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2015年9月22日

「気になる人」に寄り添って 目指すは「安心して住み続けられる街」 千葉・船橋二和病院健康友の会

 健康づくりや安心して住み続けられるまちづくりを目指し、民医連とともに活動する住民組織を「共同組織」といいます。10月から拡大強化月間です。高齢化や貧困が進行し、さまざまな問題を抱える地域で「いま出番」と動く千葉・船橋二和病院健康友の会を訪ねました。今年度から「生活支援・地域包括ケア対策部」を設置。ある地域では、活動が注目され、地区友の会が地域ケア会議のメンバーにもなりました。(木下直子記者)

 船橋二和健康友の会(会員数一万五〇〇人)は、千葉県北西部の船橋市を中心に、一九の地区で活動しています。いま、会員が気になる高齢者を地域で見つけだし、必要な機関につなぐなどの「ちょっとだけ相談員」として地域で動けるよう挑戦を始めています。
 毎年友の会が開いている社会保障学校は、今年度初めて講師を職員や相談活動にとりくむ友の会員に依頼し、事例をたくさんひきながら、実践的に学べる内容にしました。
 「最近、作ってみたものです」と、役員の小川正光さんが、チェックシートを見せてくれました(写真)。地区役員や機関紙を毎月配る「手配り会員」に渡したものだそう。[庭に雑草が生え、植木鉢が散乱/同じ服を着ている/配偶者と死別したばかりで閉じこもりがち…]。「ちょっと気になる」が、どういう状態を指すかが分かりやすい。「あんまり難しすぎて、会員さんたちが『できないよ』ってなっちゃわないようにしています」。
 また、気になる人を見つけたら、どうするか、友の会役員や民医連職員への第一報の後、問題に応じ、会員による見守りから有償ボランティア、行政機関などにつなぐフローチャートも作っています。

■一部の経験を全体に

 友の会がこうしたとりくみをするきっかけになった一つには、小川さんが代表をつとめる丸山地区での実践があります。
 「すごいんですよ」と組織部の担当職員・太田雅石さん。「機関紙配りや健康講座などの日常活動で気になった人をキャッチしたら、役員会で共有し、相談して、必要な対応につないでいます」。
 最近はこんなケースが。「一緒に踊りを習っている会員さんが、お稽古に来ない」という情報が友の会の役員会に寄せられました。役員が電話をかけると「家を出たが、稽古場への道が分からなくなった」とご本人。一年前に夫を亡くし、独居になっていました。職員と役員で自宅を訪問すると、玄関にひとりには多すぎる傘が。料理で火を使うのも危なくなり、離れ住む娘さんが作り置きした料理を食べておられました。部屋にあったお薬カレンダーにたくさんの飲み忘れを発見。物忘れ外来を娘さんにすすめ、見守りを隣家の会員さんがすることにもなりました。毎日、ご飯を食べたか、薬を飲んだか、声をかけています。
 また、ひとり暮らしの八〇代の会員さんを訪問すると、顔にアザが。夜、トイレに行く途中で転倒し、翌朝やってきた知人が見つけるまで、倒れたままだったと分かりました。入れ歯もメガネも破損。車いすで介護度も重く、以前から見守っていた人でしたが、これを機に自治体の緊急通報装置を持ってもらうことにしました。
 こうした一部地域の実践を友の会全体に拡げようというのです。使える制度や困りごと対応のノウハウは、友の会が一〇年来待合室でつづけている「なんでも相談会」での蓄積もあります。

■高齢者訪問での実感が

 小川さんは自営業者で、医療や福祉関係者ではありません。家族介護の経験や、居住地域で孤独死が起きたことで、まちづくりに関心を持つように。そして、思いを決定的にしたのが、毎年友の会が八〇歳以上を対象に行っている「高齢会員訪問」だったといいます。介護保険導入前に始め、運動の意味合いが強かったものですが、対象者は年々増え、昨年は一昨年の一・二倍超。職員と一五六五人を訪ね、一一二七人に会いました。
 「訪問では、日本社会が抱える問題を肌で感じます。他人事ではありません」と小川さん。昨年、丸山地区では一三〇人と面談。高齢化、認知症、老老世帯、親の介護のため退職した独身の子ども…。介護保険をはじめとした社会保障制度の改悪は、家族の人生にも影を落としていました。

■役割、どう果たす?

 今年四月、ある地域の「地域ケア会議」から要請されて正規メンバーになった友の会地区も生まれています。「高齢者見守り訪問、機関紙の手配りによる訪問等を実施している。今後の地域包括ケアに、力あるメンバーとなる」というのが要請理由でした。
 今年度、友の会が「生活支援・地域包括ケア対策部」を立ち上げたのは、政府がねらう自己責任、市場化を土台にした地域包括ケアシステムではなく、民医連が呼びかけているような「無差別平等の地域包括ケア」こそ必要、という問題意識です。安上がりのケアを担うボランティアとして、とりこまれるつもりもありません。国や市の動向を追い、必要な意見を届ける。会員や高齢者の実態をつかみ、地域の実態や要求をまとめ、意識的に発信していこうという構えです。

(民医連新聞 第1604号 2015年9月21日)

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