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2015年12月8日

社保学校始めました 千葉民医連 “患者さんの困難に立ち向かいたい―”

 「社会保障を守る活動をもっとみんなのものに―」。千葉民医連ではこの秋から社会保障学校をスタートさせました。一〇月の開校式から三月の卒業式まで毎月講座を行い、計六回開催します。一一月の第二講座を取材しました。

(田口大喜記者)

 受講生は一〇人。平日午後の半日又は終日を講座にあてています。看護師、介護職、ケアマネジャー、SW、事務など職種はさまざま。入職して間もない職員から、看護師長など管理職も参加しています。
 この回は千葉民医連のとりくみを学び、医療や介護現場の事例をもとに社会保障を考えました。

■現場のとりくみから学ぶ

 二和在宅介護支援センターSWの上野和美さんは「介護保険制度の改悪に伴う介護アンケートから」と題して講義を行いました。まず、二〇一五年四月からの介護保険制度改正の概要と影響を解説。そのうえで、社会保障推進千葉県協議会(社保協)が行った、県内一〇〇〇カ所の介護事業所に対するアンケート結果を紹介しました。アンケートには「人員不足で入浴介助ができない」「事業所を中止せざるを得ない」と苦痛を訴える声が多数。上野さんはこの結果を「出口が見えず、絶望感に溢れている」と語り、改正の理不尽さを伝えました。
 続いて船橋二和病院医事課の主任、清家宏二さんが「国民健康保険資格証と子どもの受療権を守った取り組み」と題して講義。過去に清家さん自身が経験した、資格証明書の無保険状態で受診した四歳の子どもの事例を振り返りました。祖父母に育てられており、連れてきた祖母が資格証明書と乳幼児受給者証を提示。しかし主保険が効かないため、その子は乳幼児医療も使えませんでした。清家さんは国民健康保険料納付相談を行いました。この情報を他団体と共有、毎日新聞の取材も受けました。子どもの無保険問題に注目が集まり、「子どもには保険証を発行する」という国保法の改正にもつながっていきました。
 清家さんは最後に、「医療を受けられない人が一人でもいれば人権問題ではないでしょうか? 私たちはどういう社会に生きているのかを把握しましょう」と呼びかけました。

■身近な事例持ちより討議

 後半は二班に分かれてグループワークを行いました。受講者たちが事業所の事例を持ち寄り、話し合います。
 「課税世帯の患者さんでも生活保護並みの生活を送っている」、「経済的負担の大きい高齢者の通院治療をどうささえていけばいいか」など多様な観点からの事例が出されました。身近に存在する社保問題に、参加者たちは真剣に聞き入り、討論しました。
 千葉健生病院の浅田朋美看護師長は、日ごろから患者や家族からの社会保障に対する嘆きを多く耳にしています。「困っている患者さんを助けたい」との思いがあり、受講することに。「ここで学んで患者さんと一緒に問題に立ち向かいたい」と語りました。
 今井町診療所の事務職員・飯島彩さんは入職からまだ半年あまり。事例を用意するにあたり、経済的に困難な患者さんの訪問をする先輩に同行しました。「弱者に寄り添う民医連の姿勢は素晴らしい。諸制度の利用を積極的に呼びかけたい」と話しました。

■運営は手探り

 「学校」の運営委員は四人。初めての開催で「手探り状態」だそう。野田尚史さん(船橋二和病院事務次長)は、「本来入りやすい社会保障のとりくみがなぜ難しく受け止められてしまいがちなのか。これを機会に私たちも成長したい」と意気込みを語ります。
 六カ月間にわたる月一日の講座は、送り出す職場も楽ではありません。特に受講生集めに苦労したとのこと。「忙しい中でも、民医連職員を育てる視点で、受講生一〇人の枠を奪い合うようになってほしい」と野田さん。

*   *

 今後はフィールドワークや、自治体交渉・国会行動なども企画しています。


〈目標〉

(1)平和的生存権など憲法の理念をふまえ、民医連綱領を学び、体現する場とする
(2)社会保障の理念を学び、人権を守る民医連職員としての成長、担い手づくりを目的に、参加者が確信を深める場とする
(3)現場でおきている事例から学び、いのちの大切さと医療人としての役割を知る場とする
(4)社保活動の具体的な運動・実践を持ち寄って経験を交流する場とする

〈プログラム〉

第1講座 「社会保障とは~社会保障の理念を学ぶ」
第2講座 「医療・介護の現場から社会保障を考える(1)」
第3講座 「医療・介護の現場から社会保障を考える(2)」「人権」をテーマに考える
第4講座 学習、自治体交渉(懇談)に向けた要望書づくり
第5講座 自治体交渉(懇談)、振り返り
第6講座 卒業講座(民医連綱領と実践を学ぶ)、卒業式

(民医連新聞 第1609号 2015年12月7日)

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