。今回の戦争法案で戦争に動員される可能性は格段に高まります。
 戦前、公然と戦争に反対することで、政府から弾圧された時代がありました。その時代に平和と人権を掲げた私たちにつながる無産者診療所の運動がありました。また、多くの国民が平和を願い、痛切な反省の中で現在の憲法を作り、国民主権、平和的生存権、基本的人権を普遍的権利として確立し、70年間にわたって「戦争しない国」として、今の日本を作りあげてきました。いのちを守る私たちは、いのちを最も粗末にし、最大の人権侵害である戦争につながるすべての行為に反対します。

2.社会保障の解体を許さない運動を
(1)医療、介護の崩壊を招く安倍政権の社会保障解体路線
 安倍政権は、戦争する国づくりと一体に社会保障費削減を強力にすすめています。
 2012年8月に成立した社会保障制度改革推進法にもとづき、医療・介護総合確保法、生活保護法改悪、プログラム法、介護保険法改悪、大幅な介護報酬マイナス改定、年金引き下げ、医療保険制度改革法と社会保障の抑制政策が従来に増し、急速に推進されてきました。
hyogi150828_02 今年度の社会保障削減が3900億円にのぼることが小池晃議員の国会質問で明らかとなりました(表1)。小泉政権時の社会保障予算の「自然増2200億円削減」を大きく上回る削減額です。また、今後75歳以上の後期高齢者医療は、加入者1600万人のうち865万人が受けている保険料の「特例軽減」を2017年度から廃止し、2~10倍もの負担増の押し付け()などでさらに深刻な事態が広がります。
 さらに、6月30日に「経済財政運営の基本方針2015(骨太の方針2015)」が閣議決定され「社会保障は、歳出改革の最重点分野」とし2016年から5年間にわたり社会保障費の自然増8000億円から1兆円を5000億円以下に抑制すると計画しました。内閣主導で社会保障の「改革集中期間(2016年~2018年)」を設定し、この3年間で社会保障の伸びを1.5兆円以下にしていく路線が鮮明にされています。
 その主要な改革は、2025年医療・介護提供体制の改革を軸に、「都道府県毎に医療費の水準や医療の提供に関する目標を設定し、都道府県別1人当たり医療費差の半減をめざす」、「地域医療構想との整合性の確保や地域間偏在等の是正を踏まえ医師・看護職員等の需給の検討」、「看護を含む医療関係者職種の質評価・質向上や役割分担の見直しの検討」、「都道府県への診療報酬特例」、「かかりつけ医普及に伴う診療報酬対応や外来時の定額負担」、「高額療養費制度や後期高齢者の窓口負担」、「公的サービス(社会保障)の産業化」「公的保険給付の範囲や内容の検討」、「市販類似薬のさらなる保険外し」、「患者負担額の上限引き上げ」、「要介護2以下391万人の保険外し」、「年金支給年齢の引き上げ」、「生活保護の医療扶助費への自己負担導入」など従来にない踏み込んだ削減・抑制改革です。
 これは、小泉内閣時代にすすめられていた医療構造改革をさらに加速するもので、これまで以上の医療、介護の崩壊を招くものです。
 厚生労働大臣の私的懇談会「保健医療2035策定懇談会」の提言書は、容認できるものではありません。保健医療制度の根底の価値規範、原理、思想を転換した「社会システム」をつくると表明し、現物給付の原則の否定、フリーアクセスと「自由開業医制」を否定し、全国統一給付保障の否定を内容としており、わが国の国民皆保険制度を根底から覆し、アベノミクスによる医療の国際展開路線に屈したものと言わざるを得ません。保健医療を社会保障から経済成長の手段へ転換する内容であり、厚生労働省の本務である「国民生活の保障及び向上」という役割を放棄するものです。医薬品、医療機器の企業と専門医、行政の癒着が相次いで報道され、利益相反、薬害被害の教訓も生かされていない構造が取りあげられています。

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(2)社会保障の充実に使われていない消費税引き上げ
 社会保障の充実のために全額を使うとし、消費税の引き上げを強行しましたが、15年度予算では、増税した8兆2000億円のうち16%、1兆3500億円しか社会保障費は増額されていません。2017年4月に実施するとしている消費税10%の撤回を求め運動を強めます。戦争する国、企業が一番働きやすい国づくりのため、国民のいのちを軽んじる国づくりを許してはなりません。

(3)医療費抑制を強力にすすめる医療提供体制の縮小
 医療保険制度改革、国民健康保険の都道府県単位化は、医療・介護総合確保法と合わせて「国民皆保険制度」の解体をめざしています。医療費削減の中心である医療提供体制の改革は、急性期病床の削減、慢性期、回復期病床、在宅へ早期に患者を移していく方針です。「医療・介護総合確保法」により、病床機能報告制度、都道府県による「地域医療構想」策定、その実現のために都道府県知事に強い権限をもたらしました。内閣官房の「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する有識者会議」は6月15日に、2025年までに病床1割以上削減、在宅患者30万人増の推計を発表し、鹿児島の35%削減をはじめ東京、大阪、千葉、埼玉、神奈川以外の41道府県で削減見込みとしました。今後都道府県が「地域医療構想」として2016年秋までに計画を策定する予定です。
 医療提供体制のあり方は、住民のいのちに直結する問題です。また安倍政権は、医療費抑制にとどまらず、医療の市場化、本格的な産業化を目指しており、国民皆保険制度を解体することを意図しすすめています。こうした流れは、住民の医療要求や国民皆保険制度を基本とした施策からかけ離れ、安心して暮らしたいと願う国民との矛盾はより大きくなっていきます。「誰もが安心してかかれる医療提供体制を」、「誰もが払える保険料を」など、いのちの平等の実現をめざす運動は、市町村、都道府県、地域を単位としてますます熾烈になります。各県連が都道府県、自治体の課題を社保協などと共同して分析し、たたかいの方針を明確にして運動をすすめることが必要です。

(4)介護保険制度改悪と介護報酬マイナス改定の深刻な影響
 今年4月から「改正」介護保険法が施行され、総合事業の実施や補足給付(低所得者を対象とした居住費・食事の負担軽減制度)の見直しなどの制度変更に伴い、利用者・家族に新たな混乱、困難が生じています。地域では介護報酬の改悪で小規模事業所の廃業が相次ぎ、介護サービスの基盤が壊れてきています。8月から特養多床室で基本サービス費の再引き下げに伴う室料徴収、年収280万円以上の利用者の2割負担が始まろうとしています。
 補足給付の見直しにより、預貯金調査など人権侵害ともいえる手続きを強いられる中で申請を取りやめる利用者や、補足給付の対象から外れることで退所を余儀なくされる利用者も出ています。現場、地域の実態をつかみ、国に対して介護保険制度の改善、介護報酬の再改定を求める介護ウエーブを大きく広げます。様々な困難を抱えている利用者1人1人にしっかり寄り添い、これまでの生活を継続できるようあらゆる手立てを尽くしましょう。
 4月から引き上げられた介護保険料は全国平均で月額5000円を超えました。保険料の引き上げとサービスからの追い出し、保険あって介護なしの事態が作り出されています。また、厚生労働省の調査で介護保険料滞納によるペナルティにより介護サービス利用時の自己負担が3倍になる高齢者が全国で1万人を超えることが判明しました。滞納者はいずれも年間18万円以下の年金のため年金天引きの対象とならない低所得の高齢者です。経済的に困窮し保険料を滞納せざる得なかった高齢者や家族にとってサービス差し止めに等しい制裁が広がっています。
 厚生労働省が6月24日に発表した推計では2025年度には38万人の介護職員が不足します。充足する見込みの都道府県はひとつもありません。しかもこの不足数は現状の介護職員が充足していることを前提として推計されているにすぎません。

