Dr.小池の世直し奮戦記

2015年12月29日

Dr.小池の世直し奮戦記 日本にしかできない「贈り物」 テロと戦争の悪循環を断ち切ろう

 フランスのパリで同時多発テロが起きました。
 民医連の医師時代にパリを訪問したことを思い出します。フランスの研修医たちによる、医療制度改悪に反対するデモを取材して、『いつでも元気』の記事にもなりました。記憶の中で当時の美しい街並みがよみがえり、残忍なテロに心からの怒りがわきあがりました。
 いかなる理由があろうと、テロは許されません。断固糾弾します。

戦争でテロはなくせない

 テロはどうして世界に広がったのでしょうか。
 二〇〇一年九月一一日のアメリカ同時多発テロ。その時、私は国会の視察でカナダの首都オタワにおり、飛行機で帰国の途につくところでした。何の説明もなく飛行機がオタワに引き返し、空港のテレビでニューヨークのワールドトレードセンターが崩れ落ちる姿を見た時には、自分の乗った飛行機がテロに使われていた可能性もあっただけに背筋が寒くなりました。
 その後アメリカは、アフガニスタンで対テロ戦争を開始し、二〇〇三年にはイラク戦争に突入しました。無差別な空爆は多くの民衆の命を奪い、憎しみの連鎖はさらなるテロを引き起こし、ISのような集団を生み、世界中にテロを拡散させました。
 戦争ではテロはなくせない。これが歴史の教訓にほかなりません。

妻を亡くしたジャーナリスト

 今回のテロで妻を殺害されたフランス人ジャーナリスト、アントワーヌ・レリスさんのメッセージが、世界中に共感と感動を広げています。「金曜の夜、最愛の人を奪われたが、君たちを憎むつもりはない」という書き出しで始まる文章は、妻の遺体と対面した直後に書かれたそうです。
 彼は言います。
 「決して君たちに憎しみという贈り物はあげない。君たちの望み通りに怒りで応じることは、君たちと同じ無知に屈することになる」「私と(生後一七か月の)息子は二人になった。でも世界中の軍隊より強い」(「朝日新聞」より)。
 テロをなくすためには何が必要かを、このメッセージは示しています。何よりも大切なのは、国際社会の一致結束した取り組みです。テロ組織への資金や武器の流れを止めること、貧困や宗教差別などテロの土壌をなくすこと、シリアとイラクでの内戦を解決すること、シリアの人口の半分以上が難民となっており、難民の人権を守るための国際支援をおこなうこと。
 私たちが用意しなければいけない贈り物はいっぱいあります。

憲法九条の「贈り物」を

 戦争法の国会審議で安倍首相は、ISへの空爆に対する軍事支援を「法的には可能になる」と答えました。アメリカの要請にこたえて軍事活動に踏み切れば、日本が「憎しみの贈り物」をすることになってしまいます。これは最悪のことです。
 憲法九条にもとづき、武力によらない平和的解決のための外交努力を尽くすこと、それを世界に呼びかけることこそ、日本にしかできない「贈り物」ではないでしょうか。

いつでも元気 2016.1 No.291

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