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2015年10月6日

「戦争法」強行 藤末衛会長に聞く 国民的たたかいはいまも続いています 民意届く国会に変えよう

 9月19日未明、安保関連法案が国会で採決されました。日本国憲法をねじ曲げて解釈し、海外で戦争することに道を開くものです。全日本民医連は即日、廃案を求める声明を発表。内閣が遵守すべき憲法も、連日連夜国会を取り囲んだ国民の反対の声も無視した暴挙をどう受け止めるか―。藤末衛会長のコメントです。

―採決をどうみますか? がっかりした読者がいるかもしれません

 採決から半日後の一九日午後に、新宿で街頭宣伝をしましたが、多くの人が足を止めて訴えを聞き署名してくれました。「ぜんぜん終わっていないよ」という空気でした。たたかいはこれからです。
 一九日未明の議決の場面では、与党議員たちの表情が印象的でした。国民には法案を「必要だ」と説明しておきながら、いよいよ通すという時も、喜びはなく、無表情で、海外で暴力を行うための法律を数の暴力で通した―という顔だと思いました。記者にコメントをする安倍首相も伏し目がちでした。これは、反対でたたかった野党議員(民主、維新、共産、社民、生活)の堂々とした討論とは対照的でした。野党議員の姿勢を固めさせたのは「違憲だ」「採決するな」という国会の外の声です。
 違憲を指摘された法案は、法律になったいまも違憲で、いずれは廃止になるしかありません。審議でも問題が明らかにされ、大臣たちの答弁は支離滅裂、審議ストップも一〇〇回を超え、ズタズタです。今後は、法律を実行させない運動も大事になってきます。

―学生や学者を始め、多くの人が声をあげたことも特徴的でしたね

 ここまで国民的な動きになったのは、戦後七〇年の日本で初めてではないでしょうか。「民主主義は止まらない」、この七〇年で日本人は民主主義を培ってきた、そんな感があります。
 当初は、「自衛」の二文字が入った「集団的自衛権」を、何となく必要かなと思った人も多かった。ところが法案が国会に出されてから四カ月で、これは日本を守るものでなく、アメリカの戦争を助けることで、日本が戦争当事国として攻撃を受ける可能性が高まり、先制攻撃する可能性さえある。海外で自衛隊員が殺し殺され、日本人が危険にさらされる「戦争法」だという真実が、若者から幼い子どもを持つママたちにも広がりました。
 また「立憲主義」という考え方も浸透しました。少し前までは「憲法を守るのは誰?」との質問に、多くが「国民」と答えました。しかし今は「首相、大臣、議員だ」と正しい答えを言える人が増えています。
 いま、国民誰もができる抵抗は「この暴挙を覚えておく」「忘れない」ということだと思います。この記憶が、次の政権選択にも結びつきます。いま与党は、不公正な選挙制度の下、有権者の過半数の支持も得ずに多数の議席を得ています。国会は民意を反映していません。「選挙で選ばれた議員が多数決でなんでも決める」という理屈は通らないのです。
 野党側も「戦争法を廃止する国民連合政府をつくろう、立憲主義と民主主義を取り戻そう」と共産党が提案して、新しい動きが起ころうとしています。

―民医連の仲間に呼びかけを

 暑い日も雨の中も各地で反対運動の先頭に立ち、がんばりましたね。普段は政治的な話題に積極的でない仲間も、この問題は気にしている、という空気もできた。
 民医連は八月に戦後七〇年の「特別決議」をあげました。こうした立ち位置との関係でも戦争法をつかみなおしてほしいと思っています。
 殺し殺される環境に置かれれば、アメリカ兵を悩ませているような自殺の増加やPTSDなどが予測されます。自衛隊の若者たちの健康が確実に脅かされます。
 今国会では、戦争法の裏で、労働者派遣法や医療法改正など、重要な法案も通されました。社会保障のたたかいをしっかりやることは、税金を戦費に回す流れを止め、戦争法を実行させないことにもつながります。医療・福祉は平和であってこそ成り立ちます。


戦争法反対に奮闘した仲間の声

●地元の行動に参加してきた北海道・友の会員の松本美紀子さん…これほどワクワクした運動はなかった。強行採決の日の抗議集会にも悲壮感はなく「ここから、主権者の僕たちが民主主義をとり戻す新しいたたかい。安倍首相はひとつだけ良い事をした。自らの意思で集まる仲間をくれた」と。胸が熱くなる言葉で毎日コールを続け、政治は大きく動くという確信を持たせてくれた若者たちに感謝。展望は明るい、そんな思いでいます。
●「毎日昼デモ」を行った愛知・北医療生協の竹内一馬さん(29)…昼デモは通算82回でした。12万人の国会抗議の8月30日の後、デモの途中、学童保育所から子どもたちが「戦争反対!」と叫びながら走り出てきたことも。「この子たちのためにも」と思いを新たにしました。個人的にささえられたのは、自分自身の問題として立ち上がった若い人たちの存在です。デモは、今後も9のつく日に続けていこう、と皆で確認しました。やれることは沢山あります。
●地域の学生や若者と結成したグループN-DAVEで活動する長崎民医連の稲原真一さん(28)…この状況に何かしたいと数人でスタートしました。採決前は4日連続で街頭に出て、19日は長崎ではめったにない規模の750人が集まりました。ぼくは採決時は東京に帰省していたので国会へ。一緒に朝まで抗議した人たちの多くが30代以下で、普通の人が個人で集まってきているのだと感じました。採決に悔しさはありますが、「ひとつの節目が過ぎた」という感覚です。照準は最初から、声が届く国会をつくることですよね。

(民医連新聞 第1605号 2015年10月5日)

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