(5)生活保護改悪をめぐって
 改悪された生活保護法により、2013年から3段階で実施された生活扶助基準の引き下げに加え7月から住宅扶助基準引き下げ、11月(一部地域10月)から冬季加算が削減されます。44万世帯が受給している住宅扶助基準の引き下げは、生活基盤を脅かし、冬季加算の引き下げは、寒冷地に住む高齢者や障がいや病気のある受給者への健康に甚大な影響を与えるものです。
 5月、神奈川・川崎市の簡易宿泊所の火災で10人の高齢者が命を落としました。千葉・銚子市では県営住宅に住んでいた母子家庭の親子が、「家を失ったら生きていけない」と家賃滞納で立ち退きを迫られた期日に心中をはかり、娘さんが亡くなりました。
 これらの背景には高齢者や母子家庭、社会的な弱者に対する日本の住宅政策の貧困があります。住まいは人権です。生活の基盤を奪う事はあってはなりません。実施に移される住宅扶助・冬季加算削減は例外措置を認められています。十分に活用し、いのちと人権を守っていきましょう。

3.東日本大震災、原発事故被害、再稼働を巡って
写真 福井地方裁判所で関西電力大飯原発判決に続き、高浜原発3.4号機でも、運転差し止めを命じる仮処分が決定されました。焦点となったのは原子力規制委員会の新基準の評価です。福井地裁は「緩やかすぎて安全性が確保されない」と新基準そのものを否定しました。一方で九州電力川内原発1・2号機では、仮処分を認めず申請を却下しました。政府は、新基準に適合した原発から順次再稼働するとし、川内原発、伊方原発などで再稼働の準備をすすめています。国民の7割以上が原発の再稼働に反対し、原発ゼロが多数の意思であることに変わりはありません。
 6月12日改定された政府の「福島復興指針」は、2017年3月までに居住制限区域の解除、1年後に精神的損害賠償月額10万円を打ち切るなど、収束していない原発事故を隠し、原発事故の被害者を切り捨てようとするものです。5年が過ぎたから区切りをつけるということは、いまだ12万人が避難し、暮らしの目途がない中で到底許されるものではありません。もとの暮らしに戻ったのか、もとの福島に戻ったのかが判断の基準です。
 福島県はこれに合わせ自主避難者に無償提供されている応急仮設住宅、みなし仮設からの追い出し(推定9000世帯、2万5000人)を計画しています。東電は自主避難を理由に家賃負担を1円も行っていません。国と東電の原発事故と損害賠償の責任を求めて運動を強めていきます。また、政府は2016年度から「自立」の名のもとで東日本大震災の被災自治体に、復興に関わる財政負担を押し付けようとしています。宮城では今も5万6千人が仮設住宅で暮らしていますが、一部の自治体を除き供与期間が終了、行き先未定の世帯は6千世帯を超えています。復興の遅れから経済的な困窮も拡大しています。岩手県保険医協会の調査では、医療費の自己負担が発生した場合、これまでどうりの通院を続ける方は4割にとどまっています。

4.辺野古新基地建設反対を日本中の運動に
 安倍政権は、沖縄と日本の民意に背き、辺野古新基地建設へ向けた海底ボーリング調査を強行、継続しています。県内の世論は80%、国内全体で70%の国民が「移設反対」もしくは「見直すべき」と答えています。安倍首相などは翁長雄志沖縄県知事との話し合いにおいて「辺野古新基地建設が世界1危険な普天間基地の危険性除去の唯一の選択肢」と繰り返していますが、県民、国民からの理解は全く得られていません。逆に調査に反対する県民の声と運動に押され、着工は大きく遅れています。
 5月17日に、辺野古新基地建設に反対する県民大会が行われ3万5000人以上が参加、沖縄「建白書」を実現し未来を拓く島ぐるみ会議が沖縄県内各自治体に広がっています。新基地建設を認めない民意は揺らぐことはありません。
 4月6日に映画監督の宮崎駿氏ら8人が共同代表となり呼びかけた辺野古新基地建設反対活動を支援する「辺野古基金」への寄付金は当初の年間目標3億5000万円を超え、その7割は本土から寄せられています。オール沖縄のたたかいからオールジャパン、世界的な運動に広がっています。沖縄県議会は、特定外来生物が土砂に紛れて侵入するのを防ぎ、沖縄の自然環境を保護し生物多様性を維持することを目的に県外からの土砂搬入を制限する条例を可決しました。搬出予定の県でも連帯した行動が始まっています。
 有識者による第3者委員会の検証を受け、翁長知事は前知事の行った辺野古湾岸の埋め立て承認に瑕疵があったとし承認の取り消し、または撤回を決断する見込みです。沖縄民医連と連帯し、民意をさらに集め、辺野古新基地建設反対のたたかいを粘り強くすすめていきます。

5.いのちを売り物にするTPPへの反対を強めよう
 6月23日、アメリカ上院議会でTPP交渉合意に必要なTPA法案の審議が打ち切られ、法案採決の動議が可決、TPP妥結の可能性が生まれてきました。公約を破って交渉参加に踏み切った安倍内閣が、「国会決議」を無視して合意に突きすすもうとしています。国会決議と国民との公約より日米合意を先行させ、TPP交渉の大筋合意に主導的役割を果たすなど言語道断です。
 交渉参加国のなかでも公共事業や政府調達、ISD条項、新薬の保護期間延長などをめぐって根強い抵抗があり、日本国内でも多くの自治体がTPP交渉に反対や懸念を表明、国連の専門家からも「医療保障・食品安全性・労働基準などの人権のしきい値が低下するといったマイナス影響が予想される」と懸念の声明が出されています。TPP締結を巡る状況は単純ではありません。
 韓国でMERSが拡大しています。背景には、利益優先で公立病院を減らし民営化をすすめた新自由主義的医療改革があります。採算性の悪い感染隔離病室や病棟のある公立病院は全病院数の約6%、病床数10%に過ぎません。95%を占める民間病院には感染隔離施設はなく、多くの患者が2次感染の震源地と言われているサムスンソウル病院など民間病院で院内感染を起こしました。いのちより儲け、こうした流れの中で国民の命は守れません。多国籍企業の利益のために、地球規模で人々のいのちと暮らし、人権や主権を脅かし、地域をこわすTPPの本質への認識を広め、反対の運動を大きくしていきましょう。

