医療・看護

2015年11月3日

私のお仕事 病院調理師

 多彩な職種が働く民医連事業所。それぞれが専門性ややりがいを語る連載。24回目(最終回)は病院調理師です。

 調理師は食事を作るのが仕事です。病院や医療施設で働いている場合は病院調理師といいます。医療の高度化に伴い治療食も複雑になり、食事に対するきめ細やかな対応を求められるようになっています。調理師にも専門的な知識・技術・技能の質の高さが必要です。

食べることは生きること

 食事は、単に生命と健康を維持するためだけのものではなく、生きる力と直結しています。生きる希望にもなります。患者にとって大切な食事を作るのですから、“ハンパ”な仕事はできません。また、患者に料理をおいしく食べていただくことも大切です。食事は楽しくなければ、おいしくありません。
 しかし、100人いたら100人全員が「おいしい!」と思える料理は無いと思います。人にはそれぞれ好みがあり、生まれ育った環境で慣れ親しんだ味も違い、年齢とともに味覚が変化することもあります。何をおいしいと感じるかは人によって千差万別です。しかし、それを言い訳にして努力は怠れません。食材の持ち味を最大限に活かした料理を作ろうと考える。そんな挑戦を絶えず続けていくことが大切だと考えています。
 当院では、調理後すぐに凍結寸前の温度で冷却保存し、食前に盛りつけて再加熱する「ニュークックチル」を導入しています。現在は、それに適応した料理について開発をすすめ、“究極レシピ”という形で残せるように日々研さんしています。

「おいしかった」が私の勲章

 調理師にとって、最も大切な資質は何でしょうか。食材の良し悪しを見極める経験と知識、自分が理想とする味を実現する優れた味覚。調理技術も持っていて当たり前。しかし、それよりも重要なことは“心”があるかどうか。「おいしいものを食べてほしい」、「自分がつくった料理で患者さんを元気にしたい」と願う心こそが最も大切です。才能や技術があっても、患者の立場や気持ちに寄り添う心がない限り、心の底から喜んでもらうことはできません。心のない調理師は、本物の調理師には決してなれません。同様に、心のこもらない料理も本物の料理ではありません。
 患者さんの「おいしかった」が私の勲章。おいしいものを食べたときに自然と緩む口元。本物の表情を引き出すことができるのは本物の料理だけ。そんな仕事を誇りに思います。

(吉海弘法、福岡・千鳥橋病院)

(民医連新聞 第1607号 2015年11月2日)

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