MIN-IRENトピックス

2015年10月6日

月間スタート 大きくしたい 共同組織 どんな活動をしてるの?

 一〇月から共同組織拡大強化月間が始まりました。共同組織とは、健康友の会や医療生協組合員など、「民医連のあらゆる活動をともにすすめる」パートナー。全国に約三五九万の仲間がいます。今年は、三六三万の仲間、『いつでも元気』の購読五万八〇〇〇部の到達を目標に、月間にとりくみます。「住み続けられるまちづくり」をめざすみさと健和友の会団地診療所支部(埼玉)を訪ねました。また最近、海外の研究者も共同組織に注目しています。

「知り合って助け合って」

みさと健和友の会団地診療所支部

 歳を重ねても、ひとりの暮らしになっても、出かけるところがある、気遣ってくれる人がいる…。団地診療所支部は、そんなまちづくりにとりくんでいます。
 支部があるみさと団地は、八八〇〇世帯を超える大型団地。建設から四〇年以上が経過し、六五歳以上でひとり暮らしの人は住民の三割を占めます。一九九六年に発足した「たんぽぽの会」は、ひとり暮らしや老老世帯、日中独居の高齢者の自主組織として、月一回の例会を続けています。現在、会員数は約六〇人。うち三〇人弱が要介護認定を受けています。

月1回の例会ささえて20年

 この例会をささえているのが団地診療所支部。会場設営や参加者の送迎、昼食の調理などを行います。毎回、五〇人以上の食事を作り、三コースの送迎で会員が集まってきます。
 メンバー最年長の平本常子さんは九一歳。いつも同じ席に座り、おしゃべりに花を咲かせます。二〇数年前にこの団地に来て、一五~一六年前からたんぽぽの会に参加。「同じ棟に住んでいた方に誘われ、参加するようになりました。みんなで食べるのはおいしいですよ」と顔をほころばせます。「ずっと家にいると、あっちが痛い、こっちが痛いと言うばかり。ここに来れば知り合いに会えるし、張り合いが出ます」。
 例会では毎回学習も。この日のテーマは「防災」。防災DVDを見て意見交換しました。「夫が障害者で車いす。防災訓練に参加して、助けが必要な住民がいることを近所の人に知ってもらうようにしている」などの意見が出ました。
 六二歳の男性は、数年前に脳梗塞で倒れ、身体も言葉も不自由。介護保険サービスを利用しながらひとり暮らしをしています。食事が始まると笑顔になり、「ぜーんぶおいしい」と、ボランティアさんにピースサインをしてみせました。
 秋山瑞代さんと芳賀由美子さんは、調理ボランティアを始めて一年。「友の会では日常的に声をかけあっていて心強い。自分が動けるうちは何かやりたいと思って」「料理教室に参加しているような感じで楽しい」と口を揃えます。

孤独でも“孤立しない”

 「知り合って、助け合って、仲間づくり」を合い言葉に、たんぽぽの会の活動は二〇年目に入りました。発足前、団地診療所の看護師さんを中心に、ひとり暮らしの患者の訪問や相談活動にとりくみ、友の会も協力してお花見会や茶話会を開いていました。
 やがて住民の高齢化がすすみ、孤独死が頻発するようになりました。「催しに出かけるだけのお客さん」から、「自分たちで考え行動する」住民自身の自主組織を、と会が誕生しました。会の申し合わせの冒頭には、「一人暮らしは気楽ですが、不安とたたかう生活です。知り合うことが、事のはじまり。助け合うことができるよう、仲間づくりをしていきましょう」とあります。初代会長の相澤家胤さん(故人)は、「孤独であっても孤立はしない生き方」をうたい、晩年は認知症を患いましたが、友の会の一一人が「見守り隊」となり、在宅生活を続けました。