6.国民生活の悪化格差と貧困の広がり
 物価上昇、消費税の引き上げ、医療費負担増、年金引下げなど安倍政権のもとで国民生活は悪化の一途です。
 5月の実質賃金は物価上昇に追いつかず、25カ月連続マイナスとなりました。
 2014年の国民生活基礎調査が発表され、生活が「大変苦しい」と回答した世帯が29.7%、「やや苦しい」が32.7%、「苦しい」と回答した世帯を合わせると62.4%となり、1986年の調査開始以来最も高くなりました。特に18歳未満の子どもがいる世帯では67.4%が「苦しい」と回答し、全世帯の平均を上回っています(図)。
 警察庁の統計では就活自殺は、2007年から昨年までで302人になり、2013年の大学生の就活自殺率は人口全体の自殺率の5.8倍となっています。
 また2013年、1人暮らしの高齢者のうち半数近くが年収150万未満、高齢者夫婦のみの世帯でも7世帯に1世帯の割合で年収が200万円以下となっていると報道されています。
 孤立死をする高齢者も後を絶ちません。国民の中に広がる格差と貧困は、健康を直撃しています。2014年経済的事由による手遅れ死亡事例調査でも国民健康保険料(税)の未納、窓口負担ができない、失業などで保険証がないなどを理由に医療にかかることができず亡くなられたケースが54例寄せられました。

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7.広がる国民的共同と「架け橋」としての民医連の役割発揮を
 安倍政権のすすめる諸施策は、戦後70年、憲法を土台に平和、人権を基本として歩んできたこの国の在り方を根本から変えようとするものです。今、多くの国民が、危機感をつのらせ、声をあげています。戦争法案反対、9条守れ、民主主義を守れ、この声は日々大きく広がり、国民の共同が大きく前進しています。
 4月の統一地方選挙で平和と憲法を守る政治勢力の大きな前進、5月の大阪都構想住民投票での大阪市をなくすな、地方自治を守れの一点で保守、革新の枠を超えた共同が広がり勝利しました。全日本民医連は、第40回総会で、平和と人権、国民生活に関わる重要な課題を一致できる要求で共同をすすめる「架け橋」となろうと提起し、この3年間、全国各地で奮闘してきました。今、こうした共同の力が、政治を変える力としても発展しています。
 戦争法案の参議院でのたたかい、8月には安倍首相の戦後70年の「談話」、原発再稼働、辺野古湾の埋め立て申請の承認取り消し・撤回など安倍政権と民意の矛盾はますます広がります。あらためて架け橋として360万共同組織と民医連の出番を確認し、確信を持って平和と人権が輝く日本をめざして奮闘しましょう。

(2)半年間のとりくみの特徴と課題

1.貧困と格差に立ち向かう民医連の医療・介護の活動
(1)今年4月より各自治体で第6期介護保険事業計画(地域包括ケア計画)がスタートしています。施設や地域密着型サービスなど自治体の計画によっては今後の法人の事業展開が大きく左右される場合があります。自治体の計画をよく分析するとともに、法人の事業内容や地域包括ケアの方針などを伝え、具体的な提案を行うことが必要です。
 今後、在宅医療・介護連携推進事業、認知症施策、生活支援(協議体の設置、生活支援コーディネーターの配置)などの地域包括ケアの具体的なとりくみが各市町村で本格化していきます。民医連の事業所や共同組織の関わりや参画が大きな課題となります。地域ケア会議も全市町村で開催されていきます。給付削減の手段ではなく、困難ケースへの対応、地域の課題を明らかにするなど本来の役割を果たすよう自治体に働きかけ無差別・平等の地域包括ケアを作り上げる運動を起こしていきましょう。
 また、新規加算の算定をはじめとする改定介護報酬への対応、利用者の拡大を引き続き追求します。今改定は「2025年に向けた機能への配分」と位置づけられています。各サービス事業の特徴、地域で求められている役割を明確にし、機能強化や質の向上をはかる視点でとりくみます。地域の要求・期待にいっそう応え、地域に選ばれる事業所をめざします。対応の点では、法人内の事業の再編や職員配置の大幅な見直しを要する場合もあり、法人全体の事業計画にも関連づけながら検討・具体化することが重要です。報酬改定に対応した法的整備、職員の確保・養成、「介護の安全性」のとりくみを強めます。

(2)地域包括ケア時代を反映し、医療安全とともに介護安全の確保や介護現場の倫理的問題の解決等が、医療安全交流集会や医療介護倫理交流集会、チーム医療研修・交流集会でも重要なテーマになりました。各事業所では、多くの医療・介護で働く職種が連携・協働して高齢者の人権を守る視点からとりくむことがますます重要になっています。
 8月に開催する「地域包括ケア学習・討論集会」では、政府・厚労省の自己責任を土台にした「植木鉢モデル」ではなく、人権(生存権・健康権)を土台にした地域包括ケアに転換していくことや、地域連携・協同や住民組織を中心に置く地域包括ケアの構築とその争点、貧困と格差に立ち向かう無差別平等の地域包括ケアの探求と実践について問題提起しています。各事業所で議論と実践をすすめていきましょう。

(3)第2回HPHセミナーは、幅広い病院団体や学会の賛同を得てHPHの発信や協同の広がりを作り出しました。民医連外での加盟の動きが出ていますが、民医連内での施設加盟(28施設)をさらに広げましょう。また、病院団体や学会の代表者、研究者が発起人となりJapan HPHネットワークが設立されようとしています。第23回HPH国際カンファレンス(オスロ)には、11事業所24人が参加し20演題を発表する等住民主体のヘルスプロモーションを世界に発信してきました。
 全日本民医連QI推進公開事業は、測定5年目を迎え貴重なデータや成果が蓄積されています。今年度の厚労省「医療の質の評価・公表等推進事業」では、そのとりくみが評価され、全日本民医連が採択されました。次のステップアップをめざし、その中心課題である「2016年QI指標バージョン3(案)」に対して積極的に意見を結集しましょう。

(4)「SDHの視点、ヘルスプロモーション活動への参加などを通じた総合性を身につける医師養成」、「民医連らしい医療活動をつくり、そのプロセスに医師養成の課題を巻き込めているか」など各県連や法人・事業所では、医療活動と医師養成の一体化の議論や実践が始まっています。貧困と健康格差に立ち向かう無差別平等の地域包括ケアの構築が今後の民医連の医療・介護活動の重要なテーマです。その活動の展開とそれを担う医師養成が求められています。11月に第4回医療活動と医師養成方針検討会議を開催し、地域包括ケア時代における医療活動と医師養成、そして医学対と深く結びつけた問題提起や議論を行い、来期の運動方針へ反映させていきます。

