MIN-IRENトピックス

2016年1月5日

いま声をあげる 何も言えない時代にさせないために 群馬PAG

 「戦争反対!」「憲法守れ!」の声が全国で沸き起こった昨年。若者、ママ・パパの姿も目立ちました。群馬県では、20~30代がPAG(PEACE ACTION from GUNMA)を結成。民医連職員も中心的に参加。戦争法成立後も活動を継続、夏の参院選で戦争法を廃止する政府を求めています。

 「安保関連法に学生やママたち、多くの国民が反対の声をあげました。私もその一人。世論調査では、国民の過半数が反対です。私たちの声をあきらめずに届ければ、戦争法は廃止できます」。
 一〇月二四日、高崎駅前に、白石知己さん(前橋協立病院・医師)の声が響きます。駅のデッキには、「NO 集団的自衛権」と書いた手製のプラカードを手に聞き入る男性も。この日は、戦争法成立後初めての行動でした。
 ベビーカーを押し、子どもの手を引いて参加した初参加のママ、隣県から来た男性、学生服の高校生も。弁護士や群馬大学の教員もスピーチしました。集会後、約一五〇人で駅周辺をパレードし、「戦争反対、憲法守れ」「選挙に行こうよ」「平和がいいんべ」「そうだんべ!」とコールしました。

黙っていたらダメ

 マイクを握っていた白石さんは産婦人科医です。これまでこうして積極的に行動することは避けてきました。「自分の意見を固定したら、多様な意見を聞くことができなくなると思ってたんです」。
 そんな白石さんが声をあげることになったきっかけは、七月一五日。衆議院で戦争法案が強行採決された日です。「採決直後、妻が『いま通ったよ』と知らせてきて、日本はやばいことになってるんじゃないか、って思ったんです」。PAGの活動に参加している妻の美里さんも、「『これで日本は戦争に突入するのか』と感じました。戦争って、急に爆弾がボン! と落とされて始まるんじゃなく、こうやってジワジワくるのかとゾッとした」と話します。
 はやる気持ちでいた時に、群馬民医連事務局の早水孝元さんから、「いっしょに動こう」と声がかかりました。「黙っているうちに世の中は変わってしまって、声をあげようとした時には、それすらできなくなっちゃってるんじゃないか。自由にものを言えない時代にしないために、いま声をあげないと」。県内の青年や大学の先生、若手弁護士とともに、実行委員会に参加しました。
 PAGの街頭デビューは八月九日。「PEACE SUMMER SOUL DEMO」と銘打った行動に一五〇人集まり、地元紙でも報道されました。
 「戦争法案廃案!安倍政権退陣! 国会10万人・全国100万人大行動」が呼びかけられた八月三〇日には、県内の有識者(学者、医者、弁護士)と安全保障関連法案に反対する共同行動を実施。シンポジウム後のパレードは沿道からの飛び入り参加もあり、二〇〇人に膨れ上がりました。
 国会での攻防が緊迫した九月は、二度の行動を組みました。参院での強行採決が狙われた九月一八日の緊急行動には二〇〇人超が駆けつけ、前橋協立病院から車も出し、職員も多く参加しました。
 「保守王国と言われてきた群馬。でも回を重ねるごとに参加者が増え、つながりが増えた。声をあげたい人はたくさんいるんだと勇気が湧きました。県内の都市部中心の行動から県内すべてに広げていきます」と早水さん。

これが「民主主義」

 勤務の合間を縫って行動に参加している青年医師もいます。小児科で研修中の宇敷萌さんです。宇敷さんにとって、平和を守る運動に参加することと、医師という職業は、最初から一つのものでした。医師をめざした高校時代にイラク戦争が始まりました。「衝撃でした。自分の願いは、『どんな人でも当たり前に幸せに生きられるように』ということ。その延長に、医師としてがんばることと、戦争に反対し平和を守ることがある」。
 八月のシンポジウムで母親として発言した医師も。白石さんの同僚・瀧口由希さん。二歳の娘の子育て中です。「あちこちでママの会ができたことに励まされ、母親として声をあげることに意味があると思った」と。「PAGができてから、院内の雰囲気が変わってきた」と瀧口さん。採決直前行動には、普段、集会などでは見かけない職員も多数。「医局で社会的な発言をする人は、今まで理事長や院長ぐらいでした(笑)。でも、白石先生がPAGの活動を報告するようになって、社会や政治の話がしやすくなったかも」。
 それを聞いた白石さんも、「政治の話をしたら、どん引きされるんじゃないかとか思ってた。空気を“読み”過ぎてたのは、自分の方かもしれない」。PAGの活動に参加してからは、「私も反対。何かできないかと思っていた」と声をかけられたり、「自分は賛成だ」という人と胸を開いて語り合ったり。「各自が意見を持ち、出し合い、互いを尊重しながら議論する。政治家任せでなく、私たちも声を上げていく。これが民主主義なんだと思います」。
 産婦人科の西出麻美医師は、PAGの行動がある日に、白石さんの待機を代わりました。西出さんは、「テロがあちこちで起きたり、嫌な空気が身近になっている気がします。医師が声をあげれば良くも悪くも注目される。こういう運動って盛り上がっても続けるのは大変。白石先生はしぶとくやってるなーと思う(笑)」とエールを送ります。
 “強行採決の一九日を忘れない”と一二月一九日も行動。「年明けにも予定しています。まだまだやります」と早水さん。
 「医療者は、患者を病気だけで判断してはいけない。人を線引きし、苦しむ人をかえりみない―。そんな社会を僕らは決して許さない」。医療者たちの決意です。

(丸山聡子記者)

青年職員たちは各地で―

 戦争法に反対する有志の動きは、各地で起きましたが、群馬のように民医連の青年職員たちが活躍した地域は他にもありました。そのうちのひとつが長崎です。

 【長崎発】長崎ではN―DOVE(エヌダブ)という、平和と民主主義を求める青年のグループが活動しています。民医連の青年職員も二〇一五年六月の結成から多数参加しています。以来、これまでにデモや集会に計五〇〇〇人を超える人々が主義・主張・イデオロギーの違いを乗り越え、「戦争反対」「安保法制反対」の一点で共に声を上げました。
 法案成立後も活動は続いています。一〇月一二日は長崎市内で「戦争法廃止! 若者緊急アピール」集会を開催。民主・共産・社民の野党議員が壇上でマイクを握り「安保法制廃案に向け全力を尽くす」とスピーチすると、参加者から「野党は共闘」「野党は手を取れ」のコールが起こり、それに応えて野党代表が互いに手をとりあう場面もありました。
 知恵とアイデアを寄せ合って、安倍政権の暴走を止め、民主主義、立憲主義の日本を取り戻すことを決意しています。

(國貞貴大、長崎民医連事務局)

(民医連新聞 第1611号 2016年1月4日)

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