いつでも元気

2003年12月1日

特集1 元気を運び、「人間大好き」にしてくれる 『いつでも元気』5万部達成記念座談会

■出席者
     
松尾 泉さん
(『いつでも元気』編集委員)
伊藤則子さん
(千葉健生病院友の会)
森尾嘉昭さん
(石川・金沢北健康友の会)
鏡 政子さん
(東京・城南保健生協)

 『いつでも元気』読者五万人――よい医療と福祉をめざし、民医連と共同組織をつなぐかけ橋として生まれて一二年。おかげさまで、ここまできました。この雑誌を愛し育ててこられたみなさんが、その魅力、これからを話しあいます。

『元気』が広げた「べんりくん」

 私は東京の城南保健生協の、ただの組合員です。『元気』を増やしてといわれるから増やす というのではなくて、こんなにいい本なのだからふやしたいと、読者会をはじめました。先月の読者会に、まったく声をかけなかった人が一人でみえたんです。 9月号「『えひめ丸』もう一つのドラマ」の記事がよかったと。「マスコミはとりあげなくなったが、読んでこういうことかと思って、それで来ました」と、ほ んとに「本の魅力」で参加してきた方で、うれしかったですね。
森尾 02年4月号「『べんりくん』号きょうも出動」で、私たち金沢北健康友の会の活動が紹介されまして、これは県外から視察が相次ぎ、ことしも四件来ています。『元気』は写真が載るでしょう。どんな車で、どんな人がやっているのかわかり、アピール力があるんですね。
 「べんりくん」は友の会が設立した助け合い運動です。車の送迎、電球の交換、掃除などのボランティア活動で、利用は月八百件を超え、日に四〇件前後で す。九割が送迎で、車は三台。利用者に一枚一五〇円、七枚つづり千円のチケットを買っていただき、送迎なら距離に関係なく片道三枚、というようなシステム です。
 この間、八〇過ぎのひとり暮らしの方が、身内に不幸があり香典を「べんりくん」に託されました。担当したボランティアは通夜に香典を届け、祭壇にお参り したんですよ。親類の人が感動しましてね。「お参りまでして下すってありがとう」とお礼の電話があったそうです。「べんりくん」は単なる便利屋じゃない。 「心を運ぶ」、これが原点です。『元気』にはその心があるのです。読者と医療人の心を結ぶ、元気を運ぶ。そこに魅力がある。
伊藤 千葉健生病院友の会は販売所が二一。一番多く扱う茂原は診療所もヘルパーステーションもないところですが、会員六八人で二八部、すごい率です。
 「どうやって増やすのですか」とお聞きしたら、一軒ずつ訪ねる。友の会員を増やすより『元気』が増やしやすいそうです。「どういう記事をすすめるのです か」と聞くと、グラビアがいいとか、いつも医療問題をとりあげているとか。旅行に行けないが『元気』で紅葉やコスモスを見て、自分が旅行に行ったみたいで 満足している。そんな声もききました。
 班会のテーマを迷ったときは『元気』を広げて参考にするそうです。「食と健康」欄に、徳島の郷土料理「おからコロッケ」が出ていて(01年10月号)、 班会でつくったら、大変おいしかったとかね。松尾さんの闘病手記「がんとの新しいたたかい」(02年9月号)は、ちょうどセカンドオピニオンってなんだと いう疑問が出ていたときだったので、班会で使わせていただきました。
 まず「生きいき活動あらかると」から見るという方もいます。日ごろの生協の活動に生かせて、元気をもらえるというお話でね。彼女には読者会のリーダーになってもらいました。