(5)熊本、東京、大阪を会場に検診を行い、受診者の9割超に水俣病の症状が確認されました。9月にも熊本で実施予定です。水俣病の認定申請者は熊本・鹿児島両県で19214人(今年3月末)に対し、認定患者は2227人です。被害の賠償を求める訴訟の原告は1000人を超えています。1965年5月新潟県北部の阿賀野川流域で発生した新潟水俣病は公式確認され今年で50年です。4月末現在で認定申請者数は2518人で、認定患者は702人にとどまっています。水俣病患者としての救済を求めて原告818名が訴訟を闘っています。国や県、加害企業に対し、全ての被害者の早期の救済を求めていきます。
 昨年11月に実施した路上生活者精神保健調査の結果がまとまりました。114人の調査を行い、34%に知的障害、42%に統合失調症やアルコール依存症などの精神疾患を抱えていました。また何らかの障害を抱える当事者は62%に上りました。こうした結果を受け、実行委員会では障害に合わせた支援方法を実施するよう国と自治体に求めていく方針です。
 2005年6月29日の「クボタショック」から10年が過ぎました。アスベスト疾患は労災認定も含めると2万人を超える被害者を生みだし、中皮腫だけでも年間1000人が死亡しています。2030年にはアスベストを含む建物解体はピークを迎えます。引き続き被害者救済のとりくみを強めていきます。

2.憲法を守る大学習運動
 「憲法を守る大学習運動」は全県連で旺盛にとりくまれ、学習会は1751回、のべ参加者2万132人になり、総会方針の学習運動に迫っています(6月末)。5月12日には全国的な交流集会を開催し、とりくみを強化してきました。各地では、全日本民医連のDVDを活用した学習を軸に、とりくみがすすめられ、戦争法案阻止のたたかいの大きな力になっています。共同組織の方々も交え戦争体験を聞き「記憶する」とりくみ、看護奨学生と職員が共に基地のフィールドワークと憲法を学習するなど多彩にとりくまれています。憲法についてどう考えるかといった職員アンケートも各地で行われています。「後になって知らなかったでは済まされない」「憲法は難しいものと思い込んでいたが、基本的人権を不断の努力で守るためには難しいなどとは言っていられないと思った」など学びを通じてたたかいの決意が多数寄せられています。
 一方、「中国、北朝鮮が攻めてきたらどうするのか」など率直な疑問も出されています。1つ1つの疑問についてていねいに話し合い、互いに学びを深めていきましょう。総会までに全ての職員、全ての職場、共同組織の班会で学習を行いましょう。

3.平和と人権、いのちの平等、受療権を守る運動
 2005年からとりくみ始めた「国保死亡事例調査」は、2014年度の「経済的事由による手遅れ死亡事例調査」で10年目となりました。この10年で救えたはずの無念の死は報告されているだけで446事例です。国は社会保障解体をすすめ、大幅な負担増を強いる医療、介護制度の改悪をすすめています。東京の相互歯科では、難病を抱え在宅で療養を続ける患児家族の声から、暮らしている自治体が違うだけで、吸入器や介護ベッド購入の助成を受けられないことを問題として取り上げ、議会に働きかけ、ケース毎に必要性を検討し運用するよう変えさせました。「制度を変えさせなければ、平等な医療福祉は実現しない」と確信が広がっています。制度改悪がすすむ中、人権のアンテナを働かせ、患者・利用者に寄り添う中で、多くの運動の課題が見えてきます。運動を起こし受療権を守り抜くときです。
 無料低額診療事業の実施事業所は、総会時点の340事業所から366事業所となりました。奈良では県連として委員会を設置、県に対し届け出制の制度であることを確認、患者の生活保護比率が1.3%の診療所であっても受理され、事業を開始しました。
 国保法44条、生活保護など権利としての社会保障を前進させるたたかいをすすめるとともに、総会までにすべての事業所で申請に挑戦しましょう。
 保険薬局で発生する無低利用者の窓口負担金に自治体助成を求める運動も広がっています。那覇市議会では保険薬局の負担金助成を全会一致で決議する成果も生まれました。国による制度の拡充を求めつつ保険薬局の負担金助成を秋の議会に向けて一斉に働きかけましょう。
 第34次辺野古・高江支援・連帯行動、事務幹部学校フォローアップ研修など、辺野古新基地建設反対行動への支援・連帯を強めてきました。沖縄民医連から呼びかけられた「沖縄民医連2015 平和を守るたたかい」では6月末現在、沖縄民医連600人、県外から13県連、2地協、168人が参加しています。
 被爆70年の節目で行われた2015年NPT再検討会議に向け、署名71万筆、ニューヨーク行動に236人の民医連関係者が参加し奮闘しました。
 2015年NPT再検討会議は、アメリカ、イギリスなど核保有国の反対で最終文書は採択に至らなかったことから、一部マスコミで「決裂」と否定的に報道されました。しかし、今回は、前回よりも核兵器禁止条約が必要だとする主張が広がり、草案の段階で核兵器禁止条約が明記され、最終文書草案では「核兵器のない世界」の実現に「必要な法的規定を含む」「効果的な措置を特定し、策定する」とまで提案されました。これは、前回のNPT再検討会議以降、核兵器の非人道性に着目した運動の広がりや核兵器禁止条約への賛同の広がりなど、核兵器廃絶に向けた世界の運動が多数を占め前進してきたからです。
 被爆70年の節目となった今年の原水禁世界大会は全ての県連から参加、ここ数年で最高の1725人が参加しました。
 長崎民医連がとりくんだ被爆地域拡大の調査活動は大きな反響を生んでいます。広島では、5月ノーモアヒバクシャ訴訟の白内障裁判で2名が勝訴、「黒い雨」被爆地域拡大を求める訴訟も始まります。被爆者に寄り添う活動を強めていきましょう。
 この間、3万人が参加した5・3憲法集会をはじめ、「憲法守れ」「戦争法案反対」「STOP安倍政権」などを掲げた各地の集会など、これまでの一点共闘の枠を超えた運動が広がっています。その中で、民医連は引き続き「架け橋」の役割を果たして、いずれも大きく成功させてきました。
 特定行為に係る看護師の研修制度の開始へ向け、省令案に対するパブコメを発表し、理事会で「医療のあり方を大きく変える『特定行為に係る看護師の研修制度』について民医連の考え方と留意点」を決定しました。患者の人権を守り適切な医療を提供する立場で、「考え方と留意点」にそって制度の理解と法人・事業所での検討をすすめていきます。

4.原発事故に立ち向かう民医連の活動
 全日本民医連としての福島連帯支援活動を開始し2回で40人が参加しました。仮設住宅を訪問し、被災者と懇談した青年職員は、「原発被害が生活も思い出も奪い、何ら責任を取らない東電、国に対し怒りがこみ上げる」「盆明けに避難解除がされるが人が住める環境でなく、住み慣れた地域に帰ることができない。国と東電は多くの方々の人生を変えたという認識があるのか」とあらためて原発被害の実態に怒りを覚え、「見て感じるという視察の力は大きい、辺野古のように長期にわたり継続し、多くの職員が感じる機会を作ってほしい、事業所に『感じた』職員を増やし、運動を作っていきたい」と語っています。
 各地に避難している原発事故被害者の相談活動を全国ですすめられるようセミナーを準備、全日本民医連の原発問題学習パンフレット《新版》を発行します。

