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2016年3月8日

被災地発 宮城 県民医連が仮設住民調査「支援まだまだ続ける」

 被災から五年になります。今号は東日本大震災の現状を伝える特集号です。一面は宮城。県民医連が仮設住宅の住民調査を行いました。いまも仮設での暮らしを続けている被災者には「災害公営住宅の家賃や水光熱費が払えない」「仕事が無い」など、困難を抱える人が多いとみられます。仮設を退去する期限の迫った地域もあり、行き場のない人が出ることも懸念の一つです。

(土屋結記者)

 宮城県民医連は、昨年七月に県連内に「復興支援会議」を立ち上げました。各事業所の支援活動をささえ、推進することが目的です。このチームを中心に全県職員で調査しました。
 一一月に坂総合病院の診療圏である塩釜・多賀城両市と七ヶ浜町、三自治体のプレハブ仮設を訪問。計二日、のべ一一八人で四三五軒を訪ね、一五〇軒で聞きとりました。調査項目は、世帯構成、健康保険の種類、被災前の住まいと被害状況、震災前後の仕事、今後の住居の予定、疾病、医療費減免が適用されているかどうか、生活上感じている不便・不安などです。

仮設に残る人たちは…

 調査の結果は予想通り、仮設に住む被災者は被災者の中でも深刻な状況であると示すものでした。
 高齢世帯(六〇代以上)が七五%。独居か二人暮らしが約七〇%。震災前の住居は持ち家が多く、ほとんどが「全壊」か「大規模半壊」でした。しかし、災害公営住宅へ申し込む資格の無い「半壊」も一割。この層は自力で次の住まいを探さねばなりません。
 次の入居先が決まっていたのは八〇%。しかし地域差も大きく、塩釜市は半数近くが未定。災害公営住宅の建設の遅れで、退去期限が一年延びたためとみられます。
 六〇%が医療費免除の適用でしたが、対象外や打ち切られたという人がそれぞれ二〇%。また「無職」が七〇%で経済的困難が予想できました。自由記載欄でも、仮設の被災者が多くの問題を抱えていることが見えました(別項)。 「仮設に残っている」のではなく「仮設から出られない」のです。

今後は負担増の連打

 「経済状況が厳しい中、医療費の免除制度はまさに命綱です。さらに住まいに関する支援も必要。安心して暮らし続けられる基盤が足りません」と県連の坂田匠事務局長。「今後も復興には外せない課題」と支援会議事務局次長の金田基さんも強調します。
 引っ越し費用や仮設では不要だった家賃も転居後は新たな負担になります。壊れた自宅のローンが残っている人もいます。さらに新年度に医療費や介護サービス利用料免除の縮小や打ち切りを行う自治体もあり(助成継続を表明したのは現在、県内で八自治体のみ)、被災五年を過ぎて一気に負担がおし寄せることに。

 こんな問題も。共同組織では、被災者の孤立を防ごうと仮設住宅で「お茶っこ会」などの場をつくり、相談にものってきました。被災者をささえてきた実感があります。仮設の集約や災害公営住宅への転居がすすみ、参加者は減りましたが「一人になっても開きたい」とみやぎ東部健康福祉友の会常任幹事の中川邦彦さん。ところが災害公営住宅の集会室などは使用料が発生、参加者が負担するのか? ということになります。

さっそく自治体要請へ

 県連では調査結果に基づき、被災者や地域住民とも協力し、自治体への働きかけを強化しています。二月一七日に塩釜市、一八日には七ヶ浜町に要請しました。
 調査に参加した職員からは「災害公営住宅も含めて、支援活動をつづけなくては」との声が。「被災者のための調査ですが、参加した職員には被災者の状況から社会の矛盾に気づく機会にもなった」と、支援会議委員長を務める宮沼弘明県連会長は語りました。仮設を出る被災者が増える中、必要な支援も変わります。半年後に、災害公営住宅での訪問調査を検討中。県内でも地域で被災状況が違うため、事業所ごとに意識差も。風化させないために県連としてのとりくみにする考えです。


 災害公営住宅に入った患者さんは
▼震災直後、本紙が取材したKさん(81)に再取材できました。自宅アパートで津波に襲われましたがなんとか生還。14年11月に災害公営住宅の6階に入れました。「津波のトラウマで当たった部屋が低階なら入らなかった」と。家賃は約2万円。買い物も病院も不便はないが「人付き合いが無くなり残念。住民は会釈する程度。ひとり暮らしなので、何かあった時が不安」。
▼稲田房市さん(75)は、自宅1階を津波にやられました。寝たきりの妻はその後病院を転々としています。稲田さんも入退院を繰り返しつつ仮設で暮らし、昨年4月に災害公営住宅へ。「隣人のこともよく分からない。免除打ち切りで妻の医療費がかかりますが、なんとか暮らしています。5年も経つのだから『助けてけろ』とは言えないということでしょうか」


 調査の自由記載欄から(聞き取り)
●60代女性、娘と二人暮らし:災害公営住宅に入居が決まったが、老健に入所中の母が亡くなれば、退去しなければならない。何とかならないか
●男性、独居:まだ災害公営住宅に申し込んでいない。耳が遠く近くに相談できる人がいない様子
●80代女性、息子(無職)と二人暮らし:母親の年金で暮らしており食べるのがやっと。今の仮設はくじで決まり、知り合い無し。体調悪く歩くのもおっくう。死にたくなった
●女性、夫と子の三人暮らし:次の住まい見つからず。「『半壊』は自分で何とかしろ」とはひど過ぎる。災害公営住宅に入りたい
●男性、独居:震災前に住んでいたアパートは自室だけ全壊し、現在は直され使用されている。そのため災害公営住宅に応募できない。納得できない
●ほか:訪問した隣家の新聞がたまっており、様子を聞くが「交流なく不明」と。手押し車や杖もあり

※気になった世帯については再訪を検討

(民医連新聞 第1615号 2016年3月7日)

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