みんなの努力が5万部に

松尾 寄せられる声をみると、どなたもおっしゃるのは写真がきれい、表紙が素晴らしい、これがだいたい感想の出発点。次は、活動のヒントになる、友の会・医療生協の活動がよくわかる、仲間意識が湧いて励みになるということですね。
 こんなことをいわれた読者がありました。「すべての誌面で人間を温かく包む心があって、私たちを人間大好きにしてくれる」。温かい人間の心を呼び覚まし てくれる機関誌だと評価しておられる。
 読者からはどうしても、あれがほしい、これがほしいという声がありますし、編集側もなるべく幅広い編集をするわけですが、しかし「原点は医療・福祉だ、 ここを外したらこの本の値打ちはないんだ」と読者の方がいってくれます。
 『元気』創刊(91年)のころ、発行の目的はなんだと論議しまして、「三つの目的」がまとめられました。一つが、医療・政治情勢などをわかりやすく伝 え、医療を守るために何が求められているかを明らかにする。二つは、各地の共同組織の活動を交流し、活動をいっそう強化する。三つは、民医連の役割や活動 を広く共同組織のみなさんに知ってもらい、活動の強化に役立てる。この「三つの目的」を原点に努力してきた成果が現れている、というふうに考えています。
森尾 森本という金沢の北の方の支部があります。六七人の読者です。そこで初めての「食事会」を やって、おしゃべりして、もう楽しかったと。その席で、「友の会ってこんなことをしているのよ、この『元気』誌、これが友の会の命みたいなもので、みなさ んと結ぶひとつの糸なの」という話になったそうです。
 それに加えて、「きょうこんなにお安く食べられるのは、この雑誌のおかげなのよ」と。それは還元金なのです。班を維持するのに百円の還元金がメチャ魅力 なわけです。同時に、一軒一軒読者に届け集金するのは大変な努力です。そうやって苦労してつくりあげた五万部ですから、誇りに思ってよいと思います。

還元金で車を買った!?

伊藤 還元金は、すいとんの班会、東京見学、演劇鑑賞も読者は五百円引き、あらゆるものに 使って喜ばれています。最近、サークルで販売所を持ったという話を聞いて、「それならうちでもできる」と、絵手紙のサークルがぽんと三部増やして「はい、 できました」と販売所が生まれました。ほかでも喫茶店のオーナーに読者になってもらい「お茶会するから安くして」(笑い)。一五人でお茶を飲みながら、 『元気』のここが好きだとかいう話をして、「楽しそうだから、じゃあ読むわ」とまた三部増えた。喫茶店も潤うし、読者はふえるし、やみつきになってまたや るそうです。できてまだ二カ月ですが、「還元金を何に使おうか」といっています。
松尾 印刷機を購入したとか、送迎車を買ったとかいうところもありますね。
伊藤 職員でも「友の会ってどういうメリットがあるの」という時代でしょう。職員に『元気』を普及する意味は大きい。職員にいくつか雑誌を見せて「どれか一つ読みましょう」といったら『元気』が一番人気があったという話も聞きます。
森尾 月間のなかで役員さんといっしょに職場を回って、「友の会は民医連の生みの親、育ての親」という話をしています。
 いま職員の三分の二は新しい人で、歴史を知らないんですね。病院の四七年をまとめた冊子を使って、内灘基地闘争のなかで病院がつくられた歴史、当時は病 院もこんなにボロッちかったんだよ、という話、地域の人たちととりくんだ医療無料化、そういうなかで友の会も誕生し病院を支えてきたんだよと話すのです。 若い人たちはエエッというわけです。
 いまきびしい職場で悪戦苦闘しているなかで、いったい何が生きがいか。若い職員たちがいろいろ語ってくれます。
 療養型の病棟は、看護師とケアワーカーが一緒に仕事をしています。看護師は褥瘡をつくらせないようにとがんばる。ケアワーカーは、その日その日、その人 がいちばん快適に暮らせるようにというところで努力する。「何が生きがいか」と聞くと、笑顔だというんです。「長い苦労をされて療養病棟にこられた人が、 少しでも安らかな生活が送れるようにと思っている。『ありがとう』という言葉に私は生きがいを感じる」というんです。
 私は、「友の会の喜びと、あなたたちの喜びは同じや」といいました。地域の人たちが「べんりくんで助かった」という言葉に僕たちは喜びを感じるのだと。
 いま『元気』に期待するのは、地域の話題や、病気や疾患の説明にとどまらない、そこには生きた人間が苦労してがんばっているんだよ、ということですね。
松尾 民医連攻撃の記事を職員と組合員が一緒に学習して、どう反撃していくかということを論議し たとき、組合員が職員に「ひるむな、日ごろの活動に自信を持て」と叱咤した、これでパッと目がさめたという通信がありました。『元気』がとりもって職員と 共同組織とがいい関係になってるなと思って読んだのですが。