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5.経営活動の到達
 2014年度の経営は速報値の段階で3割にあたる43法人が赤字で、このうち23法人は、2年連続の赤字となっています。
 医科法人の経常利益率は0.8%と最も厳しかった2013年度より0.1ポイント悪化しています。収益は前年比101.6%と若干増加しましたが、費用の増加分を賄えていません。2014年度の短期指標該当は14法人、中期指標該当は49法人となっています。財務基盤の弱い法人や、金融機関への借入金返済負担が大きな法人では、利益の確保ができず資金困難に直面するおそれがあります。民医連経営の状況は厳しい局面であり、改善がはかれないまま来年度診療報酬マイナス改定が強いられれば、深刻な事態に陥りかねません。
 理事長・院長セミナー、病院委員会の交流集会、診療報酬改定交流集会などを通じ、医師や看護師など幹部による経営状況の認識が高まっています。経営管理やマネジメントについても様々な機会を利用して、独自に学習し実践に活かすとりくみが始まっています。全職員あげて経営の質の向上に結び付けて経営問題の打開に挑戦しましょう。
 診療報酬は、2000年度から14年間で実質8.67%のマイナス改定となっています。こうした状況の中で、医療機関の経営は急激に悪化し、国民が求める医療の安全、医療の質の向上が担保できなくなった地域も出現しています。全日本民医連は、2016年度の診療報酬改定にあたり、「憲法25条にもとづき、人権としての社会保障の実現を求めること」、「医療経営を成り立たせ、人材育成と確保ができる診療報酬に引き上げること」、「医療の質を担保するに足る診療報酬の適正な評価をおこなうこと」、「診療報酬を医療改革の手段として使わないこと」などを基本要求に底上げを求め、改定すべき個別要求をまとめ7月に厚生労働大臣に提出し交渉を行いました。
 徳島健康生協からの要請を受け、全日本民医連理事会では、「経営困難組織支援規定」の人材派遣基準に基づき、当面3カ月間専務補佐と事務局次長1人を現地に派遣し対策本部のもと指導と援助を行っています。
 民医連の統一会計基準推進士は、第8期の養成講座までで、944人が推進士の認定を受け、事務職員の11%に達しました。第9期民医連統一会計推進士養成講座を現在286人が受講しています。「全職員参加の経営」という民医連経営の強みにつないでいきましょう。

6.医師養成の到達と課題
(1)民医連の常勤医師実態調査(2014年11月時点)
 民医連の常勤医師は、2012年11月、3329名でしたが、今回の調査では3365名と微増しています。世代の特徴として40歳未満は、30%を下回り、引き続き後継者の確保が焦眉の課題です。
(2)新専門医制度設立への対応と制度改善へのとりくみ
 2017年から後期研修は新専門医制度としてスタートします。
 本年1月に発表した「新専門医制度に対する全日本民医連の見解」(以下「見解」)は、新制度設立について全国の医療界の議論に一石を投じました(注)。
 各県連から全国の病院に送られた「見解」に対して、地域医療への影響を危惧し、「見解」に示した民医連の要望に賛同する声が多数寄せられています。全日本民医連は、この「見解」を携え、日本医師会、全日本病院協会、日本プライマリ・ケア連合学会の役員との懇談を行い、ともに力を合せて、より良い専門医制度確立に向けてとりくむことを確認しました。今後も他の医療団体との懇談をすすめる方針です。
(注)機構に役員を出している4病院団体協議会からは「1.研修施設群については地域の実情を把握した上で多様な施設を認めること(中略)基幹施設の多くが大学となる場合においても以前の医局制度に戻すのではなく、医師の偏在が解消されるような制度設計とすること、2.情報の開示と透明性の確保、3.機構の収支予算の明確化を図ること」との意見書が日本専門医機構に提出され、全国の関係者を励ましました。
 第2回評議員会では、新専門医制度の問題点を明らかにし、改善のために全国の医療関係者と手を携えてとりくんでいくことを確認するとともに、民医連としての対応方針も示しました。無差別・平等の地域包括ケアを本格的に推進するために、総合診療専門医と総合内科専門医(新・内科専門医)を育成する後期研修を基軸にすえつつ、民医連らしい領域別専門医の育成を地域分析、ポジショニングをもとに民医連内外の連携も含めてオール民医連ですすめることを提起しました。より質の高い後期研修(専攻医教育)に挑戦するとともに、新制度の施行により形骸化する恐れがある初期研修の意義と役割を改めて認識し、民医連での初期・後期研修の更なる発展を目指す方針を確認しました。
 また、新専門医制度施行により質・量ともに変貌することが予想される研修関連実務やそれに対応する体制作りについて、事務担当者と幹部を対象にした「新専門医制度に対する事務幹部・研修事務担当者会議」を開催し、新制度に対する民医連としての具体的対応を開始しました。研修担当者間や各領域別の医師のメーリングリストを作成し、「新専門医」プロジェクトや各地協での情報をリアルタイムで全国に発信し、活用しています。

(3)医学生対策の到達と課題
 2015年卒は141人の初期研修医を迎える事ができました。16卒年は、現段階では昨年と同様の到達となっています。地方大学を中心に新専門医制度導入の動きから「将来、専門医になるためには初期研修より大学入局を」と迫る動きが出ています。マッチング登録の締切へ向け、最後まで各学生の悩みや思いに寄り添い、病院実習・見学、研修相談など民医連の研修の魅力を伝えるためのあらゆる手立てを打ちましょう。高校生、低学年からのとりくみの強化で500人の民医連奨学生集団をつくりあげましょう。
 社会保障改悪や戦争法制定の策動は、現代の青年・医学生にとって重大事です。こうした事態を医学生と共有し、ともに学びたたかっていく姿勢で医学対をすすめることが必要な情勢です。そういう点でも医学生のつどいの発展は重視すべき課題です。医学生のつどいは、学生の多様な学ぶ要求に応え3カ月ごとの開催とし、全体を結集するつどいをこれまでの8月開催から翌年3月に変更しました。6月は「戦後70年を考える」、10月は「医療格差」をテーマに設定し学習と討論を積み重ね、参加学生の広がりを生み出しています。

7.民医連運動を担う職員の養成
 全日本民医連教育活動指針(2012年版)にもとづき、職場教育の実践を中心にしたとりくみがすすんでいます。その中で、職員育成は日々の民医連の医療・介護の実践と運動の中から、民医連綱領に確信を持つ中で前進すること、「人間的発達ができる」職場づくりと一体にすすめられています。
 憲法学習は旺盛にとりくまれていますが綱領、民医連の活動を結びつけてとらえることが重要です。民医連を学び体感する媒体として「民医連新聞」、『いつでも元気』の活用、および購読をすすめましょう。
 青年職員の育成、事務職員育成、教育委員会の機能強化、急性期医療の現場など多忙な職場、介護職での育成や職場づくりの困難さなどが課題として浮かび上がっています。12月に職場づくり交流集会(仮称)、11月に事務委員長会議(仮称)を開催し全国的な討議をすすめます。
 事務幹部学校卒業生を対象に、フォローアップ研修会を実施しました。激変の情勢を体感するために沖縄開催とし、高江・辺野古のフィールドワークや幹部としての生き方・姿勢に迫る講演を主な内容としました。「事務幹部の役割をあらためて自分自身に深く問い直すことができた。いのちと平和を守る課題を、たくさんある課題の1つにしていないか」などの感想が寄せられています。県連単位や地協単位での開催も始まっています。全国のとりくみとの関係を整理し、総会方針に反映させていきます。
 看護管理者講座は、フィールドワークなどを通じて情勢を学び時代認識を深め、民医連医療の歴史と発展を学び看護幹部集団としての構えをつくることを目的としています。前期講座は6月に沖縄で開催し、56人の参加で沖縄のたたかいの歴史と現実を学びました。後期講座は11月に福島で行います。

