MIN-IRENトピックス

2016年4月5日

相談室日誌 連載408 「使える制度もっと」無低診を通じて感じること (山形)

 Aさんは、兄夫婦・甥と四人暮らしの五〇代の男性です。中学を卒業後、数年間県外で働いた後で実家に戻り、母親が亡くなってからは仕事には就かず、車庫の二階で生活していました。
 そんなAさんが、食欲不振・歩行困難で急性期病院を受診。ウェルニッケ脳症と診断され、そのまま入院になりました。治療で徐々に症状は改善しましたが、リハビリとサービス・環境調整が必要になり、転院先を探すことに。当初は自宅近い病院への転院が検討されていましたが、経済的問題があり、無料低額診療事業(無低診)を行っている当院に「制度を利用できないか?」と、急性期病院のSWが相談してきたのでした。
 Aさんは無収入。兄は六〇歳を迎えて退職し、再就職先を探しているところでした。兄嫁と甥には知的障害があり、障害年金を受けています。Aさんも入院後に療育手帳を取得。兄も知的障害が疑われていました。世帯の金銭管理はうまくいかず、税金や保険料を滞納していました。
 兄夫婦と面談し、経済面以外にも多くの問題があると分かりました。転院に向けて当院の無低診を申請し、同時に国保四四条減免の申請を急性期病院のSWに依頼しました。
 Aさんが当院へ転院して三週間後、国保法四四条の一部負担金全額免除が決まりました。医療費は四四条で、食費と病衣代は無低診を利用し、自己負担を無くすことができました。ところが、Aさんの住む自治体の国保法四四条は「入院前に申請する」という規定。最初に入院した急性期病院では適用されず、世帯の困窮は変わらないのに自己負担が発生してしまいました。
 国保法四四条減免の規定は自治体ごとで違います。「入院前に申請を行わなければならない」という条件は、ギリギリまでがまんし、切迫した状況で病院に来ることが多い経済的に困窮している人たちを考えると、現実に即していません。
 民医連を中心に無低診が広がる一方、他の公的制度になかなかつながらないというジレンマを感じることも多く、困った時に当たり前に使える制度に変えていく必要性を強く感じます。

(民医連新聞 第1617号 2016年4月4日)

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