くすりの話
2004年10月1日
くすりの話 74 新薬の治験とは
Q:“治験”参加者募集の広告をよくみかけます。
A: “治験”とは、動物実験などをへて開発された新薬を、実際の「人間」に使って安全かどうか、効くか効かないかを確かめる臨床試験のことです。以前は治験 参加者の募集は、実施医療機関をとおして行なわれていましたが、参加者がなかなか集まらないので、2000年から治験参加者を新聞やインターネットで広く 募集することを厚生省(当時)が認め、新聞紙上でも広告を見かけるようになりました。
治験自体は、新薬が日本で承認されるために必要なステップです。しかし、日本の治験の水準は低く、承認した新薬があとで効かないことがわかって承認が取 り消されたり、欧米に比べて治験参加者の人権や安全を守る姿勢が弱いなど問題がありました。
1997年、治験参加者に十分説明すること、文書での同意が必要なことなど人権保護の規定も加えて、新しい基準の治験制度になりました。
2003年には、厚生労働省自ら国立の医療センターや特定機能病院などの医療機関を結んだ大規模な治験のネットワークをつくりました。医療機関の連携で 治験参加者を紹介しあうしくみです。医薬品の提供は製薬会社が行ないますが、03年度で6億5千万円の経費を国が負担しています。
Q:治験はどのようにおこなわれますか。
A: 治験は、すでに効果が確認されている薬や、偽薬(有効成分を含まず治療効果のない薬)との比較で、患者に対して効果を確かめるほか、健康な人での試験も 行なわれます。患者からすれば、病気を治したいと治験に応じているのですから、効かない薬を投与される場合があることも、事前に十分説明されなければなり ません。
治験を実施しているある病院の場合、製薬会社から経費と報酬を受けとり、患者に交通費などの名目で、通院1回につき7千円を渡しています。
Q:病気が治れば治療費も助かりますが、問題はないのでしょうか。
A: 新薬には画期的な治療効果があるかも知れませんが、当然副作用のリスクがあります。治験が原因で健康被害を受けた場合、同意文書には一応補償について決められていますが、製薬会社や医療機関が因果関係を認めない場合は、補償されないなど、きわめてあいまいです。
治験参加者の個人情報の保護に十分配慮がされているかとか、相談窓口が十分整備されていないこともあるなどの指摘もあります。
また、いまでもかかりつけの医師に頼まれると断り切れないということがあるようです。途中でやめたい場合やめられるかなど、治験を受ける場合でも医師に十分確認しておくことが必要です。
治験への参加は、新薬開発の意義がわかってあくまで自主的に行なうものです。安易な治験応募は禁物といえます。
いつでも元気 2004.10 No.156
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