患者と医師の「橋渡し」に

松尾 伊藤さんのところは「通信員三人娘」で、よく送っていただいてますね。
伊藤 三人ではじめて、いま四人です。毎月一回は書きましょうということで、必ず月末、「あなたは何書く?」。「今月はないわ」というときには「これがあるじゃないの」とか、切磋琢磨といいますか、それがよかったのかなと思います。
 ここにくる電車のなかでも、通信を書いてきました。新しい幹事さんがマンション作戦で会員をふやしておられる。娘さんに、友の会に入ると検診が安い、イ ンフルエンザ予防注射の料金が安いというメリットを見せたら、「お母さん、こんないいことをしているところは他にないよ」といった。それに励まされて、彼 女はもう五人くらい増やしているんです。
 そういう場面に出会うと、ああ、それを記事にしたいなと思うのですが、アンテナが途切れたときはすごく悩みで。
 通信員になってよかったと思うのは、活動しないと記事が書けないでしょう。記事を書くために、大田に住んでいるのに品川までお茶会に行ったり。じつは「しまった」と思ったんですよ。通信員になったばっかりに、ちょっとは活動しないと記事にならないのだなと。(笑い)
森尾 いまどこでも「安心して住み続けられるまちづくり」がテーマになっていて、友の会が非常に大きく様変わりしてきた。受け身から参加へ、行動する組織に大きく変わってきたと思うのです。
 それが友の会の魅力でもあって、その友の会のスタンスが通信にも反映してきている。記事も説明・解説型から、体験型の記事にするといいと思います。
 受付でも診療の場でも機械化がすすんで、職員と患者と両方が努力しないとわかりあえない状況 がうまれていると思うんですよね。私の知人も「一生懸命話してるのに、先生はカルテを書きながら僕の方を見なかった」というのです。昔は聴診器を当てて胸 をたたいていたのにと。科学的かもしれないけれども、やっぱり患者を見てください。病気を持っている患者を見てください、そういう「患者の本音」が載るの がいいですね。
森尾 そしたら、「医者の言い分」のページに、「電子カルテで医者も苦労してる」なんて出てね、あ、そうか。(笑い)
松尾 医者や職員は患者の考えていることがわかり、患者は医師の考えていることがわかる。『元気』は橋渡しですね。