誰かが見守っている

 たんぽぽの会をささえるボランティア班コスモスは、ほかにも防災マップ作りや「医療・介護・日常生活」聞き取り調査、地域包括支援センターとの連携、通院付き添いや入院手伝いもしています。
 中心となる松澤亘代さんは、「月一回のたんぽぽ便りの配達、次の例会の出欠確認、例会…と、最低でも月三回は会員の“お元気確認”ができる仕組みです」と説明します。会員の緊急連絡先も把握し、救急車を呼んだり、入院中の部屋の片付けや離れて暮らす家族への連絡なども日常茶飯事です。地域でも知られるようになり、「ケアマネからたんぽぽの会をすすめられた」と入会する人も。
 たんぽぽの会の支援は、支部の活動の一部です。友の会の会員は団地住民の一割の約八〇〇世帯。団地診療所とも連携し、訪問看護ステーションやデイサービスを開設し、健康づくり、住みよいまちづくりをすすめてきました。
 支部では、医療懇談会や健康体操、月三回のサロンや日曜映画会など、毎日のようにとりくみがあります。「○○さん見ないね」と気付けば訪問し、入院したと聞けば情報を共有し、誰かが様子を見に行きます。
 松澤さんは言います。「高齢化とひとり暮らしがすすみ、認知症の方も増えました。一人で最期を迎えることは避けられないかもしれないけど、すぐに誰かが気付ける地域にしたい。誰かが見守ってくれている、住んでいて良かったと思える地域にしたいのです」

(丸山聡子記者)

共同組織 こんなことできる

 今回記事にした他にも多彩な活動があります。
【高齢化する地域で】各地で空き家などを利用した「居場所」づくりや、見守り活動がとりくまれています。東京では、町会と共同したサロン、認知症の人の介護者向けのカフェを開く医療生協支部も。通院の送迎、介護保険のサービスにない作業を手助けする事業を行っている組織も。
【貧困に対して】北海道・道北地方の友の会では経済的困難による「手遅れ死」を少しでも防ごうと友の会が薬代の助け合い基金を設立し、同時に自治体への助成制度を要請。周辺の1市2町で実現。
【被災者の孤立防ぐ】東日本大震災被災3県では、共同組織が仮設住宅や災害復興住宅で「お茶っこ会」を開き、被災者の孤立を防ぎ、暮らしの問題を共有しています。
【健康づくり】健康に関する学習や大腸がん健診キャンペーン、健康維持のための体操教室など、職員とともに活発にとりくんでいます。
【地域の要求実現】環境保護、バス停に屋根つきベンチを設置(京都)、廃線に瀕した地域の鉄道の存続運動(兵庫)など、地域の要求運動にも積極的にかかわっています。


海外から注目

高齢化、貧困克服のヒントがある

ワシントン大学(人類学) ヘイムス・アーロンさん

 これから一年、日本に住み、横浜の健康友の会を中心にみていくことになりました。研究は、途上国の支援やアメリカ社会にも役立てたいと考えています。アメリカの高齢化は日本から一〇年遅れですすんでいますがこれを「Silver Tsunami (シルバー・ツナミ)」などとネガティブに呼ぶようになってしまっています。
 「ミンイレン」の名は、日本に縁のある研究者から知りました。民医連のホームページを見て、医療や介護を患者・利用者本人との「共同のいとなみ」と位置づけていることに興味がわきました。
 「人類学でなぜ医療に関わる研究をするの?」と聞かれることがありますが、病気と社会との関わりは深い。たとえば途上国では、患者さんに薬を出しても、家族や親類などに分けてしまい、治るどころか悪化させる場合も。薬を処方しても、どう飲まれるか分かっていないと効きません。経済格差の大きいアメリカでは、貧困地域と豊かな地域の平均寿命に一八歳も差が出ています。こうした問題の解決には生物学的な視点だけでは足りず、家族、地域、社会にも働きかける必要があります。アメリカの社会学分野の研究者には、アメリカを格差社会にしてしまったという反省もあります。
 一方で「支援」の問題ですが、いまの支援は困っている人を置き去りにした「上から」のものになりがちで、当事者の力になるものに変えていく必要があります。
 二年前から研究準備であちこちの民医連を見にいきましたが、住民自身が地域の健康づくりや、高齢になっても地元に住み続けたいと活動していて、必要があれば、病院や診療所もつくっていた。コミュニティーが抱える問題を「上から」でなく「下から」解決しようという組織は興味深いです。
 活動も多様で、面白いと思った場面がたくさんありました。体操教室には、ひとり暮らしの認知症のお婆さんも通っていました。体操の日を忘れても、共同組織の人が迎えにいくから、彼女は引きこもりにならず、体力を維持していました。訪問介護に同行すると、その家のゴミ捨てを近所の人がしていて、ヘルパーが帰り際に「ありがとう」と声をかける。こういう関係は、アメリカではあまりありません。
 戦後直後の貧しい日本で、民医連のような組織が生まれたことに不思議はありませんが、その後、発達した資本主義国になった今も何十年も組織が存在し、活動していることにも注目しています。

(木下直子記者)

(民医連新聞 第1605号 2015年10月5日)

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