副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2015年10月6日

フェソテロジンフマル酸塩徐放錠(トビエース)による排尿困難 副作用モニター情報〈446〉

 過活動膀胱(overactive bladder:OAB)の治療薬はムスカリン受容体拮抗薬が中心であり、現在では多種の薬剤があり、特徴も様々です。膀胱選択性の低いオキシブチニンやプロピベリン、膀胱選択性を高め脳内への移行性が低い治療薬として発売されたソリフェナジン、トルテロジン、イミダフェナシン、そして今回取り上げるフェソテロジン(トビエース)もその内のひとつです。フェソテロジンによる副作用は過去1年間で3件、以下の症状が報告されています。
【症例】80代男性[既往歴:前立腺肥大症、高血圧症、脳梗塞後遺症、アルツハイマー型認知症] ベタニス50㎎を内服していたが、症状が改善しないためトビエース4㎎に変更。服用28日目、夜間失禁は改善傾向。54日目、夜間に行方不明になる。119日目、尿失禁あり。152日目、腹痛にて受診。尿意はあるが排尿なし。検査し異常は無く、導尿して帰宅。153日目、症状改善せず他院受診。尿閉の可能性が高く尿道カテーテル留置となる。154日目、トビエースの副作用を疑い服用中止。中止7日目、尿道カテーテル抜去。中止8日目、尿意あるが排尿なく腹痛あり。導尿で症状改善。中止9日目、尿閉続くため、尿道カテーテル留置。バルン管理となる。
【症例】70代男性[既往歴:COPD、起立性低血圧、不眠症] 頻尿に対しトビエース4㎎開始。内服5日目、4日間排尿なく、腹痛、吐き気あり。イレウス疑いで救急搬送。腹部CTにて尿閉と診断。抗コリン作用のあるスピリーバ、トビエースを中止。中止2日目、尿閉が続き導尿、ザルティア5㎎開始。中止5日目、尿閉持続。バルン留置。自尿向上を目的にアボルブ、ベサコリン散、ユリーフ開始。中止24日目、自尿改善ないため、内服中止し、バルン管理となる。
【症例】50代女性[既往歴:糖尿病、高血圧症、鼻炎、高脂血症] 頻尿にてデトルシトール4㎎(トルテロジン)を使用。採用の切り替えに伴いトビエース4㎎に変更。内服数時間後、ひどい口渇。3日間服用後中止、翌日には回復。

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 過活動膀胱の有病率は年齢とともに増加し、60歳以上で13.8%と報告されています。高齢者に珍しい病気ではなく、泌尿器の専門ではない医師も診療にあたる機会があるでしょう。特に、抗コリン薬の中でも副作用を軽減したものが発売され、治療に汎用されています。フェソテロジンもトルテロジンをプロドラッグ化したことで、安定した血中濃度が維持でき、QT延長の危険性を軽減した薬です。しかし、高齢者はコリン分泌機能が低下しており、安易に増量(効果を期待)すると副作用が発現しやすくなります。また、併用されている薬(抗コリン作用を有する抗精神病薬、抗うつ薬、抗パーキンソン薬、抗不整脈薬、胃腸薬、カゼ薬、鼻炎薬、かゆみ止めなど)によっては、口渇、便秘、尿閉、認知機能の低下、めまいなどを強める可能性があります。注意しましょう。

(民医連新聞 第1606号 2015年10月5日)

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