いつでも元気

2016年2月29日

いきいきシニアライフ(3) 現代葬儀事情 その2 高額な請求に驚くことも あらかじめ見積もりを

徳田五十六 ライフデザイン社会保障研究会代表ファイナンシャルプランナー

徳田五十六
ライフデザイン社会保障研究会代表 ファイナンシャルプランナー

 遺族は悲しみのなかでも、直後から葬儀の準備をしなくてはなりません。「よく分からないから」と、葬儀社に言われるままに葬儀全般をお願いする傾向がありますが、後から高額な請求を目にして後悔する人が少なくありません。
 「葬儀社の言う通りにしたら、三〇〇万円の請求が来てびっくり、もっと早く生協の『葬儀講座』や『終活講座』を聞いておけばよかった」と、私の講座を聞いた後に嘆く人もいます。
 最近は葬儀社間の競争も激しく、低価格を売り物にする業者もいますが、遺族の情報不足を利用して多額の費用を請求する事例は後を絶ちません。元気なうちに葬儀の実情を学び、自分らしい葬儀の方法を「エンディングノート」など文書に残しておきましょう。
 葬儀に関して守るべきことを表1にまとめました。このことを踏まえたうえで、葬儀の準備を時系列で紹介します。また、注意点を()で記します。

葬儀社の選び方

 地域生協や農協、葬儀社には、「葬儀コーディネーター」がいます。葬儀をおこなう際には、まず自身や家族の希望を葬儀コーディネーターに伝え、費用の見積もりを出してもらいましょう。
 病院や警察から紹介された業者といきなり契約はせず、二、三件相談してから納得のいく葬儀社を選ぶべきです。葬儀の依頼前と打ち合わせ終了時には、見積もりをとることが肝心です。
)葬儀費用の積立金を奨励する葬儀社には要注意です。積立金に上乗せをした金額を請求したり、途中で解約しても積立金がほとんど戻らないなど、苦情が頻発しています。

遺体の安置場所と搬送依頼

 (1)既に葬儀をお願いしている葬儀社に相談して安置場所を決め、病院等に待機している葬儀社には「搬送だけ」と伝えます。さもないと葬儀一式をお願いしたこととなります。また、事前に「搬送だけ」と言わずに後から葬儀を断れば、高額な請求が来ることもあります。
 (2)死亡届(死亡診断書)を役所に提出し、埋葬許可証を受け取ります(葬儀社が代行します)。火葬と埋葬は死後二四時間以内は禁じられ、また、墓地以外には埋葬できません。

葬儀の概要と日程、会場

 地域によって葬儀に関する風習や考え方が異なります。遠方の親族には丁寧に説明して、遺族の考え方を理解してもらいましょう。元気なうちに葬儀内容をエンディングノートに書いておけば、さまざまなトラブルを防ぐ力になります。
 (1)お棺の種類(布張棺や桐棺、木棺など)を選び、衣装・骨壺・写真を決め、納棺の儀式を済ませます。
 (2)宗教葬か無宗教葬、香典を受けるか否かを決め、希望する祭壇を葬儀社の割安のセット(表2参照)の中から選択します。セット費用は祭壇以外は大きく変わりません。なお、檀家寺にお墓があれば宗教儀式をしないと埋葬が拒否されるので、注意が必要です。
 最近は高価な生花を使う花祭壇を選択する人が増えています。献花の分を祭壇の生花に入れれば費用を節約できます。献花をくださった方の名前を告知版に掲載すれば失礼にはなりません。
)葬儀の打ち合わせの途中で、親族が「これでは、故人がかわいそう」と祭壇や位牌などの選択に苦言を呈するケースがあります。これを上手に営業に利用して高額な内容に導く業者もいます。エンディングノートがあれば「本人の遺志だから」と親族内のトラブルを抑えることができます。
 (3)通夜・葬儀・火葬・初七日のうち、実施する項目を決めます。火葬以外は法的には実施しなくても構いません。
 (4)葬儀の概要が決まれば、葬儀社が会葬の参加予定人数をもとに葬儀会場と火葬場を確保したうえで日程を調整します。会場は無料の場合もありますが、交通の便や料金などで判断しましょう。
 事前に会葬のおおまかな参加者数が分かれば、費用の節約になります。人数の見当がつかないため、「通夜振る舞い」を大量に発注してしまい、割高になる例も少なくありません。
)都市部では最近、火葬場に空きがなく、火葬まで一週間以上かかることもあります。葬儀社の中には高額なエンバーミング(遺体の薬物保存)を勧める業者もいます。冷凍保存をしておけば、一週間くらいでは薬物保存の必要はありません。

お寺との打ち合わせ

 「お寺と葬儀の準備で相談をしたら、『戒名代は二〇〇万円』と言われて仕方なく払った。後から『そんなに払わなくてもよかったのに』と皆に言われて、事前に知っていればと悔やんでいる」という方も少なくありません。
 戒名代はもともとはお布施ですから、値段や相場はありません。あらかじめ、こちらの予算額を伝えるようにしましょう。多くの宗派で二〇~四〇万円ですが、なかには法外な請求をする寺もあります。その時は宗派の総本山に相談をするとよいでしょう。
 (1)檀家寺に墓がある場合は、遺族がお寺に連絡をして、葬儀の日程や会場を調整します。
 (2)戒名・お経代・お車代の費用の打ち合わせをおこないます。決めておいた予算額でお願いすることが大切です。
)「戒名はいらない」「本名でかまわない」という人も増えています。本人の意思を尊重するとともに、お寺と話し合ったり親族の考え方にも配慮しましょう。
 次回は祭儀当日の運営方法や、費用についてお伝えします。


表1 葬儀に関して守るべきこと

・医師の死亡診断書を添え、役所に死亡届を出す
・火葬・埋葬許可証を役所から受け取る
・死後24時間以内は火葬・埋葬することはできない
・「墓地」以外に埋葬してはならない


表2 葬儀費用

■葬儀一般に必要な費用
(1)セット(棺・祭壇・位牌・花・供物・仏具・焼香・受付簿・礼状・骨壺・霊柩車)
(2)病院などからの搬送費
(3)火葬料
(4)接待飲食代(通夜振る舞い・精進落とし)
(5)斎場利用料
(6)返礼品
(7)寺院僧侶の謝礼 
■特別な事情によってかかる費用
(1)遺体の保管費用(火葬場に空きがないなど)
(2)会葬参加者の送迎費用や宿泊費用
(3)受付用のテントや机(自宅で葬儀をする場合など)
(4)メモリアルコーナーを設置する場合や会場の演奏費
(5)エンバーミング(遺体の長期保存)

いつでも元気 2016.3 No.293

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