5万部は通過点、さらに明日へ…

 先日の共同組織活動交流集会で、「三百万の共同組織の仲間と全職員が『いつでも元気』を読むようになれば、日本の医療は変わるだろう」という肥田先生(全日本民医連会長)のお話がありましたね。そこに私はすごく感動したのです。
松尾 五万部達成は通過点ですよね。次の目標に向かって友の会の活動も組織も強化されるし、発展していく。肥田先生がいわれたように、三百万人が読者になれば、医療も福祉もまちがいなく変わるでしょう。
森尾 いま、生活実態のすさまじさを実感しています。年金は下がり医療費が上がり、介護保険が上 がる。すると、まず食費を削る、服は買わない。旅行や人付き合いはなるべくしない。内にこもって社会的にはものをいえない。でも怒りはすごいんです。友の 会の班会で、「なんでもしゃべろう」とやったら、日ごろの思い、不満、今の政治への怒りがぱーっと出て、時間がきても終わらない。
 そんななかで、会員を二人ふやした職員がいます。「どんな話をしたの」と聞いたんです。お友だちに「うちの病院って患者さまあっての病院なの」という話 をした。その翌日、その方のお母さんも受診に見えて入会されたというんですね。
 ほんとうに「患者あっての医療」という考え方が中心にすわるならば、医療は変わる。ほんとうにいい医療ができる。いま、「小泉改革」が暮らしと医療をめ ちゃめちゃにしていますが、だからこそ医療や福祉にとりくんでいる民医連や友の会に大きな期待があるし、『元気』をひろげることは、その医療をまもり変え ていく力をひろげることだと思います。
松尾 うちは民医連の院所がない地域です。けれども、五百人の会員さんがいて、『元気』は五二 部。新婦人、年金者組合、民主商工会などで活動するみなさんにも、活動に役立つということで読んでもらいます。院所がなくても、地域に民医連の旗を掲げて いるのが『元気』だと思っています。まちづくりの共同の機関誌として、いっそう発展させましょう。


ここでも元気

毎月若いみんなで学習会

京都民医連 第二中央病院

  比叡山のふもとにある京都民医連第二中央病院(京都市左京区)の療養病棟では、職員二五人がみんな『いつでも元気』の読者。毎月一回、『元気』の記事 一つをテーマに学習しあう場をもっています。
 きょうの参加者は男性六人、女性一〇人。ほとんどが二〇代で、看護師長の山内千春さんは「どうです、若いでしょう。みんなまじめなんですよ」とニコニコ。
 今回のテーマは10月号「ほっと介護~だれだって死ぬまで?ふれあい?がほしい」。一番若い介護福祉士(入職二年目)、長尾美希さんの提案でした。
 介護福祉士の廣瀬吉介さんが立って元気よく読むと、「私たちも経験していることだわ」。トイレや入浴、おむつ交換で気をつかうことなど、話がはずみま す。ちょっと患者さんの肩に手をおいて「調子はどう?」、握手して「あら、きょうは手が冷たいわね」――スタッフの仕事ぶりが、たのもしく目に映りまし た。
 新聞や雑誌を資料にした学習を三年つづけてきましたが、去年四月から『元気』を使うことに。『元気』は文字やことばがやさしく、自分たちの仕事とぴった りの記事、「友の会」の人たちと共通の話題があり、学ぶにはうってつけだと…。
 山内さんは「『いつでも元気』はほんとに役に立つありがたいテキストです。もっともっと読者をふやしていきたいですね」と話してくれました。
文・清原巳治(『いつでも元気』編集委員)


ここでも元気

盛況です『元気』ゴルフ大会

北海道・道東勤医協
友の会連合会

 道東勤医協友の会連合会には三九の『元気』販売所があり、一二四〇部を扱っています。連合会事務局のある道東販売所は三六〇部と大所帯ですが、ほかは最 少五部から最多九〇部。八人で協力しているところもあれば、責任者一人でがんばっているところもあり、年に一度、交流会をしています。
 『元気』還元金は多くの支部で活動に役立っています。
 道東販売所は毎年パークゴルフ大会を開催。ことし八回目を数える大会は、費用はすべて『元気』還元金から拠出。今回は百人をこす参加者全員に景品を出す 一大行事となりました。いまでは一三の支部がパークゴルフ大会をしています。
 山菜採りのあとジンギスカンを楽しむ?食と健康の懇親会?や、お茶会・食事会もかね年一~三回の読者会をするところ。「読者に手づくりのプレゼントを差 し上げて、感謝の意をあらわした」販売所もあります。
 「健康チェックをやろう」と、血圧計・体脂肪計を買ったり、食事会の食器を買って会館に備えた支部も。配達・集金の労をねぎらうため、還元金で「ごくろ うさん会」を開くところもふえました。
文・田畑千代志(同友の会連合会事務局長)

いつでも元気 2003.12 No.146

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