8.歯科分野のとりくみ
 2014年度決算状況は、調査提出78事業所中(提出率‥67.8%・6月10日時点)の黒字事業は56事業所(71.8%)となり、経常利益は2.3%となっています。
 2015年の地域包括ケアを見据えた中長期計画マニュアルの作成と民医連らしい歯科医療チェックリストの活用をすすめていきましょう。
 鳥取県議会は6月26日、「保険でよい歯科医療の実現を求める意見書」を全会一致で可決しました。これで県下の全自治体で採択されたことになり、全国では大分県に続き2番目になります。全国で現在34.3%の自治体で行われた意見書採択を当面過半数めざし、とりくみをすすめましょう。
 「歯と口の健康週間」スタートの6月4日に428人の参加で「歯は命6・4国会内集会」を成功させ、国会議員要請行動や省庁交渉を実施しました。格差と貧困の広がりのなか、口腔崩壊からの健康悪化が深刻な事態として広がっています。また、医療の市場化、国民皆保険制度を壊そうとする政策のもと、「保険で良い歯科医療を」の署名を、民医連目標の20万筆を上回るようとりくみましょう。

9.共同組織の到達
 共同組織は、5月末現在、359万(人・世帯)、『いつでも元気』購読数は5万5751部です。41回総会は、地域から共同を広げ、安心して住み続けられるまちづくりをすすめるためには、共同組織活動の量、質ともの発展が不可欠とし、今日的な発展方向を探求し、新しい担い手づくりや職員の積極的な活動参加ができる画期を作ろうと呼びかけました。
 今日、いのちにまで自己責任を迫る安倍内閣のもと、共同組織の果たす役割はますます大きくなり、総会方針の提起の重要性が増しています。全国各地では、健康づくり、居場所づくり、見守り、助け合いなどを通じた「安心して住み続けられるまちづくり」のとりくみが大きく広がっています。
 民医連がめざす無差別・平等の地域包括ケアにつながるとりくみとして、「総合事業」開始の中で自治体や地域包括支援センターと懇談、自治体としての事業や見守り活動への参加、行政区単位、中学校区単位での共同組織づくりを検討している共同組織も生まれています。若い世代や子どもを対象とした親子向けサロンや「ママカフェ」は、安心して子育てできる地域づくり、「ひとりぼっちのママをつくらない」とりくみとして注目されています。格差と貧困が広がる中、子どもの貧困に対して無料塾にとりくむ共同組織も増えています。こうした様々な活動を通じて、共同組織の担い手も増えています。自らの要求実現と支えあい活動を通じて、共同組織の活動に確信が生まれています。
 こうした前進とともに、さらに飛躍していく上で、若い世代の活動家づくり、担当者の位置づけや力量を役割にふさわしくどう引き上げていくか、共同組織の前進へ向けた県連的な計画を確立し推進する事などが課題です。全職員を対象にした共同組織について学ぶテキスト『共同組織とともに』(仮称)を発行します。

10.全国的な課題
 2014年8月に発生した広島市の土砂災害に対して全国支援を行いました。義捐金を送るとともに、36県連、のべ1632人が支援を行いました。鹿児島県口永良部島の火山噴火に対して義捐金を送りました。
 自然災害時に孤立する地域は、全国で約1万9000あり、把握されているだけで約140万人が暮らしていると言われています。また、活動期に入った火山の噴火、巨大地震はいつ発生しても不思議ではありません。MMATの活動計画を理事会で確認しました。今期中に第1回の研修にとりくみます。
 第2回評議員会で確認した共同購入連絡会の強化へ向け、運営委員と懇談を行ってきました。徳島対策委員会では医薬品、消耗品等の対策を共同してすすめています。全日本民医連から役員が入りました。
 非営利・協同総合研究所いのちとくらしが創設され13年が経過しました。医療・福祉の領域で非営利・協同事業の研究がますます必要とされる情勢となっています。長期ビジョンの案が提示され、4役との懇談をすすめ、共同組織の研究、医療福祉情報共同センター(仮称)の確立を共同の事業として確認してきました。
 民医連退職者慰労会連絡協議会は、65歳まで働き続ける時代を迎え新たな慰労金制度の改定案を提起しています。全国的討議を共同してすすめます。
 東日本大震災のため、延期されていた青年劇場の「青ひげ」は、福島公演で終了し職員、共同組織を中心に1万人を超える方々が観賞し、感動を広げました。
 愛知・南医療生協と東海北陸地協、全日本民医連で懇談を実施しました。結果を受けて愛知民医連4役と協議を行っています。

(3)42回総会へ向けての重点

1.戦争法案廃案 憲法を守りいかす大運動を
 憲法改悪をすすめる安倍政権とのたたかいは、正念場を迎えます。戦争法案を廃案にすれば、異常な政権に計り知れない打撃を与えることができます。
 情勢を「いのち」、「憲法」、「綱領」の3つの物差しでとらえ、平和と人権を守る社会をめざして変革していく立場で臨みましょう。
 若い職員への学習援助と主体的な運動への参加をすすめることが特に大切です。憲法学習、沖縄支援、平和学校などフィールドと結びていねいにすすめることで、職員の行動参加も広がっています。運動の前進と職員の育成は一体です。上滑りでなく、時間も費用もかけ、学習と運動を強めていきましょう。
 次期総会から、来年夏の参議院選挙へ向け、憲法を守りいかす旺盛な運動にとりくみます。「1職員1“わたしと憲法”」の手記づくり、「加害の歴史を学ぶ」など職員、共同組織が参加する運動と一体に戦争法案を必ず廃案に追い込んでいきましょう。
 NPT再検討会議の成果を踏まえ、被爆70年の広島、長崎の原水禁世界大会成功へ向け奮闘しましょう。被爆体験の継承、被ばく者への支援とあわせてすすめていきます。
 圧倒的に広がる辺野古新基地建設に反対の民意の中、基地は決して作ることができない状況に追い込んでいます。翁長県知事を支え、建白書実現へ向け決して「アキラメナイ」、「屈しない」沖縄のたたかいを全国の大運動にし、日米両政府が断念するまで粘りづよくすすめましょう。辺野古支援連帯行動への全国からの参加、全日本民医連第35、36次辺野古・高江支援連帯行動、たたかいを支える財政活動に全国でとりくみます。全日本民医連が作成した辺野古・高江を知らせる写真パネルをすべての事業所で活用しましょう。
 日米合意に基づき、日本全土で欠陥機オスプレイの配備、訓練が始まりました。東京、佐賀をはじめとして各地での運動を強めていきます。

