民医連新聞

2015年10月20日

相談室日誌 連載400 勇気ふりしぼり来る相談 窓口は耳傾けてほしい(沖縄)

 六〇代のAさんは、八〇代の母親(要介護1)と二人、借家暮らしで、手術目的で当院に入院した患者さんです。義妹から入院費の相談があり、対応することになりました。
 Aさんは無職で無年金。世帯収入は母の年金のみ。ご家族ができる限りの支援を行っていましたが、困窮していることは明白でした。
 Aさんに生活保護申請の意思や、今までの相談歴などを聞きましたが、「よく分からない」といいます。義妹によると、生活保護の相談にB市役所へ二度行ったことがあるが、Aさん名義の土地があることを理由に、追い返されたそうです。「土地は売りに出して一〇年たっても買い手が見つからない土地です…。窓口では話も聞いてもらえず、たいへんな思いをした。もう行きたくない。私たちは相談に行っても無駄だと思っている」と話しました。
 治療に専念できるよう、無料低額診療の手続きをし、並行して生活保護の相談を始めました。当初は窓口での嫌な経験が払拭できず、強い拒否感がありました。ところが、入院を機にAさんは「生活改善が健康につながるなら、申請して良い」と思うようになりました。申請のチャンスです。さっそく生活保護課へ連絡しました。
 ところが、電話の対応は「土地があるので無理」とまさかの一言。土地があっても一〇年も売れず、明らかに生活保護以下の生活をするAさんをたった一言で片付けるなど、まさに義妹の言うように、嫌な思いしか受けません。
 もちろん、SWとしてはこの対応を許せません。受理させるまで、反論や相談を繰り返し、最終的にAさんの土地の名義を他の家族へ変更する事で、受給にこぎつけました。
 生活保護は「最後のセーフティネット」と言われますが、十分機能しているか、疑問に思う事がたびたびあります。窓口に相談に来るのは、「最後の手段」として本当に困って助けてほしいと、勇気を振り絞って来た方々だと思います。窓口の業務は大変でも、一人一人の困りごと、背景や状況を傾聴する姿勢で対応してほしいと強く思います。

(民医連新聞 第1606号 2015年10月19日)

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