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2016年3月8日

2016年度診療報酬改定(医科・歯科)特徴は― 大幅マイナス経営にまた打撃

 中央社会保険医療協議会が二〇一六年度診療報酬改定の答申を出しました。診療報酬は、事業所や医療者のみならず、患者さんの療養にも影響します。改定の特徴と問題点は―。医科は全日本民医連・内村幸一事務局次長、歯科は中田幸一理事の解説です。

医科 事業所と患者に困難強いる

前回上回るマイナス

 今回の改定は「診療報酬本体を〇・四九%引き上げる一方、薬価・材料の通常改定と薬価の市場拡大再算定で合計一・五二%引き下げ、全体で〇・八四%のマイナス改定」と報じられました。しかし実際は、薬価の特例市場拡大再算定の導入や後発品の薬価引き下げや使用促進、大型門前薬局の調剤報酬引き下げ、湿布薬の使用制限などの引き下げもされます。厚労省はこれを改定率に反映させていません。これらを含めた改定率を推計すると全体でマイナス一・四三%、前回(一四年度)を上回る大幅なマイナス改定です。
 消費税増税や医療制度改悪の影響を受けて医療機関の経営は急激に悪化し、深刻な事態に陥っています。連続マイナス改定は、医療崩壊を加速させ、医療の安全にも影響を与えます。

「在宅へ」強制

 急性期の病床を削減し、「在宅へ」という流れがさらに強まりました。医療・介護提供体制の「二〇二五年モデル」を見据え、医療機関の機能分化や在宅へのシフトを促す内容です。
 大きな問題の一つが、七対一入院基本料病床の重症度、医療・看護必要度の要件の厳格化による削減です。事業所では、七対一にとどまるのか、一〇対一や地域包括ケア病棟などに再編するか? という議論が必要になります。
 また、地域包括ケア病棟の見直し、病棟群ごとの入院基本料の算定を可能にすることなどで七対一病床から撤退させるための様々な移行措置がとられています。前回改定で、民医連の中でもいくつかの病院が七対一病床から一〇対一に移行したり、地域包括ケア病床を導入するなどの手立てをとりましたが、その流れがより「強制的に」促進される可能性があります。
 退院支援にかかわる加算も重層化、急性期から慢性期にいたるまで各段階で「病院から在宅へ」の流れが今まで以上に強引にすすめられています。

たたかいと対応

 マイナス影響を受けるのは、次のような病院です。
・回復期リハビリ病棟でアウトカム(成果)が基準に満たない病院
・医療療養病床で医療区分の変更の影響を受ける病院
・医療療養型2で医療区分2、3の患者の割合が低い病院
・障害者病棟で脳卒中による意識障害患者が一定数を占める病院、など
 地域でのポジショニングや病院の役割・機能とあわせ、戦略的にどのような病床機能を担うのかが問われています。
 在宅に関わる分野では、在宅時医学総合管理料をはじめ、算定の考え方が大きく変えられました。患者層や地理的なことも含め、条件次第で大きな減収になる可能性もあります。
 医療機関と患者に矛盾と困難を強いる改定の見直しと、医療の安全・質を担保するに足る診療報酬の適正な評価を求める声を広げるとともに、医療も経営も患者も守る視点で、診療報酬改定への対応が必要です。


診療報酬…医療保険が医療機関に支払う治療費。一点一〇円で医療行為の点数を決めている。医療内容に応じ加算がつくなど、政府が医療内容を操作する手段にも。改定は隔年。


歯科 医科歯科連携強化要望実った部分も

 歯科についてはまだ不明な点が多く、算定の適応条件などが疑義解釈等で通知された後に再検討する必要がありますが、大きくは次のような特徴があります。

連携促す内容

 歯科の二〇一六年度改定は、医科歯科連携、在宅医療の推進、強化型かかりつけ歯科医の設定など超高齢社会と地域包括ケアの推進を本格的に促す内容になっています。
 周術期口腔機能維持関連の要件の緩和や対象病名の拡大、栄養サポートチームへの歯科医師の参加や口腔外科標榜病院への外部歯科医師の往診を可能としたこと、包括化されたとはいえ口腔機能の維持のためのとりくみが訪問診療料の中で評価されたなど、医科歯科連携への推進力になっていくと考えられます。

運動の成果も

 また、金属アレルギー患者への大臼歯への非金属治療が保険で一部可能になったことや小臼歯への前装冠の適応拡大、「特別の関係」にある医療・介護・福祉施設への訪問診療の評価の見直しなど、これまで民医連歯科部が「保険でよい歯科医療を」の運動として国民の医療要求の実現にとりくんできた中身が一部反映されました。また、歯科診療所に歯科技工士を配置している場合の即日義歯修理の点数(歯技工)の改善や歯科衛生士の活動の評価なども一定改善されています。
 一方で「かかりつけ機能強化型」歯科医院の導入は、医療機関に階層化を持ち込み、地域に密着して歯科医療を守るため努力している小規模診療所にとってはハードルが高いものとなっており、今後の動向に注意が必要です。

(民医連新聞 第1615号 2016年3月7日)

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