声明・見解

2015年12月26日

【声明2015.12.25】「高浜原発3・4号機運転差し止めの仮処 分決定」の取消に強く抗議する

2015年12月25日
全日本民主医療機関連合会
会    長    藤末    衛

 福井地裁は 12 月 24 日、関西電力高浜原発3・4号機(福井県高浜町)の運転を差し止めた 4 月 14 日の仮処分決定について、関西電力の異議を認め取り消した。この決定は原発 の安全性と住民の人格権を無視し、安全性も責任の所在や避難計画も曖昧なまま原発再稼 働へと突き進める決定であり、断固認められず、強く抗議する。
 今回の決定は、4 月の仮処分決定を取消し、一転「新基準に合理性がある」とした。その 理由として「高浜3・4号機の基準値振動は余裕を持って評価してあり、各施設の安全性 は確保されている」、「再稼働しても住民の人格権が侵害される具体的危険性は認められな い」、「過酷事故の可能性が全く否定されるものではない」などとした。
 しかし、30km 圏内自治体に属する滋賀県高島市の同意を得ておらず、滋賀県の三日月大 造知事は「再稼働を容認する環境にはない」との考えをあらためて強調した。京都府の山 田啓二府知事も「京都府が同意のプロセスから外れているのは遺憾だ」と述べている。
 また今回の異議審では、原発の耐震設計の要となる「基準地震動」の策定手法が争点と なった。この「基準値振動」について 4 月の決定では原子力規制委員会の新規制基準自体 を「合理性を欠く」と判断したが、今回の決定は関電の主張を受け入れた。しかし、関電 はこの 10 年足らずの間に 4 つの原発で基準値震動を超えたケースが 5 回あるとした指摘に、 まともに反論できていなかった。
 今回の決定は「過酷事故が起こる可能性が否定されるものではない」と言いながら、住 民の不安と向き合わず、関電と規制委員会に最新の科学技術を反映し「高いレベルでの安 全性をめざす努力」を求めはしたが、これは両者に責任を転嫁したにすぎない。
 最新の科学技術に照らすだけなら、裁判官は専門家である規制委員会の判断を追認する しかない。福島第一原発事故を経験した裁判官に求められるのは、科学技術では明らかに なっていない部分を見通し、現在の基準の合理性を判断する姿勢である。
 私たち全日本民医連は、国民の過半数が原発の再稼働に反対する一方で、政府と電力会 社、地元自治体が一体となった原発回帰の動きが加速することに対して、司法は福島原発 の過酷事故の実態を真摯に受け止め、国民の声に耳を傾けることを強く切望する。

以上

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