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2015年12月8日

戦後70年 のこす 引き継ぐ 利用者さんの戦争体験DVDに 北海道勤医協在宅

 戦後七〇年シリーズ、最終回は北海道から。北海道勤医協在宅グループは「若い職員に平和についてもっと意識してほしい」と、介護施設の利用者さんから戦争体験を聞き取り、その様子をDVDに記録しています。撮影に立ちあったスタッフや、DVDを視聴したスタッフに、よい変化が表れているようです。法人本部の阿部哲理さんの寄稿です。

 北海道勤医協在宅グループでは、戦後七〇年被爆七〇年の節目を迎えた今年、「憲法学習大運動」に春から全センター(三二センター)でとりくみ、街頭宣伝・訪問行動・署名行動などを行ってきました。

■職員は積極的に反応

 法人の職員育成部では、忙しい現場を回しながら、たたかいや運動になかなか参加できない職員がいるという現状に着目。職員が日々関わる利用者さんの中で、「若い人に戦争体験を伝える語り部」の候補者さがしを呼びかけ、全センターでとりくむという企画を提案しました。
 提案にはすぐ反応があり、「自分の利用者さんが日々語っている事を撮影しに来てくれる」と、職員も利用者さんと一緒に撮影を楽しみに待っていてくれたり、これまでこうした活動にどちらかと言えば消極的だった職員からも、「自分の事業所にも体験を話してくれる利用者さんが居る」と教えてくれたり、これまでにはなかった運動の広がりが見られるようになりました。

■利用者さんの体験と願い

 今回、語り部を引き受けてくれた六人のうち、DVD化した第一号の利用者さんは自分が体験した「東京大空襲」について語ってくれました。
 しっかりとした口調で命からがら烈火から逃げた事、人間が走って逃げるより早く炎が走る事、「自分の生まれ育った街が、紙が燃えるように灰になってしまう」と生々しく語りました。
 最もショッキングだったのは、川に逃げた人々が水上にも火が回って呼吸ができず、溺死してしまったこと。水から引き揚げた遺体は、焼け残ったコンクリート製の橋に山のように積みあげられ、その山から行方がわからない親族や友人をかき分けて探したという話です。
 「若い人へつなげたい思いはありますか?」との質問に、「こんな馬鹿な事はやめさせてあげてください」と語り部からお願いされ撮影を終了しました。

■こんなに切ない思いが…

 DVDには視聴する人がイメージしやすいように、語り部の言葉を補足する字幕スーパーを入れたり、実際に見たと思われるご遺体の山の絵や燃える川の絵などを入れるなどの工夫をしました。
 できあがったDVDは憲法学習大運動や青年ジャンボリーでも上映し、視聴した職員からは、「自分が知っている利用者さんがこんなに切ない思いを持っていた事に傷ついた」、「平和は平等ではないけど、戦争はより平等に国民を殺してしまうものだ」などの感想が寄せられました。

*    *

 今回のとりくみは期間限定で終わらせないことにしました。今後も語り部の貴重な語りを保存していき、制度教育研修などの中でも活用し後世につなげていく事が大切だと感じています。
  

◆石川・やすらぎ福祉会でも、職員が利用者さんや家族の戦争体験を聞きとり、小冊子を作りました。中には、父親が子どもの時に長崎で原爆に被爆した体験も語られています。

◆石川・やすらぎ福祉会でも、職員が利用者さんや家族の戦争体験を聞きとり、小冊子を作りました。中には、父親が子どもの時に長崎で原爆に被爆した体験も語られています。

(民医連新聞 第1609号 2015年12月7日)

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