くすりの話

1997年1月1日

くすりの話 漢方薬~上手な使い方

Q:月経痛がひどく悩んでいます。いい漢方薬がありますか?

A:漢方医学では病気の原因を「気・血・水」の概念でとらえる方法があります。
「血」は血の滞(とどこ)りのことでお血(おけつ)といい、月経痛などの月経困難症や月経不順、打撲などの症状として現れます。「水」は水の鬱滞(うった い)で水毒(すいどく)といい、浮腫(ふしゅ)や多尿、貧尿、喀痰など多くの症状を現します。「気」は血や水を動かす力があるとします。

お血を治す生薬として当帰(セリ科のトウキの根)、川きゅう(せんきゅう)(セリ科のセンキュウの根茎)、桃仁(とうにん)(桃の種子)、牡丹皮(ぼたんぴ)(牡丹の根皮)などがあります。
水毒を調整する生薬として茯苓(ぶくりょう)(茸の一種)、沢瀉(たくしゃ)(サジオモダカの塊茎)、朮(じゅつ)(オケラの根茎)、猪苓(茸の一種)などがあります。
「気」を活発にする生薬としては、桂皮(けいひ)(にっきの皮)や蘇葉(そよう)(シソの葉)、厚朴(こうぼく)(ホウノキの皮)などがあります。
お血や水毒の治療は漢方薬がよく効く分野です。
月経困難症などに使われる駆お血剤の代表として「桂枝茯苓丸」(けいしぶくりょうがん)(表1)があります。桃仁と牡丹皮が血液の停滞を散らし、桂枝がその作用を強化し、芍薬は筋肉の緊張を緩和させ、痛みをとります。茯苓には利水効果があります。

表1 桂枝茯苓丸に含まれる生薬
以下のものを「ハチミツ」で丸剤100個とする。
ケイヒ(桂皮)末(粉末) ………………2.0g
シャクヤク(芍薬)末 ………………2.0g
トウニン(桃仁)末 ………………2.0g
ブクリョウ(茯苓)末 ………………2.0g
ボタンピ(牡丹皮)末 ………………2.0g
効能・効果
体格はしっかりしていて赤ら顔が多く、腹部は大体充実、下腹部に抵抗のあるものの次の諸症:子宮並びにその付属器の炎症、子宮内膜炎、月経不順、月経困難、帯下、更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、肩こり等)、冷え性、腹膜炎、打撲症、痔疾患、睾丸炎

血液の停滞を散らし、桂皮がその作用を強化し、芍薬(しゃくやく)は筋肉の緊張を緩和させ、痛みをとります。茯苓は利水効果があります。
もっと体力がなく、冷えが強い場合は「当帰芍薬散」(とうきしゃくやくさん)(表2)を使いますが、利水剤が3種類入っています。漢方医学では水の鬱滞が冷え性をおこすと考えるためです。

表2 当帰芍薬散に含まれる生薬
以下の用量を1日3回食前に酒で服薬する。
シャクヤク(芍薬)末 ………………2.2g
ビャクジュツ(白朮)末 ………………0.6g
タクシャ(沢瀉)末 ………………1.1g
ブクリョウ(茯苓)末 ………………0.6g
センキュウ(川きゅう)末 ………………1.1g
トウキ(当帰)末 ………………0.4g

逆にもっと急性症状か激しくのぼせて便秘しやすいような「証」(しょう)の場合は、「桃核承気湯」(とうかくじょうきとう)を使います(表3)。大黄(だいおう)(タテ科のダイオウの根茎)と芒硝(ぼうしょう)が便秘を治し、のぼせを治めます。ほかにも種々ありますが、この3種類が月経困難症の代表的な漢方薬です。
便秘を治し、のぼせを治めます。ほかにも種々ありますが、この3種類が月経困難症の代表的な漢方薬です。

表3 桃核承気湯に含まれる生薬
以下の用量をせんじて1日3回分にわけ、食前に飲む。
トウニン(桃仁) ………………4.0g
ケイヒ(桂皮) ………………2.0g
ダイオウ(大黄) ………………0.5g
カンゾウ(甘草) ………………2.0g
無水ボウショウ(芒硝) ………………2.0g

Q:漢方薬を処方してもらうために、どうしたらいいですか?

A:病院で処方してもらうには、率直に問い合わせてみる必要があります。民医連の産婦人科では、多くの病院で処方してくれると思います。
 市販薬の場合は、一連の漢方薬をそろえている薬局で買うとよいでしょう。多くの場合は、継続的に漢方薬の勉強をしている薬剤師がいて、「証」に合わせて選んでくれるでしょう。
 しかし、「大正漢方胃腸薬」「カコナール(葛根湯が主成分)」などは、「証」とは関係なく販売されるので一般的な市販薬と同じと考えた方がよいでしょう。

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