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2016年3月31日

human story 
「人生、オンもオフも満喫したい」 
郡 隆之さん(群馬・利根中央病院 医師)

病室で手術後の患者さんに声をかける郡医師

病室で手術後の患者さんに声をかける郡医師

 大自然に囲まれた群馬の利根中央病院。病院運営の危機を乗り越え、昨年九月に新築移転して再スタートを切りました。同院外科部長の郡隆之医師をたずねました。

文・宮武真希(編集部)/写真・酒井猛

 多忙の合間を縫っての取材中、郡医師は病院内で患者さんやスタッフとすれちがうと、必ずあいさつを交わします。写真撮影の協力を申し出て、撮り終わった時も「ありがとう」と声かけ。大事だとわかっていても、なかなか実践できることではありません。
 北海道名寄市出身。冬には気温がマイナス三五度まで下がる土地で生まれ育ちました。医学部二年のときに、父親が直腸がんで手術を受けたことが「どんな医師を目指すのか」ということを本気で考えるきっかけになりました。当時の父親の主治医は名医と言われる人。「腕は良かったと思うのですが、対応が非常に悪かった。そのとき『こんな医師ではない医師になりたい』と思った」と言います。
 同時期に医学部の実習で利根中央病院と出会います。他にもいくつか病院をまわりましたが、患者さんに親切で「病気だけでなく社会的な背景も含めて患者をとらえる」という先輩医師の話に共感。スタッフもあたたかく「居心地のよい病院だな」と入職することを決めました。

挑戦、挑戦!

看護師さんと情報交換

看護師さんと情報交換

 好きな言葉は「人生ノーアタック、ノーチャンス」。常にチャレンジすることが大事だと考え、行動しています。医学博士のほか、指導医・専門医・認定医など一九の医療関連の資格を持ち、ERASというヨーロッパで開発された手術後の管理方法の実践に挑戦して、日本の学会で初めて発表しました。
 現在挑戦しているのは、病院にいなくてもCTなど画像データを見て診断できる遠隔医療のシステムづくり。ほかにも、医療機器メーカーとの共同で、ベッドの下に置くだけで患者さんの心拍数と呼吸数が計測できる非接触型モニターを開発中です。
 「ぜひこれから入職する若い医師の方々にも、いろんなことにチャレンジしてほしいと思うんです。民医連にいると資格がとれないとか研究ができないと思っている人がいるかもしれないけれど、そんなことないですよ」。
 チャレンジするために大切なのは“仲間をつくること”だと言います。「チーム医療という言葉があるくらいですから、医療の現場は仲間ぬきに何かをするなんてありえませんよね。仲間ありきの医療であり、人生だと思っています」。

危機を乗り越えて

 利根中央病院は七年前、約四割の医師が退職し、運営が危ぶまれました。群馬大学が同院に派遣していた医師を大学側の医師不足を理由に「引き上げる」と通告したことが発端でした。郡医師は当時、外来や入院の規模を縮小しながら運営を続ける病院を必死にささえた一人です。「次々に医師が退職していき、このまま病院はつぶれるんじゃないかと、職員も患者さんも動揺していました。患者さんからは会うたびに『先生は辞めないよね』と聞かれて…。自分を頼ってくれる患者さんを安心させたくて『絶対に辞めません、大丈夫ですよ』って言っちゃって。頼れる仲間もいますからね、自分は辞められないと思いました」。
 同院には、全国の民医連から一年間で九七人の医師が派遣され、再生への足がかりとなりました。その後、新病院建設へと向かったのです。「建物が新しくなって機能も良くなりました。気持ちが上がりますね。これからもこの地での医療をがんばっていきたいと思います」。

魅力ある組織づくりめざして

 多忙な医療現場。そのうえ、ここ数年は病院の再生、新病院建設と続き、ほとんど休みがとれませんでした。
 現在四六歳、「外科医としてバリバリ手術ができるのは、あと一〇年かな」。後身の育成も課題です。そのためには「人生のオンもオフもエンジョイできる、人が集まる魅力ある組織づくりが目標」と目を輝かせます。今年度はあらたな勤務形態を取り入れて、連休の取得に挑戦です。
 多趣味で「年に二度は行く」という利根川でのラフティングもその一つ。自身で撮った映像を見せてくれながら「もうヤバイでしょ、激流で。いやぁ、おもしろいんですよ。今度ぜひいっしょにどうですか? 僕、ご案内しますよ」。

いつでも元気 2016.4 No.294

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