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2015年12月8日

フォーカス 私たちの実践 小児の訪問看護で調査 埼玉・ケアセンターかもがわ 小児患者の在宅療養 受け入れ事業所を増やすには?

 医療機器の進歩などにより、医療依存度の高い小児でも自宅で過ごせるようになりました。そこで求められるのが、その生活をささえる医療や介護です。ところが、小児の受け入れに消極的な事業所も少なくありません。人工呼吸器を着けた小児の訪問看護に携わる看護師の声から、どうすれば訪問看護ができるのかを探りました。医療生協さいたま生活協同組合・ケアセンターかもがわの前野かつみ看護師の報告です。

 近年、人工呼吸器など医療機器の軽量化がすすみ、難病や重度の障害のある小児でも在宅で家族とともに過ごせるようになっています。しかし、問題は小児患者を引き受ける事業所の少なさです。
 ケアセンターかもがわは、居宅介護支援、訪問看護・介護を行っています。訪問看護では、人工呼吸器管理の小児患者四人を受け入れています。その小児を担当する看護師に調査をし、なぜ支援を行えているのか検証しました。きっかけは、いくつもの事業所に訪問看護を断られた経験がある患児がいたことです。
 調査は、小児に関わっている六人の看護師に行い、質問に自由記載で答えてもらいました。質問項目は、小児への訪問看護で(1)不安なこと、(2)可能にしてきたこと、(3)やりがい、(4)今後の課題の四点。その回答から支援を可能にする要因を考えることにしました。

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■重症の小児を看る不安

 不安にあがったのは「難しい病気でよく分からない」「親の思いに寄り添えているかどうか」「成長に合わせたケア」という点。
 関わっている患児の多くが難病を抱えており、医療者でも初めて聞くような病名もあります。担当する時にはその病気について一から勉強しますが、経験の少ない症例のため、看護師が病状の変化を見抜くことも難しく、「安全にケアできるのか」「緊急時の対応はどうすれば」などの不安につながっていました。
 また、小児の場合は主な介護者の多くが親御さんです。子どもの成長を楽しみにし、成長とともに、してあげたいことやさせてみたいことは変化していきます。時間や回数が限られた訪問看護では「点」の関わりになってしまい、そうした親の思いを汲み取れているかどうかが不安な点でした。
 ケアの方法も、病状だけでなく子どもの成長に合わせた変更が必要になります。患児の身体が大きくなって一人で行えていたケアが複数で行う必要がでるなど、大きく方法を変えることもあり、それが負担になっていました。

■共有してささえ合う

 以上のような不安がありながらも、小児訪問が行えるのは、集団的な対応や、患児・家族とのコミュニケーションが重要なポイントだと分かりました。
 訪問して新しく変更になったことや分からなかったことはあやふやにせず、スタッフ全員で学習します。カンファレンスを開き、情報共有を積極的に行い、患児に関わる全員が同じケアができるよう、写真付きの詳細な手順書を作るなどの工夫もしていました。
 コミュニケーションは、まず主介護者との会話を大切にし、一緒に考え二人三脚ですすめるよう意識していました。患児に関わる他の事業所との連携も密に行っていました。各事業所だけでは「点」での関わりですが、それぞれ持つ情報を交換することで、「面」の関わりに広がっていきました。

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 病院での療養では規制もあり、病気や障害があっても家族揃っての在宅生活が患児にとって良いと思います。のびのびと家で過ごすことで、体調が安定する患児もいます。そんな様子を家族と共有し成長する姿を一緒に見ることが、スタッフのやりがいにもつながっています。「生きる力をもらっている」と語る看護師もいます。
 問題をチームで解決し困難を乗り越え、スタッフが大きなやりがいを持てることが、人工呼吸器管理の必要な小児患者の訪問看護を可能にしていました。今後は、スタッフのスキルアップや地域の受け皿の拡大などが課題です。この調査結果を広げ、解決につなげたいと考えています。

(民医連新聞 第1609号 2015年12月7日)

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