2.医療、介護を守る共同の運動 共同組織月間の成功を
 医療保険制度改革関連法が強行され、16年から入院給食代の引き上げ、紹介状なしの大病院受診時の定額負担、患者申し出療養、17年後期高齢者医療制度の保険料軽減特例の原則廃止、18年から国保運営の都道府県への移管、入院食事代の再引き上げなどの具体化が、これから審議会や国会、都道府県、市町村で検討されます。来春の通常国会では、骨太方針2015で示された、さらなる医療・介護一体となった改悪が出されようとしています。たたかいの方針は社保委員長会議で提起しますが、社会保障解体か、権利としての社会保障を取り戻すのか、重要な時期です。2017年の消費税引き上げの中止とあわせ、来年の診療報酬の底上げを求める運動を強めましょう。
 国民皆保険制度を守る、地域医療を守る、これは日本医師会をはじめとした医療界の一致点です。社会保障解体をストップさせる共同を広げるため全力をあげましょう。共同を広げる中で「人権としての医療・介護保障をめざす民医連の提言」を広げていきましょう。自治体でのたたかいが重要な時です。一致する要求で地方議員との共同を重視してすすめましょう。
 「保健医療2035」について、厚労省内に実行推進本部をつくる方針が表明されていますが、国民の意見、医療界など関係者の議論をおこなうことなく工程表を作るなど許されるものではありません。
 介護保険制度改悪と介護報酬の大幅なマイナス改定の深刻な影響について調査、告発を行い、介護ウエーブをすすめていきましょう。障害者総合支援法の2016年4月見直しへ向けた案が年内にも提案されます。障害者の権利を守る運動を障害者団体とすすめていきます。
 「憲法いかし、いのちまもる10.22国民集会」をたたかいの結節点として成功させましょう。
 今年の共同組織月間は、戦争法案廃案、憲法を守る大運動中でとりくまれます。また、画期を作ろうと呼びかけた「担当者の養成」、「新たな担い手づくり」、共同組織の中長期計画など総合的に共同組織の強化にとりくみ、経験を総会へ持ち寄りましょう。11月末までに365万構成員、『いつでも元気』5万8000部をめざしてとりくみます。
 販売所活動全国交流会を行います。2016年9月の第13回共同組織活動交流集会in東海北陸(石川)へ向け、全県連から共同組織連絡会委員を選出し、成功させましょう。

3.原発ゼロ、福島支援の活動を強めよう
 福島支援、原発ゼロの日本をめざして全国でねばり強くたたかいを広げます。川内原発、伊方原発など再稼働は言語道断です。9月に行われるNO NUKES WEEKのとりくみなど原発ノー、再稼働ノーの共同を前進させましょう。再生可能エネルギーの事業所への導入を積極的にすすめましょう。10月までのわたり病院への医師支援を全国の力でやりぬきましょう。各地の避難者に寄り添い、支援活動を強め、切り捨てを許さない運動をすすめましょう。11月に第3回福島支援連帯行動にとりくみます。

4.民医連綱領と憲法の実現へ向け政治を変えるとりくみを
 沖縄県知事選、統一地方選など民医連としてのとりくみを旺盛にすすめてきました。医療や福祉、介護、平和や暮らしと政治の在り方は切り離すことは出来ません。私たちのいのちを守る願いと逆行し、いのちを奪う戦争を選択しようとしている今の政治の姿に痛切に感じられるのではないでしょうか。
 私たちは、民医連綱領と憲法の実現をめざす重要な一環として選挙を位置づけてきました。個々の職員の思想信条の自由を保障することを大前提に、徹底して政治を学び、議論することが何より大切です。18歳選挙権が実現し来年の参議院選挙から実施されます。若者の政治参加の機会がより広がります。
 すべての幹部が、職員に、共同組織に大いに民医連運動と政治を語り、民医連綱領と憲法の実現をめざす運動の先頭に立つことを呼びかけます。
 被災3県の福島、宮城、岩手で行われる統一地方選挙、地方自治を守る知事と市長を選ぶ大阪府知事選挙・市長選挙(11月)、普天間基地のある沖縄宜野湾市長選挙(1月)、日本の針路にとって重要な選挙がたたかわれます。来夏の参議院選挙へ向け、平和と人権の輝く日本へ向かう1歩となるようとりくみをすすめましょう。

5.医師の確保と養成、医学生対策の前進を
 42回総会へ向かう半年間の医師分野の中心的重点は、(1)新専門医制度について制度改善へのとりくみの前進と対応の具体化、(2)初期研修の更なる発展、(3)「200人受け入れ」へ近づく目に見える前進です。あらためて、民医連医師養成の基本姿勢として、格差・貧困の進行の中、無差別・平等の医療・介護を実践し、健康権の守り手として患者に寄り添う医師づくりを推進していくことを確認して具体的な実践を開始しましょう。

(1)新専門医制度のもとで医師養成をすすめるために
 2017年4月開始予定の新専門医制度は、この夏に各領域のプログラム整備指針が出揃い、各研修施設群でのプログラム作りが本格化します。この間明らかになった事実から言えるのは、現行の地域医療を引き続き担う医師体制に少なからず影響が出ることと、予定されている基幹施設の資格要件からして、ほとんどの民医連病院は総合診療領域と1部の地域での内科領域を除き、他の研修病院の「連携施設」になって後継者養成をすすめざるを得ないということです。
 私たちはこうした新しい条件下での医師養成に果敢にチャレンジするとともに、より良い専攻医教育システムの構築のために努力します。
(1)新専門医制度自体への改善要求活動
 民医連の「見解」を携え、より多くの医療機関・団体との懇談をすすめ、地域医療を発展させることのできる新しい制度設計作りに尽力します。プログラム内の専攻医数や基幹施設での研修期間など最終的にそのプログラムを機構が認めるかどうか、地域ビジョンとの関係で行政の関与がどの程度影響するのかも不透明です。未だに事実を詳しく知らない医師が全国に多数います。さらに広く「見解」を知らせ、制度改善を国と機構に求めていきましょう。
(2)民医連医師養成のための新たな「連携」作りに挑戦しよう
 より有効的で実践的な「連携」を模索し、民医連医師の後期研修を具体化しましょう。各領域のプログラム整備指針を詳細に分析し、自施設のポジショニングに応じて、民医連内外の研修施設との連携を構築しましょう。その際は民医連としての主体性を最大限確保できるよう条件作りができることがベターです。その地域で必要な専門医療を見極め、その医療が継続できるよう全力でとりくみましょう。この連携は研修条件を満たすのみならず、今後のその地域医療の在り方、発展を連携相手とともに模索できるような新たな「地域連携」を生み出す視点も大切にしましょう。
 総合診療科や一部の地域での内科など、整備指針に照らし可能なところは基幹施設の獲得を重視してとりくみましょう。民医連間での連携も大いに追求しましょう。
 基幹施設であっても連携施設であっても、今後民医連施設内で行われる専攻医教育は、「専門医」育成にふさわしい内容で行われることが求められます。より質の高い後期研修の実現に挑戦しましょう。
 新制度施行に伴い新たに発生する実務に対応する体制整備が必要になります。「新専門医制度に対する事務幹部・研修事務担当者会議」で確認された必要な準備を遅滞なくすすめましょう。

