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2016年8月31日

安心して住み続けられるまちづくり(32) 交流深まる地域の“銭湯” 富山

健康体操サークルのみなさん

健康体操サークルのみなさん

 富山市内で老人保健施設や特別養護老人ホームなどの介護事業を展開する「とやま虹の会」では、廃業した銭湯の一角を借りて「サロン梅の湯」(以下、梅の湯)を住民とともに運営しています。住民同士の交流の場として、地域に愛される梅の湯を取材しました。

文・寺田希望(編集部)/写真・五味明憲

 富山駅から車で二〇分ほど、海沿いの水橋地域に「梅の湯」はあります。左右二つある入り口と室内に漂う懐かしい木の香りが、ここが以前、銭湯だったことを教えてくれます。
 取材に訪れた日は、週に一度の「健康体操サークル」の活動日。富山協立病院(富山医療生協)の染谷明子リハビリ科長を講師に、一五人ほどの参加者が笑いヨガをしていました。
 ボランティアで梅の湯の管理人をしている地橋笑子さんは「皆さん元気でしょ。最初の頃は家から梅の湯まで三〇〇メートルほどの距離が歩けなくて、送迎をしていた人もいるんですよ。でもサークルに通い出して二、三カ月経つと、自分で歩いて来られるようになってね」と嬉しそうに話します。

サービスから切り離された住民

 梅の湯の前身は、二〇〇〇年に開設したとやま虹の会の生きがいデイサービス事業です。同年に介護保険制度が始まると、それまで受けていたサービスを受けられなくなる人が出てきました。今までは夫婦で通っていたデイサービスに、介護保険の認定を受けていない妻が通えなくなり、日中一人で過ごさなければならないことも。とやま虹の会ではそんな人たちのために、市の委託事業として廃業した銭湯で介護予防の生きがいデイサービス「梅の湯元気塾」を始めました。
 しかし富山市からの委託費は年々減っていき、事業として継続していくことは困難に。二〇一一年に利用者の「居場所を残してほしい」という強い要望に応えて、事業ではなく、地域の人たちが共同で運営するたまり場として継続することを決めました。

自分たちでつくる居場所へ

 梅の湯は事務局をとやま虹の会が務め、それ以外の運営は地域住民による運営協議会がおこなっています。「元気塾の時につながりのあった民生委員や町内会の人たちに声をかけて、運営協議会を立ち上げました」と話すのは、とやま虹の会職員の松尾守さん。
 民生委員が運営協議会に参加することで、地域で閉じこもりがちになっている人を梅の湯に誘いやすくなりました。また、駐車場がなかった梅の湯は、はす向かいの家を取り壊す際に、敷地を借りられないか町内会に相談。年間三〇〇〇円の町内会費を支払うことで、借りることができました。
 地橋さんは住民主体で梅の湯を運営することで、「自分たちの居場所として、地域の人が支え合っている。自分たちで梅の湯を盛り上げようという意識が生まれてきています」と話します。現在、梅の湯にはサークルが一一あり、月曜から土曜まで毎日活動しています。施設の開閉は管理人の地橋さんの担当ですが、サークルの準備や片付け、掃除などは参加者が協力しておこないます。
 囲碁サークル代表の山中昭さんは「公民館で囲碁をしている人を梅の湯のサークルにも誘ったんです。参加してくれた人は『梅の湯は楽しいから』と、友だちを誘ってまた参加してくれました」と、地域のつながりを活かした広がりを教えてくれました。

世代間交流も活発に

 サークル以外にも梅の湯には年四回、児童館から「梅の湯たずね隊」がやってきます。元気塾の頃から続いているイベントで、小?中学生の子どもたちがやってきて、利用者といっしょにおやつ作りやオセロなどを楽しみます。
 児童館の子どもも楽しみにしてくれていて、「次はいつ?」と聞かれることも。「世代間交流を大切にしています。児童館でやる七夕やクリスマス会に梅の湯の利用者が参加したりします」と松尾さん。児童館と梅の湯で、お互いに宣伝をして地域を盛り上げています。
 「サークルの垣根を越えてもっと交流していきたい。この辺は温泉が多いから、日帰りバスツアーがいいねって言っているんです」と山中さん。さらに交流を深める企画を検討中です。

いつでも元気 2016.9 No.299

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