(2)初期研修のさらなる発展を目指そう
 新専門医制度は、医学生に様々な影響を与えます。「専門医を取得するには初期研修を大学で始める必要がある」と学生に説明を行っている大学もあり、そもそもの初期研修の意義と役割を見失いがちになる医学生が増えることが懸念されます。新専門医制度を新たな契機として、医師養成の在り方、専門医の在り方など積極的に医学生と語り合い、国民が求める医師像を示し、共に模索し民医連医療への合流を呼びかけていく活動を飛躍させていきましょう。
 特に後期研修を他施設で行う時間が確実に増える状況を踏まえ、民医連医療の価値やその社会的役割についてじっくり考え、研修医自身の医療観を豊かに醸成できるような初期研修を実施することは、民医連の後継者養成にとって今まで以上に重要になります。医師集団を中心にしっかり議論してこの課題を前進させましょう。

(3)200人受け入れを現実のものに
 医師養成をめぐる情勢認識を一致させ、低学年からの奨学生確保と新卒医師の受け入れに全力をあげましょう。そのために地協単位、県連単位での年次目標も議論し、医学生対策活動の前進を築くスタートを切っていきます。
 この課題は全組織を挙げたとりくみとしない限り達成できないものです。文字通り幹部が先頭に立ち、組織全体の課題とすることが重要です。中国4国地協、東京民医連などがとりくんだ「医師の確保と養成をすすめる幹部決起集会」などのとりくみに学んで、医師と幹部役職員が先頭に立つ組織づくり、医学生委員会・医学対担当者の体制の強化、地協間・県連間協力を強めオール民医連でダイナミックな活動を展開しましょう。
 医師部・医学生委員会で、21年卒の段階で200人受け入れをやり上げる方針の議論をすすめています。21年卒200人受け入れにとって総会までの期間は重要な時期です。具体的な課題として低学年での奨学生獲得を大きく前進させましょう。その為の「大運動」を8月に全国に提起する準備をすすめ、11月、中間点として医学生委員長会議を開催します。
 日本の医師養成が大きく変わろうとする現局面に、この評議員会を起点に民医連の医学対活動の前進へ向けた討議を開始し、42回総会を前進で迎えられるよう奮闘しましょう。

6.中長期の事業計画の作成と当面の経営課題の前進を
 厳しい時代のなかでこそ中長期の事業経営計画を定め、職員と共同組織が団結して民医連の事業と運動を前進させる土台です。そのために、民医連の事業と経営を巡る情勢を学び、共有し、各事業所のポジショニングを鮮明にしていくことが、現状の経営を改善する鍵です。
 中長期経営計画は、民医連法人の展望を職員、地域住民の将来の希望に結び付けるものであり、医療・介護活動と経営活動を結びつける点に民医連経営にとっての重要なポイントがあります。このことによって医療経営構造の転換を明らかにし、予算管理の力量が向上し、後継者の育成につなぐことが大切です。
 病床削減計画や骨太方針の撤回のたたかいを強めるとともに、「集中改革期間」の設定など急激な情勢の変化やその政策の全体像をリアルに踏まえた民医連病院のボジショニングの変革・創造、特に医師の確保と養成と一体になった戦略と実践の具体化について、各病院がギアを上げてすすめることが求められています。
 全日本民医連は、11月に民医連病院院長、事務長、総師長研修・交流集会を開催します。地域包括ケア時代(地域医療ビジョンと計画も含め)における民医連病院の変革・創造の方向や課題について論点を提起するとともに各地域の民医連病院の展望を切り開くための戦略や実践の困難、その打開の方向を持ち寄り踏み込んだ交流・議論を行います。特に病院のポジショニングと一体になった総合診療医と専門医の確保・養成や経営基盤の構築・改善と中長期経営計画、などの議論を予定しています。
 12月に診療所交流集会も開催し、総会方針が提起した民医連事業所の役割について深めます。
 2016年度の診療報酬改定も直視し、救急、外来、在宅、保健予防、法人内連携、法人外連携など総合的にどう機能を強化するか、地域でのポジショニングと戦略を明確にし、中長期の事業・経営計画を100%の法人、事業所で確立しましょう。
 今後2年以内に病院の建て替えなど大型設備投資を予定している法人が56法人あります。一方で、法人の3~5年の資金計画・損益計画を作成している医科法人は5割程度です。建設費の高騰、消費税増税、診療報酬マイナス改定など、医療経営環境が厳しさを増しており、資金の困難はどこでも起こり得る情勢です。大型投資を予定していない法人も含めて、中長期の戦略にもとづく経営計画の確立、分析を組織的・集団的に行いましょう。自らの方針の再点検と、県連・地協としての点検・対策の強化が求められます。
 上半期決算確定後には、診療報酬改定への対応や2016年度予算作成を開始しましょう。
 「事業所独立会計制度実施要綱(案)」と、民医連「新」部門別損益計算書およびそれにもとづく「管理要綱(案)」をそれぞれ「要綱」として確認します。

7.全国的な集会の成功を
 第42回定期総会は、2016年3月10~12日、福岡で開催します。さらに全国の団結を強め、総会へ向け全国会議、交流集会を成功させ、時代を切り開く総会方針を豊かに作り上げるため議論と実践をすすめていきましょう。
 青年職員の民医連職員としての成長をはかる第36期全国青年ジャンボリー(9月 岡山)、2年間の各地の実践を持ち寄り交流し、総会につなぐ第12回全日本民医連学術運動交流集会(10月 9日~10日 大阪)を成功させましょう。

おわりに

 6月23日の沖縄慰霊の日、高校3年生の知念捷(まさる)さんは、安倍首相の前で「みるく世(ゆ)がやゆら」(平和でしょうか)という自作の詩を朗読しました。
 90歳を超えて認知症を患った祖父の姉は、70年前の沖縄戦で22歳の夫を失い、どこで亡くなったかもわからず、亀甲墓の骨壺には彼女が拾った石ころが入っています。
 詩の中で、記憶の薄れていく彼女の様子と戦争体験の風化を表現し、「忘れてはならぬ、彼女の記憶を、戦争の惨めさを」と語り、7回「みるく世(ゆ)がやゆら」と繰り返し問いかけ、最後に「今が平和で、これからも平和であり続けるために、みるく世(ゆ)がやゆら、潮風に吹かれ 私は彼女の記憶を心に留める、みるく世(ゆ)の素晴らしさを未来に繋ぐ」と結びました。
 第42回総会を私たちは、共同組織の仲間と力を合わせ、平和憲法を守り抜き、憲法を守り活かす日本、いのちが何より大切にされる日本へ前進する展望ある時代を切り拓き迎えましょう。

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